さて、今回は二人の日本人監督の作品を取り上げます。 まず、「リアリズムの宿」、「リンダ リンダ リンダ」などで、独特の世界観を作りつづけている山下敦弘監督作「松ヶ根乱射事件」。
乱射事件といっても、壮絶な映画ではない。
とある田舎町を舞台に人間の滑稽さ、情けなさを描いた人間ドラマだ。
山下監督の特徴としては、クローズアップを用いず、比較的引いたショットを多用する点が挙げられる。
なぜかというと、山下監督は常に一歩引いたところから、人間を観察したいからだという。
当事者にとっては一大事であっても、客観的に見るとアホらしかったりする。
わかり易い例えとしては、夫婦喧嘩の理由。他人からすれば馬鹿みたいなことでいがみ合う事が多いでしょ?
「松ヶ根乱射事件」は、人間のバカバカしい部分を捉えることがテーマになっているので、引き絵で撮影をし、監督の狙いをより明確にしているという訳です。
そして、山下監督作品には “山下節” と言われる妙な間とテンポがある。
聞くに、脚本にも間の部分には予め “・・・・・” と書かれているという。
テンポに関しても、ガンガンにカットを割らず、比較的1カットが長い。
この “引き絵” 、 “間” 、 “テンポ” によって作り出される独特の世界観は、大型チェーンで公開されるような見慣れた日本映画とは明らかに違う。
よって、オーソドックスな日本映画に馴染んでしまっている方々は、最初、山下監督の作品に戸惑うかもしれません。
しかしながら、その世界観を一度でも心地よいと思ってしまった人にとっては、もう麻薬みたいなもんで、無くてはならないものとなる。
さて、もう一本は黒沢清監督の「叫(さけび)」。
黒沢清監督の作品は、あまり論理的に物語を進めてくれないので、解釈不能に陥ることが多かった。
「回路」なんて、もう伊藤Pの少ない脳味噌では理解不能だ。
前作「LOFT ロフト」も、怪奇ミステリーから唐突にラブストーリーに切り替わり、度肝を抜かれた。
主演の中谷美紀は「黒沢監督からは物事に理由なんていらないということを学びました」と取材した時に言っていた。
余りにも的確すぎるコメントに目から鱗。
そして、良くホラー監督と見なされがちだが、そうではなく、幽霊を撮るのが好きな監督なのだと理解した。
だから幽霊が登場する、普通なら恐怖となるシーンも、恐くない。
逆に滑稽で笑える。
新作「叫(さけび)」」にも幽霊が出てくる。
この葉月里緒奈演じる赤い服を来た幽霊が最高だ。
役所広司演じる刑事の自宅に初登場するシーンも良いのだが、極めつけは殺人現場でのシーン。
もう凄いです。
こんな演出はきっと黒沢清監督しか出来ないと思う。
それと、黒沢清監督は空間の使い方がとても上手。
映像の中に写っているもので説明しようとする、いかにも映画的な狙いがある。
この “理由不要” 、 “黒沢流幽霊” 、 “黒沢的絵作り” によって作り出される黒沢清の世界観は、多くのテレビ化された説明過多気味の日本映画とは明らかに違う。
よって、そんなテレビ的映画に馴染んでしまっている方々には、ちょっと辛いかもしれません。
しかしながら、その世界観に一度ではまってしまった人は、もう黒沢映画の虜となってしまうのであります。
ということで、今回は個性的過ぎるけど、はまれば至福となりうる、そんな素敵な映画作家の作品をご紹介してみました。
乱射事件といっても、壮絶な映画ではない。
とある田舎町を舞台に人間の滑稽さ、情けなさを描いた人間ドラマだ。
山下監督の特徴としては、クローズアップを用いず、比較的引いたショットを多用する点が挙げられる。
なぜかというと、山下監督は常に一歩引いたところから、人間を観察したいからだという。
当事者にとっては一大事であっても、客観的に見るとアホらしかったりする。
わかり易い例えとしては、夫婦喧嘩の理由。他人からすれば馬鹿みたいなことでいがみ合う事が多いでしょ?
「松ヶ根乱射事件」は、人間のバカバカしい部分を捉えることがテーマになっているので、引き絵で撮影をし、監督の狙いをより明確にしているという訳です。
そして、山下監督作品には “山下節” と言われる妙な間とテンポがある。
聞くに、脚本にも間の部分には予め “・・・・・” と書かれているという。
テンポに関しても、ガンガンにカットを割らず、比較的1カットが長い。
この “引き絵” 、 “間” 、 “テンポ” によって作り出される独特の世界観は、大型チェーンで公開されるような見慣れた日本映画とは明らかに違う。
よって、オーソドックスな日本映画に馴染んでしまっている方々は、最初、山下監督の作品に戸惑うかもしれません。
しかしながら、その世界観を一度でも心地よいと思ってしまった人にとっては、もう麻薬みたいなもんで、無くてはならないものとなる。
さて、もう一本は黒沢清監督の「叫(さけび)」。
黒沢清監督の作品は、あまり論理的に物語を進めてくれないので、解釈不能に陥ることが多かった。
「回路」なんて、もう伊藤Pの少ない脳味噌では理解不能だ。
前作「LOFT ロフト」も、怪奇ミステリーから唐突にラブストーリーに切り替わり、度肝を抜かれた。
主演の中谷美紀は「黒沢監督からは物事に理由なんていらないということを学びました」と取材した時に言っていた。
余りにも的確すぎるコメントに目から鱗。
そして、良くホラー監督と見なされがちだが、そうではなく、幽霊を撮るのが好きな監督なのだと理解した。
だから幽霊が登場する、普通なら恐怖となるシーンも、恐くない。
逆に滑稽で笑える。
新作「叫(さけび)」」にも幽霊が出てくる。
この葉月里緒奈演じる赤い服を来た幽霊が最高だ。
役所広司演じる刑事の自宅に初登場するシーンも良いのだが、極めつけは殺人現場でのシーン。
もう凄いです。
こんな演出はきっと黒沢清監督しか出来ないと思う。
それと、黒沢清監督は空間の使い方がとても上手。
映像の中に写っているもので説明しようとする、いかにも映画的な狙いがある。
この “理由不要” 、 “黒沢流幽霊” 、 “黒沢的絵作り” によって作り出される黒沢清の世界観は、多くのテレビ化された説明過多気味の日本映画とは明らかに違う。
よって、そんなテレビ的映画に馴染んでしまっている方々には、ちょっと辛いかもしれません。
しかしながら、その世界観に一度ではまってしまった人は、もう黒沢映画の虜となってしまうのであります。
ということで、今回は個性的過ぎるけど、はまれば至福となりうる、そんな素敵な映画作家の作品をご紹介してみました。