先日、パレスチナ評議会選挙でイスラム原理主義組織ハマスが、
パレスチナ自治政府の第一党となったニュースが注目を浴びました。
それに呼応するかのように、映画界でも中近東に関連する映画が次々と公開。
まずはスティーヴン・スピルバーグ監督の最新作「ミュンヘン」。
1972年のミュンヘン・オリンピックで、
パレスチナ・ゲリラによって11人のイスラエル選手が殺害された。
その報復としてイスラエルは事件の首謀者たちを消すために暗殺チームを送り込む。
暗殺チームは指示を受けるがままに任務を遂行して行くが、
やがて、彼らにも報復という名の恐怖が襲い掛かり、追い詰められてゆく。
次いで「ジャーヘッド」。
若くして海兵隊に志願入隊したスオフォード。
1990年、イラクのクェート侵攻を受けてサウジアラビアに派遣されるが、
いるはずの敵がいない。
ひたすら待つだけの日々。
戦闘でストレスを発散することも出来ず、やがて精神は破綻を来たし始める。
戦闘から引き起こされる狂気ではなく、
戦闘出来ないことで引き起こされる狂気を描くという新しいタイプの戦争映画。
最後に「トラフィック」チームによる「シリアナ」。
アラブ某国の王位継承に伴う石油輸出問題。
その問題の裏ではCIA工作員、エネルギー・アナリスト、弁護士、移民労働者など様々な人々が絡み合い、
運命の波に揉まれてゆく。
複雑に絡み合う複数の物語を巧みな構成でまとめ、様々な問題を浮き彫りにした社会派ドラマ。
この3作品、中近東という共通のキーワードがあるけれど、他にも共通項がある。
暗殺者たちもスオフォードも「シリアナ」の登場人物たちも皆、普通の人間。
親がいて、家庭があって、仕事(任務)をしている。
しかしながら、そんな彼らは国家や組織にとっては単なる駒でしかない。
映画は権力に翻弄され、一個人としての人間性を失ってゆく様を描いている。
テロや戦争、企業の陰謀など、他人事の様に見える世界も、
実は自分たちの実生活に重ね合わすことが出来る。
よって、伊藤Pも含め会社勤めの方々、明日は我が身よぉ〜。なーんてちょっと思ったりする。
とまぁ、ちょっと堅苦しくて、重くて、取っ付きにくそうな3作品ですが、
3作品ともとてもパーソナル映画で、見る者に共感を与えてくれます。
で、最後に、3作品を見る上でのアドバイス。
■「ミュンヘン」
そうは言っても最低限、イスラエルとパレスチナ問題は頭に入れてから劇場へ!
■「ジャーヘッド」
実は「スリー・キングス」という映画の冒頭10分で、「ジャーヘッド」の基本的なテーマが説明されている。
裏を返せば「スリー・キングス」を10分見ればよい!?
■「シリアナ」
先に見ていた人全員が口を揃えて、「人間関係が複雑で分かり辛いけど面白い」という。
そんな訳で伊藤Pは珍しく、ストーリーを読んでから試写に挑んだ。
お陰で大体理解できたけど、それでも相当頭を使う能動的な映画だった。
頭を活性化したい方は是非。きっと脳年齢が若くなりますよ。
兎にも角にも、社会を知る意味でも、共感を得る意味でもお薦めの3本です。