前回のアクション演出に引き続き、『ローグ アサシン』にみる映画的問題点を紐解いてみましょう。
みなさんも“どんでん返し”という言葉を耳にしたことがあるでしょう。
元々は歌舞伎の舞台用語で、短時間で行なう場面転換方法を指し、映画や小説ではそれが転じて、予想外の展開で観客や読者を驚かせることを言う。
お茶の間では「ねるとん紅鯨団」の“大どんでん返し”が有名である(コラコラ)。
それはともかく、要は“えっーーーー!!そんなんアリィィィィ!!!”という驚きの展開のことを“どんでん返し”というのである。
“どんでん返し”が味わえる作品で有名どころは、『シックス・センス』、『スティング』などでしょう。
他にも『サイコ』、『猿の惑星』、『ユージュアル・サスペクツ』、 『クライング・ゲーム』、『ソウ』、『アザーズ』、『愛している、愛してない』など結構挙げられる。
そして、この“どんでん返し”、『ローグ アサシン』にも用意されている。
しかし、全く“どんでん返し”としての機能が果たされていません。
理由があります。
“ローグ、お前は何者なのか?”
本作品のキャッチコピーにもなっているこの謎。
本編ではあまり重要な要素となっていない。
謎についてあんまり触れられていないので、見ている最中、謎を謎だと思って見ていない。
突然種明かしされても、種明かしになり得ない。
“どんでん返し”って、騙された側に騙される快感が伴ってこそ成立すると思う。
正しい“どんでん返し”の例として『シックス・センス』を挙げると、この作品には“どんでん返し”に向けて、たくさんの伏線が仕込まれている。
有名な衝撃の事実が明かされた後、フラッシュバック(過去のシーン振り返り)を用いて、この伏線を回収し、
観客に“あぁー!そうだったのか!!”と思わせる。
伏線はフラッシュバックで見せてくれるシーンだけではない。
物語の序盤、オスメント君が家から出てきて走り去って、教会に入っていくシーンからして、ヒントになっている。
何で慌てて走ったのか!?
何故、教会に入ったのか?
他にもたくさんある。
多くのヒントが散りばめられていながら、観客は全くそれに気が付かず、M・ナイト・シャマラン監督の思惑通りにまんまと騙されるから、
“うわー、やられたぁー!なんで気が付かなかったんだろう!!”と思うわけです。
伏線がたくさんあるから事実を知った上で、もう一度見る楽しみもある。
先日久しぶりに見直したのですが(多分5回目ぐらい)、本当に良く出来てますよ。
『スティング』は、劇中のロバート・ショウと一緒に観客も騙される。
しかもそこに痛快さが伴うから、騙されても清々しいんだよね。
で、『ローグ アサシン』ですが、観客に何かを暗示するようなヒントをほとんど示さない。
ヒントの少なさは種明かしのフラッシュバックシーンの数に比例している。
シャマラン監督も『シックス・センス』以降の作品で、同様の落とし穴はまってしまうのですが(特に『ヴィレッジ』)、
製作者がいくら“どんでん返し”だと言い張っても、『ローグ アサシン』の様に、
ヒントがなければ観客は分かるわけないし、騙しにもならないし、全然驚かない。
そんな訳で、デキが悪いからか『ローグ アサシン』は、宣伝的に“どんでん返し”をウリにはしていない。
対して、“ラスト7分11秒 あなはた絶対騙される”という挑戦的なキャッチコピーを打ち、
“どんでん返し”があることをウリにしたのが『パーフェクト・ストレンジャー』。
あんなに煽られたら、作品を見る前にいろいろと推測しちゃうよね。
なもんで、伊藤Pは見る前にキャストから推して“犯人コイツじゃない?”って、宣伝担当の方に言ったんだけど、当たっちまったよ。
まぁ、これは当てずっぽうなので、作品の本質とは関係ないんだけど、何にしても“どんでん返し”がありますという予備知識があると、当然、構えて見てしまう。
騙されないぞ!って、チャレンジしながら見る楽しみもあるけど、構えてみちゃうから、騙される快感が損なわれ、
作品を見る上での弊害にもなりうる危険性を孕んでいると思う。
紙一重ですね。
『シックス・センス』も日本では冒頭に“どんでん返し”がありまっせという、ブルース・ウィリスの有り難迷惑なメッセージが挿入されている。
それでも騙されて、さらに“やられたー”って思えちゃうんだからねぇ。。。
で、『パーフェクト・ストレンジャー』の“どんでん返し”ですが、ヒントといえないような弱いヒントを序盤にちょろちょろと出す程度で、質的には『ローグ アサシン』に近いレベル。
犯人と目される容疑者も、あまり疑わしくないし、“どんでん返し”があるってわかっているから、
コイツが犯人じゃねぇーと推測できちゃうし、残るはコイツしかいねーよなっ?って。
そんな感じですよ。
しかしながら、宣伝部は“どんでん返し”を強烈な“ウリ”にした。
ハル・ベリー&ブルース・ウィリスと、キャストは揃ってはいるものの、
日本ではパンチ力に欠ける作品を商品として売るために、猛烈に煽りまくって、興味を持たせる宣伝方針だ。
結果、興行ランキング初登場2位を記録。
作品力から言って、大健闘だと思う。
ウォルトディズニー(旧ブエナ ビスタ)は、他のメジャー配給会社だったら捨ててしまうような作品を、
宣伝力でクリーンヒットさせるのが本当に上手いと思う。
そして、多分、この煽りを受けて映画館に足を運んで、『パーフェクト・ストレンジャー』を見た人たちは、
宣伝自体が“どんでん返し”であったことに気が付かされるのでありました。。。
と、話が『パーフェクト・ストレンジャー』に寄ってしまいましたが、『ローグ アサシン』はアクション演出、“どんでん返し”の失敗例として、ある意味教科書的な作品です。
良い作品を認識するためには、失敗作も見た方が良い。
ということで、この二つの要素を踏まえつつ、
勉強という観点から是非、ご鑑賞ください!!!
みなさんも“どんでん返し”という言葉を耳にしたことがあるでしょう。
元々は歌舞伎の舞台用語で、短時間で行なう場面転換方法を指し、映画や小説ではそれが転じて、予想外の展開で観客や読者を驚かせることを言う。
お茶の間では「ねるとん紅鯨団」の“大どんでん返し”が有名である(コラコラ)。
それはともかく、要は“えっーーーー!!そんなんアリィィィィ!!!”という驚きの展開のことを“どんでん返し”というのである。
“どんでん返し”が味わえる作品で有名どころは、『シックス・センス』、『スティング』などでしょう。
他にも『サイコ』、『猿の惑星』、『ユージュアル・サスペクツ』、 『クライング・ゲーム』、『ソウ』、『アザーズ』、『愛している、愛してない』など結構挙げられる。
そして、この“どんでん返し”、『ローグ アサシン』にも用意されている。
しかし、全く“どんでん返し”としての機能が果たされていません。
理由があります。
“ローグ、お前は何者なのか?”
本作品のキャッチコピーにもなっているこの謎。
本編ではあまり重要な要素となっていない。
謎についてあんまり触れられていないので、見ている最中、謎を謎だと思って見ていない。
突然種明かしされても、種明かしになり得ない。
“どんでん返し”って、騙された側に騙される快感が伴ってこそ成立すると思う。
正しい“どんでん返し”の例として『シックス・センス』を挙げると、この作品には“どんでん返し”に向けて、たくさんの伏線が仕込まれている。
有名な衝撃の事実が明かされた後、フラッシュバック(過去のシーン振り返り)を用いて、この伏線を回収し、
観客に“あぁー!そうだったのか!!”と思わせる。
伏線はフラッシュバックで見せてくれるシーンだけではない。
物語の序盤、オスメント君が家から出てきて走り去って、教会に入っていくシーンからして、ヒントになっている。
何で慌てて走ったのか!?
何故、教会に入ったのか?
他にもたくさんある。
多くのヒントが散りばめられていながら、観客は全くそれに気が付かず、M・ナイト・シャマラン監督の思惑通りにまんまと騙されるから、
“うわー、やられたぁー!なんで気が付かなかったんだろう!!”と思うわけです。
伏線がたくさんあるから事実を知った上で、もう一度見る楽しみもある。
先日久しぶりに見直したのですが(多分5回目ぐらい)、本当に良く出来てますよ。
『スティング』は、劇中のロバート・ショウと一緒に観客も騙される。
しかもそこに痛快さが伴うから、騙されても清々しいんだよね。
で、『ローグ アサシン』ですが、観客に何かを暗示するようなヒントをほとんど示さない。
ヒントの少なさは種明かしのフラッシュバックシーンの数に比例している。
シャマラン監督も『シックス・センス』以降の作品で、同様の落とし穴はまってしまうのですが(特に『ヴィレッジ』)、
製作者がいくら“どんでん返し”だと言い張っても、『ローグ アサシン』の様に、
ヒントがなければ観客は分かるわけないし、騙しにもならないし、全然驚かない。
そんな訳で、デキが悪いからか『ローグ アサシン』は、宣伝的に“どんでん返し”をウリにはしていない。
対して、“ラスト7分11秒 あなはた絶対騙される”という挑戦的なキャッチコピーを打ち、
“どんでん返し”があることをウリにしたのが『パーフェクト・ストレンジャー』。
あんなに煽られたら、作品を見る前にいろいろと推測しちゃうよね。
なもんで、伊藤Pは見る前にキャストから推して“犯人コイツじゃない?”って、宣伝担当の方に言ったんだけど、当たっちまったよ。
まぁ、これは当てずっぽうなので、作品の本質とは関係ないんだけど、何にしても“どんでん返し”がありますという予備知識があると、当然、構えて見てしまう。
騙されないぞ!って、チャレンジしながら見る楽しみもあるけど、構えてみちゃうから、騙される快感が損なわれ、
作品を見る上での弊害にもなりうる危険性を孕んでいると思う。
紙一重ですね。
『シックス・センス』も日本では冒頭に“どんでん返し”がありまっせという、ブルース・ウィリスの有り難迷惑なメッセージが挿入されている。
それでも騙されて、さらに“やられたー”って思えちゃうんだからねぇ。。。
で、『パーフェクト・ストレンジャー』の“どんでん返し”ですが、ヒントといえないような弱いヒントを序盤にちょろちょろと出す程度で、質的には『ローグ アサシン』に近いレベル。
犯人と目される容疑者も、あまり疑わしくないし、“どんでん返し”があるってわかっているから、
コイツが犯人じゃねぇーと推測できちゃうし、残るはコイツしかいねーよなっ?って。
そんな感じですよ。
しかしながら、宣伝部は“どんでん返し”を強烈な“ウリ”にした。
ハル・ベリー&ブルース・ウィリスと、キャストは揃ってはいるものの、
日本ではパンチ力に欠ける作品を商品として売るために、猛烈に煽りまくって、興味を持たせる宣伝方針だ。
結果、興行ランキング初登場2位を記録。
作品力から言って、大健闘だと思う。
ウォルトディズニー(旧ブエナ ビスタ)は、他のメジャー配給会社だったら捨ててしまうような作品を、
宣伝力でクリーンヒットさせるのが本当に上手いと思う。
そして、多分、この煽りを受けて映画館に足を運んで、『パーフェクト・ストレンジャー』を見た人たちは、
宣伝自体が“どんでん返し”であったことに気が付かされるのでありました。。。
と、話が『パーフェクト・ストレンジャー』に寄ってしまいましたが、『ローグ アサシン』はアクション演出、“どんでん返し”の失敗例として、ある意味教科書的な作品です。
良い作品を認識するためには、失敗作も見た方が良い。
ということで、この二つの要素を踏まえつつ、
勉強という観点から是非、ご鑑賞ください!!!