チェコスロバキアのホステルを訪れた若者たちが拉致され、凄惨な拷問の末殺される。
全然怖くないけどリアルで痛い拷問シーンで話題となった『ホステル』の続編『ホステル2』。
本作を見る際に伊藤Pは、
『封印殺人映画』(裏部屋:#034参照)の公式ブログに掲載されていた「スラッシャー映画7箇条」を意識してみた。
すると、『ホステル2』(一部『ホステル』も)が“外し”を多用した斬新なスラッシャー映画であることがわかった。
そこで、今回は『封印殺人映画』の公式ブログから「スラッシャー映画7箇条」を引用しつつ、
『ホステル2』の“外し”を紐解いていこうと思う。
しかしながら、物語の核心に触れる部分もあるので、
『ホステル』、『ホステル2』を見てからご一読頂いた方がベターかと思います。
珍しくネタバレ有りな内容なので「裏部屋」扱いということで。
■其の一:
正体不明の殺人鬼が短期間にいきなり若者たちを殺し回ることのみが、映画の中で描かれる。
この条項は『ホステル』には当てはまるが、『ホステル2』には当てはまらない。
『ホステル』の段階で、殺人鬼がどのような人物なのか当然明らかにされているので、
『ホステル2』ではさっさと殺人鬼側を登場させている。
それどころか殺人鬼の立場や殺人に至る動機や経緯を、
犠牲となる女性3人組とあまり大差ない比重で描いている。
つまり犠牲者と殺人鬼が共に主役なのである。
■其の二:
殺しに使われる小道具(凶器)の描写にひと工夫がある。
(ナイフや大工道具など、その凶器がいかに使われて人が殺されるかが映画の見せ場でもある)
今回も拷問道具が大量に登場するが、
スラッシャー映画では禁じ手とされている拳銃による射殺シーンがある。
■其の三:
殺人シーンは衝撃的な特殊効果による血まみれ描写で描かれる。
血まみれのようで、実はあまり血まみれじゃないんだけど、
やっていること自体はエスカレートしまくりである。
子供を殺めちゃうし、阿部定もやっちゃう。
ホラー映画といえどもタブーだった領域に踏み込んでしまっている。
■其の四:
惨劇はアメリカの若者にとって身近であったり特別な意味を持つような場所で起こる。
舞台はスロバキアなので、設定そのものがこの条項に当てはまらない。
身近でないミステリアスな国、スロバキアを舞台にすることによって、逆に不安感を募らせるという手法を取っている。
■其の五:
殺人は一見無差別に見えるが、その多くは実は過去に起こった悲惨な事件をはじめとする因縁に由来していることがクライマックスで明らかにされる。
映画の中の犠牲者たちはその因縁に触れたことによって(直接は関係していなくても)惨劇に巻き込まれる。
因縁も糞もない。
■其の六:
性的に奔放な少女、社会に反抗的な少年など典型的な青春映画の悪役である無神経な若者たちは必ず殺される。
体力のあるジョックス(体育会系)や弱気なオタク、優等生でも男であれば殺される。
最後に生き残るのは少女――優しさと良識に富み、慎み深く、そして処女であることが絶対条件。
彼女は「ファイナル・ガール」と呼ばれる。
まず『ホステル』の主人公は男たちである。
よって、最初からファイナル・ガールが存在しない。
そして、一番まともで、物語を引っ張ってきた青年があっさり殺される。
まぁ、こいつも結局はやることやってしまうのですが、
こいつ主役じゃなかったの!?という観客の驚きを誘う。
主役をバトンタッチされるのは、
頭の中がセックスだらけの到底感情移入なんかできないような男。
こいつは死ぬだろうと思った男を主役にしてしまう。
このセオリーに則らない展開が新鮮だ。
しかし、死中に活を求める男の頭からセックスがなくなり、
エロ男から“ファイナル・ボーイ”に変身するや否な、
途端に応援したくなるから人間の心理ってのは不思議なものだ。
続いて『ホステル2』では3人のアメリカ人女子大生が狙われる。
条項に則り、性に溺れた2人は殺され、良識ある1人が生き残る。
しかしながら、純粋に「ファイナル・ガール」とは言えない生き残り方をする。
■其の七:
犠牲者は殺人鬼の視線(一人称カメラ)によって選ばれ、無残な死を遂げる様がスクリーンに映し出される。
確かに殺人鬼によって犠牲者は選ばれるが、一人称カメラではない。
また無残な死を遂げるには遂げるけど、遂げていないといえば遂げていない。
以上、7箇条を『ホステル2』に当てはめようとすると、
全てがドンピシャには当てはまらない。
この型に当てはまらずして、スラッシャー映画として成立させている点が、
『ホステル2』の凄いところだ。
あと、もう一つ。
こいつが助けてくれるかもという観客の期待を見事に裏切る展開を見せてくれる。
ホラー映画の鉄則を守りながらも、微妙に外して新鮮さを出す。
そして、観客をミスディレクションして楽しませる。
これが『ホステル』、『ホステル2』の魅力だ。
全然怖くないけどリアルで痛い拷問シーンで話題となった『ホステル』の続編『ホステル2』。
本作を見る際に伊藤Pは、
『封印殺人映画』(裏部屋:#034参照)の公式ブログに掲載されていた「スラッシャー映画7箇条」を意識してみた。
すると、『ホステル2』(一部『ホステル』も)が“外し”を多用した斬新なスラッシャー映画であることがわかった。
そこで、今回は『封印殺人映画』の公式ブログから「スラッシャー映画7箇条」を引用しつつ、
『ホステル2』の“外し”を紐解いていこうと思う。
しかしながら、物語の核心に触れる部分もあるので、
『ホステル』、『ホステル2』を見てからご一読頂いた方がベターかと思います。
珍しくネタバレ有りな内容なので「裏部屋」扱いということで。
■其の一:
正体不明の殺人鬼が短期間にいきなり若者たちを殺し回ることのみが、映画の中で描かれる。
この条項は『ホステル』には当てはまるが、『ホステル2』には当てはまらない。
『ホステル』の段階で、殺人鬼がどのような人物なのか当然明らかにされているので、
『ホステル2』ではさっさと殺人鬼側を登場させている。
それどころか殺人鬼の立場や殺人に至る動機や経緯を、
犠牲となる女性3人組とあまり大差ない比重で描いている。
つまり犠牲者と殺人鬼が共に主役なのである。
■其の二:
殺しに使われる小道具(凶器)の描写にひと工夫がある。
(ナイフや大工道具など、その凶器がいかに使われて人が殺されるかが映画の見せ場でもある)
今回も拷問道具が大量に登場するが、
スラッシャー映画では禁じ手とされている拳銃による射殺シーンがある。
■其の三:
殺人シーンは衝撃的な特殊効果による血まみれ描写で描かれる。
血まみれのようで、実はあまり血まみれじゃないんだけど、
やっていること自体はエスカレートしまくりである。
子供を殺めちゃうし、阿部定もやっちゃう。
ホラー映画といえどもタブーだった領域に踏み込んでしまっている。
■其の四:
惨劇はアメリカの若者にとって身近であったり特別な意味を持つような場所で起こる。
舞台はスロバキアなので、設定そのものがこの条項に当てはまらない。
身近でないミステリアスな国、スロバキアを舞台にすることによって、逆に不安感を募らせるという手法を取っている。
■其の五:
殺人は一見無差別に見えるが、その多くは実は過去に起こった悲惨な事件をはじめとする因縁に由来していることがクライマックスで明らかにされる。
映画の中の犠牲者たちはその因縁に触れたことによって(直接は関係していなくても)惨劇に巻き込まれる。
因縁も糞もない。
■其の六:
性的に奔放な少女、社会に反抗的な少年など典型的な青春映画の悪役である無神経な若者たちは必ず殺される。
体力のあるジョックス(体育会系)や弱気なオタク、優等生でも男であれば殺される。
最後に生き残るのは少女――優しさと良識に富み、慎み深く、そして処女であることが絶対条件。
彼女は「ファイナル・ガール」と呼ばれる。
まず『ホステル』の主人公は男たちである。
よって、最初からファイナル・ガールが存在しない。
そして、一番まともで、物語を引っ張ってきた青年があっさり殺される。
まぁ、こいつも結局はやることやってしまうのですが、
こいつ主役じゃなかったの!?という観客の驚きを誘う。
主役をバトンタッチされるのは、
頭の中がセックスだらけの到底感情移入なんかできないような男。
こいつは死ぬだろうと思った男を主役にしてしまう。
このセオリーに則らない展開が新鮮だ。
しかし、死中に活を求める男の頭からセックスがなくなり、
エロ男から“ファイナル・ボーイ”に変身するや否な、
途端に応援したくなるから人間の心理ってのは不思議なものだ。
続いて『ホステル2』では3人のアメリカ人女子大生が狙われる。
条項に則り、性に溺れた2人は殺され、良識ある1人が生き残る。
しかしながら、純粋に「ファイナル・ガール」とは言えない生き残り方をする。
■其の七:
犠牲者は殺人鬼の視線(一人称カメラ)によって選ばれ、無残な死を遂げる様がスクリーンに映し出される。
確かに殺人鬼によって犠牲者は選ばれるが、一人称カメラではない。
また無残な死を遂げるには遂げるけど、遂げていないといえば遂げていない。
以上、7箇条を『ホステル2』に当てはめようとすると、
全てがドンピシャには当てはまらない。
この型に当てはまらずして、スラッシャー映画として成立させている点が、
『ホステル2』の凄いところだ。
あと、もう一つ。
こいつが助けてくれるかもという観客の期待を見事に裏切る展開を見せてくれる。
ホラー映画の鉄則を守りながらも、微妙に外して新鮮さを出す。
そして、観客をミスディレクションして楽しませる。
これが『ホステル』、『ホステル2』の魅力だ。