■「クローズド・ノート」 配給:東宝 |
その直後、皆さんご存知の“『クローズド・ノート』初日舞台挨拶事件”が勃発。
この一件は方々に大きな波紋を及ぼした。
女王様キャラを支持していたファンからも総スカンを喰らい、芸能界の先輩たちからも苦言を呈された。
テレビでも再三放送され、週刊誌の報道も過熱気味。
言いたい放題無責任に言えちゃうネットでの攻撃は言わずもがな。。。
「伊藤Pの部屋」では沢尻ファンの夢を壊さないために、多少オブラートに包んで伝えましたが(建前!?)、
彼女の悪態が表面化している以上の悪態であることは、業界的には周知の事実だったし、
伊藤Pもこの目で見たので、今回の振舞いに対してさほど驚きはしなかった。
しかしながら、シチュエーションが不味かったね。
“初日舞台挨拶”だもん。
映画監督に話を聞くと、「作品は自分の子供のよう」という表現を使うケースが多々ある。
準備に準備を重ねた後、撮影に入り、現場では大勢のスタッフ・キャストを仕切る。
撮影が終わればポスプロ作業。
プロモーションもある。
プロデューサー、出資者の目をいつも気にする必要もある。
作品にもよるけど数ヶ月間かかり切りだ。
突貫作業だとしても短期間勝負なので、精神的にも肉体的にももっと大変でしょう。
過酷な日々を過ごした分、格別な思いを持って迎える初日。
舞台挨拶には立つことはあまりないけど、作品に関わった多くのスタッフも同じ思いでしょう。
俳優たちだって役を理解し、役作りをし、セリフを覚える。
カメラの前で多くのスタッフが見つめる中、別の人間を演じ、時には相手役の俳優と感情をぶつけ合う。
作品に対してそれなりの思いを持たないと出来ない仕事だと思う。
それから忘れてはならないのが、宣伝に関わった方々の労力。
伊藤Pも以前宣伝の仕事をしていたので、どれだけ大変かが分かります。
邦画の場合、特に大変です。
洋画は出来上がった作品を宣伝するケースがほとんどだし、俳優や監督によるプロモーションも来日という形なので、ほぼ数日で終わる。
それに対して邦画は、全部ではないですが、完成する以前の段階から関わることが多い。
これを製作宣伝というのですが、作品が完成する前から携わるわけで当然宣伝期間は長くなる。
製作発表記者会見
撮影現場視察(取材を入れ込むこともある)
未完成状態での試写鑑賞
0号試写(公開前の最終チェック試写)
平行して資料作成。
そして、完成したら本格的なパブリシティ。
伊藤Pの経験上、特にテレビ出演のパブはしんどい。
まず、各番組への出演交渉。
例えば、沢尻エリカはカネボウのCMに出ているので、資生堂がスポンサーである番組はNGとなる。
共演者の中に犬猿の仲な人がいると出演不可ってのもある。
その洗い出し(伊藤Pがやった時は、マネージャーが教えてくれたけど)。
次いで番組担当者に電話して出演交渉。
ギャラが発生するケースも多いので、マネージャーと相談しつつ出演料の話もする。
出演が決まったら、マネージャーに番組内容・当日の進行等を事前に知らせる。
そして、出演日当日。
これが結構しんどい。
まず、入り待ち。
入ったら俳優さんはメイク、着替え、打ち合わせがあるので、終わるまで待つ。
収録時間になると一緒にスタジオ入り。
生だったら時間はキッカリなのですが、収録は結構、厳しい。
1時間番組だと3時間は収録する。
その間、スタジオの隅の方で所在無く突っ立っているので、技術スタッフからは「誰コイツ?邪魔」的な視線で見られる。
収録が終わるとまた控え室に入るので、出てくるまで待って、お見送り。
数時間立ちっ放しである。
これが何番組もあるのだ。
そして、オンエアを見てみたら、映画の映像はワイプ扱いでものの数秒。
映画のコメントはカットなんてのもある。
報われねぇー。
収録時に俳優が変な発言したりすると、間違った伝わり方をしちゃったりして、それの後始末。
やってらんねぇー。
伊藤Pは邦画の宣伝のことを、“毎日来日”と表現していました。
土日祝日も関係ありません。
そんな苦労を重ねて辿り着く初日も、パブリシストは奔放する。
事前の取材の入れ込みは勿論、“満員”にするため周到な準備をしなければならない。
当日もマスコミを捌き、登壇者のケアもする。
ほんとーーーーに大変なんですよ!
ということで、監督を初めとするスタッフ、プロデューサー、キャスト、宣伝、劇場営業、広告営業と、
一本の映画にはそれはそれは多くの人たちが関わっています。
こういった人たちの苦労が報われる瞬間というのは、満員の初日なんです。
満員にならない寒い初日もありますが、とにもかくにも初日とは特別な日なのです。
後パブも大切だけどとりあえず一段落の日なのです。
そんな日の舞台挨拶であんな悪態をついたら、やっぱり関係者たちの顔に泥を塗ったに等しいかなぁーと。
伊藤P的には宣伝時代に味わった修羅場や辛い出来事は、結構、面白おかしく話してネタ化している。
『クローズド・ノート』の宣伝担当の方も、数年経てば、「こんなことがあってねぇー」って、酒の肴に出来うると思うのですが、監督や俳優さんはそうはいかないでしょう。
悪態をつく沢尻エリカを見つめる、共演者であり、事務所の先輩である竹内結子の哀しげな瞳が忘れられません。
ってなことを思っていたら、まずHPで謝罪した。
ファンへの裏切りは、結局自分に跳ね返ってくるだけだからまだ良い。
でも、映画ビジネス面ではリアルにマズイよね。
「あの子が出ている映画は見たくない」と、かなりマイナスパブとなってしまった訳でして、
当然、興行的なダメージも甚大だ。
たった一人の浅はかな言動によって、売上げが億単位でマイナスになる。
これは製作者(経営者)側からすれば、ゆゆしき事態である。
被害総額数億円!
メイビー、それ相応の人たちからガッツンといくでしょう。
今後、東宝+博報堂DYメディアパートナーズ製作の映画に、彼女は出演できるのであろうか...?
『クローズド・ノート』に出資している原作の出版元角川書店だって、被害を受ける可能性がある。
これから原作を読む人は、映画のキャストをイメージしながら読むことになる。
書店で「クローズド・ノート」を手にしつつも、頭に浮かぶのはあの沢尻エリカだと思い至り、
本を元に戻しちゃったりして。
多くのCMに出演しているので、当然、スポンサーさんたちも神経穏やかじゃないでしょう。
売上げダウンの可能性もある。
広告代理店も焦る。
イメージキャラクターが不祥事を起こしてしまった時、広告代理店のスタッフがどう対処するかは、
藤原伊織の「シリウスの道」を読めば分かる。
きっと今回も同じようなことが起きていたに違いない。
そして、10月4日の朝のワイドショー『スーパーモーニング』にて、事件後初となる収録インタビューがオンエアされた。
当然ジレンマもあるでしょうよ。
ジョン・レノンが「HELP!」や「A Hard Day's Night」を書いた時の心境に似ていたのかな?
いろいろ興味深いなぁーと思いながら見ていたのですが、聞き手の女子アナが「一番辛いのは沢尻さんだと思う」とのたもうた。
それは違うだろう。
一番辛いのは作品を振り返るたびにこの日のことを思い出すキャストとスタッフ、実際に被害を受けた配給他、関係各社でしょう。
しかもこの女子アナ、沢尻エリカが涙を流すと同情して一緒に泣き出した。
それも違うだろう。
ちょっとどっちらけ気味だったのですが、女子アナはともかく、沢尻エリカは大分反省しているように見受けられた。
でも彼女は“女優”ですからねぇー。
涙を流すなんて朝飯前でしょ。
ひょっとして。。。。嘘泣き?
と映画の中だけじゃなくて、現実でもどっちなんだの葛藤に苛まれるとは!!!
凄いなぁー、沢尻エリカ。
まぁ、本当の涙かどうかは今後の彼女を見ればわかるでしょう。
このままフェイドアウトだけはしないで欲しいっす!