1970年代のウガンダ。
類稀なるカリスマ性とリーダーシップを発揮しながらも、独裁者として君臨し、大量虐殺に手を染めたアミン大統領。
「アフリカで最も血にまみれた独裁者」と称されたアミン大統領のおぞましくも魅力的な人物像を、側近として仕えたスコットランド人青年医師の視点で描いた「ラストキング・オブ・スコットランド」。
アミン大統領と言えば、ダークなイメージが強いが、この作品では子供を愛し、人を喜ばせようとする快活な面も描いている。
この両極端の二面性を描くことで、気分次第でどっちに転ぶか解らない不気味なアミン像がより際立ちホラーと化す。
そして、その恐怖をもっとも身近で味合うことになるのが、青年医師ニコラス。
ニコラスは架空の人物で、アミンと交流のあった数人の欧米人がモデルとなっている。
つまり、この映画は実在の人物や実際の事件に、フィクションを取り入れるという手法を取っている。
で、このニコラスがさぁー、超が100個ぐらい付く馬鹿な奴でさぁ。
お世話になっている医師の奥さんに手を出そうとするわ、
大統領に気に入られて有頂天になるわ、
平気で大統領にあいつは怪しいですとチクるわ、
すぐに酒に逃げるわ、
終いにゃー、大統領夫人にまで手を出す。
気が付いた時には後戻り出来ないって、気付けよ馬鹿!!
このニコラスの取る浅はかで、自惚れに満ちた行動は、多くの混乱と理不尽な死を引き起こす。
周りを良く見ないで甘い汁にばかり吸い付いていると、足元をすくわれるよという教訓が暗に含まれているのですが、もっと拡大解釈をすれば、何かと他国に干渉し、搾取しようとしてきた白人の思い上がりを、ニコラスに当てはめているとも言える。
と、ちょっとディープになりましたが、「ラストキング・オブ・スコットランド」は、人間ドラマであり、社会派の面も持ち合わせている。さらに脱出サスペンスとしても楽しめる。
そして、アミンを演じてオスカーを受賞した、フォレスト・ウィテカーの演技も堪能できるという贅沢な映画ですな。