既に公開中のものもありますが、秋の作品短評集。
■『ブレイブ ワン』
恋人を殺害されたうえ、自身も重症を負ったラジオDJのエリカが、銃を手に入れ悪者を成敗していく
女性版『狼よさらば』(74年)。
何かをキッカケに人間の残酷な一面が露見し、一線を越えてしまうことの是非を問う作品。
伊藤P的には、正しいか正しくないかの判断は付けかねたのですが、人の怒りというものは、時として理屈では語れない恐るべき狂気の原動力に成り得るとは思う。
でも、報復目的で人を殺めても、心の喪失感はなくならない。
本作もある意味911以降のアメリカ社会を描いていると思うんですけど、
『狼よさらば』から30年以上経っているにも関わらず、いまだ同じようなプロットが成立するNY。
ポール・カージー(『狼よさらば』の主人公)のダニ退治はあまり効果が無かったようで。。。
にしても、『ブレイブ ワン』のラスト。
なんだあのラストは。。。そりゃないでしょう。。。
『フライトプラン』といい、このところのジョディの作品は残尿感が酷いっす。。。
確かにあんたは巻き込まれ型サスペンスのヒロインですが、あんたの行動でより多くの被害が出ているという事実を忘れてはならない。
(「伊藤Pの部屋」#102参照)
監督は『クライング・ゲーム』のニール・ジョーダン。
他人の脚本では撮らない人ですが、今回はジョディに担ぎ出された。
しかし、あまり“らしさ”を発揮出来ず。
友・光武蔵人氏曰く「去勢されたニール・ジョーダン」
■『犯人に告ぐ』
映画化が決定される遥か以前に読んだ原作は、横山秀夫、福井晴敏らが絶賛するほど面白いとは思わなかった。
犯人を追い詰める決定的なポイントが、あまりにも“偶然”に頼りすぎている。
同じ雫井脩介の原作を映画化するのなら「火の粉」の方が、90年代に量産されたハリウッド心理サスペンスみたいだったので、うまくいくような気がした。
そんな余計な心配をしながら見たのですが、細かい部分は完全に脳の記憶から消去されていたのが幸いしたか、意外にも面白く鑑賞できた。
主人公が犯人を追うという本筋と平行して、警察内でのし上がるための足の引っ張り合いが描かれ、より物語をサスペンスフルにしてくれる。
(横山秀夫の世界観に近いかな)
■『ALWAYS 続・三丁目の夕日』
2005年の邦画ベスト1にチョイスした前作。
CG技術と使い方に新しさを感じ、純粋に昭和の人情劇に涙した。
しかし、その後、『ALWAYS』で描かれた昭和は、“本当の昭和ではないのでは?”という議論が成されたとある映画座談会への参加。
そして、北野武監督が『監督・ばんざい!』でアンチテーゼとして貧しい昭和を描き、井筒和幸監督も酷評した。
そういう声を耳にして、「それもそうだ」という揺らぐ気持ちも芽生え、前作のときの様な純粋な気持ちで、続編を見ることが出来たかといえば、非である。
にも関わらず、『ALWAYS』で描かれる昭和の世界がやはり好きだと感じた。
嘘でも良い。
映画の中だけでも幸せな気分になれれば。
厳しく貧しい昭和を描く作品がある一方、現実逃避した夢追い作品があっても良いじゃないってね。
前作以上のクオリティで見せる首都高速が上にない日本橋、羽田空港、こだまとその車窓とか、“絵”として見ていて楽しい。
でもCGに力を入れすぎたか、ドラマ部分はちょっと盛り上がりに欠けるかな。
そして、最後の“希望”の夕日なんだけど、50年後の東京を知る我々にとっては、複雑な心境でございます。
■『ディスタービア』
ディスタービアとは“Disturb(邪魔をする・騒がす・不安にする)”と“Suburbia(郊外居住者の言動)”を組み合わせた造語。
昔はたくさんあったけど、 今ではすっかり絶滅危惧類である“周りは信じてくれないけど、隣人は殺人鬼かも”スリラー。
先述の雫井脩介の「火の粉」もこの類。
で、このジャンルとしては久しぶりだということも手伝ってか、なかなか面白かった。
がっ!
主演のシャイア・ラブーフ。
何故こいつが人気者なのかさっぱりわからん。
『トランスフォーマー』の主人公同様、行動が軽率なバカ男を演じている。
“バカ”にしか見えないという意味では、適役なのかもしれないけど、
魅力あるバカなのか否かってのは、スリラー映画の観客を惹きつける要素として重要なんだよね。
コイツ、次回作ではインディ教授の相棒役でしょ。
インディ教授の横でギャーギャーわめく姿が目に浮かぶ。
うざぁ〜。。。。
お前がディスタービアだ。
■『ブレイブ ワン』
ジョディ・フォスター インタビュー動画&テキスト
■『犯人に告ぐ』
石橋凌 インタビュー動画&テキスト
■『ALWAYS 続・三丁目の夕日』
薬師丸ひろ子 インタビュー動画&テキスト