映画のシナリオにはオリジナルの脚本と小説など既存のものを脚色したものがある。
既に公開している「ローレライ」。これは「終戦のローレライ」という小説の映画化。原作者である福井晴敏と監督の樋口真嗣監督(平成「ガメラ」シリーズの特技監督)が、小説と映画という二つのメディアを想定。共同でシナリオを考案しそれぞれ発表したもの。
2年ほど前に原作を読んでいたのですが、これがねぇ、マジでやばい!!上下2巻。辞書みたいに分厚くて、しかも本を開けば上下二段!(現在は単行本化)かなり読み応えがあり、取り掛かるまでに勇気がいるのですが、一度読み始めたら止まりません。ラスト30ページぐらいはもう涙ボロボロ。小説読んで泣くなんて小学生以来か!?読破後、暫く他の本が読めなくなるぐらい突き刺さり、生涯ベストワンの小説となりました。(因みにそれまでのベスト1が同じく福井晴敏の「亡国のイージス」⇒これも夏に映画化)
小説の映画化は限られた尺の中でドラマを成立させなくてはならないので、必要最低限の要素を原作から取り出したうえ、設定を変えたり、新しい要素を加えて脚色して行く。
だからそもそも小説と映画は別物であるし、比較すべきものでもないと思うのですが、そうは言っても比較しがち。特に思い入れの強い本作に関しては見る目が多少厳しくなる。
正直、細かい人物描写がバッサリ切られていて、原作にあった人間関係による熱い友情や愛情表現が弱く、感動的な高揚感は得られなかったのは残念。しかしながら、そもそもの始まりが福井さん&樋口さんの脳味噌だったわけで、ありがちな世界観崩壊はなく、小説のイメージ通りに収まっている点は良かったと思う。
小説を読んでいない人の感想は軒並み良いし、それなりに見応えもあるから、見て損はないと思う。
そして、不思議だったのが映画見ながら“原作を思い出して感動する”という初の経験をした。
小説の映画化といえば、今更ですが「OUT」(平山秀幸監督)をビデオで見た。その直後に今度は桐野夏生の原作を読んでみた。
どっちが凄いって、やっぱり原作の方なんだよね。。。海外で評判になる訳だ。
登場人物こそ一緒ですが、展開が映画と小説は全然違う。小説の方がよりタイトルの意味が理解しやすい。
映画では主人公の閉塞感と絶望、そして緊迫感が描き切れていない。決して、映画が面白くないという訳ではないのですが、「ローレライ」共々、心情を映像化するというのは、やはり相当難しいことなんだなぁ〜と改めて感じた今日この頃。
で、一番声を大にして言いたいのは、「終戦のローレライ」をみんな読んでくれ!