最恐のホラー対決にして、色々と考えさせられる映画に出会いました。
「魂萌え!」です。
桐野夏生のベストセラー小説の映画化。
定年退職した夫が3年後に急死。平凡な専業主婦、敏子は、10年間にも及ぶ夫の裏切りを知る。更に手塩をかけて育てた子供たちからは、身勝手な要求を突きつけられる。
突然崩壊した日常に戸惑い、傷付き、怖れ、不安になる敏子。
やがて、敏子は今まで知らなかった未知の世界を知り、新たな人生を歩み出そうとする。
団塊の世代の主婦を主人公にした人間ドラマなのですが、まず何が凄いって、役者さんたちの演技が凄い。
敏子を演じたのは風吹ジュンさん。近年、優しいお母さん役が多かったのですが、今回は女の心情を激しくぶつけたりと、今までに無いぐらいに様々な表情を見せてくれる。
で、強烈なのが、夫の愛人役を演じた三田佳子さんとの対決シーン。お互いが、お互いの気持ちを主張し、「わかってよ!」と感情をぶつけ合う。一触即発。フレディvsジェイソン、エイリアンvsプレデターなんて目じゃないです。超怖いです。
ちょっと飛んじゃった三田さんの表情と、睨みを利かせて凄む風吹さん。
この場にいられる男は、いないと思う。。。
と、対決シーンが印象的だったのですが、「魂萌え!」は、勿論、それだけではありません。
いま、団塊の世代が巷で大きくクローズアップされています。この世代のサラリーマンが定年を迎えるとか、熟年離婚とかですね。
そう言った意味で、「魂萌え!」は“今の映画”なのだと思います。
ステレオタイプかも知れませんが、この世代で専業主婦をされている女性の中には、「魂萌え!」の敏子さんと同じような境遇に置かれている人が沢山いると思います。
そういう人たちは敏子さんに自分を投影出来るし、感情移入もし易いでしょう。そして、勇気も貰えるでしょう。
逆に夫である男性は、自分の配偶者の知られざる一面を探ろうと思うかもしれません。もしも、奥さんを裏切っている人は、「やべぇ」って、心を改めることでしょう。男の死に際が汚いのは、マジで無様です。
でもって、若い世代はこの映画をどう感じれば良いのか?
敏子さんは子供たちから無理難題を言われ、翻弄されます。
では、自分たちは母親に対して、無理難題を押し付けていないだろうか?
因みに伊藤Pは押し付けていたし、今でもそういう部分がある。正直、映画で描かれていたことは、身に詰まされる思いな所もあった。
だから、母に対して、感謝しなければならないし、これからもっともっと恩を返していかなくてはならないと思う。
つまり、母親に対して改めて考える良いきっかけになる映画です。
そして、団塊の世代よりも若い夫婦たち。いづれ、迎えるであろう60歳という時期に、果たして自分たちはどのような夫婦でいるのか?
自分たちの今後を考えてみることも出来るでしょう。