2007年11月02日更新

裏#044 「一部ネタバレ!笑撃の『恋空』」

「新垣結衣さんの取材が出来るかもしれません」

特に新垣結衣が好きなわけではないが、“旬”であることは間違いない。


このところ10代女優の取材が皆無だったりしたので、配給窓口担当者のこの一言に後押しされて見に行った『恋空』。

予備知識は新垣結衣が主演の携帯小説の映画化ということのみ。


携帯小説の映画化といえば、『クローズド・ノート』もその類だけど、悪名高き『Deep Love―アユの物語』のイメージが強烈にある。

『Deep Love』は原作を読んでもいないし、映画を見てもいないので、どうこう言える立場ではないのですが、至る所で酷評のレビューを読むに、まぁ、ダメなんでしょう。


そんな悪いイメージがあるなか見た『恋空』。

いやー、強烈でした。特に前半。


携帯小説であること、高校生の恋愛物語であることからすると、ターゲットは中高生〜20代前半なのでしょうが、
33歳のオッサンの感性からするとギャグとしか思えない展開とセリフ。

やっぱり携帯小説ってこうなの?って思っちまった。


宣伝のキャッチコピーは
「1200万人が涙。せつない恋がたどりつく、衝撃の結末」。


本当に1200万人も泣いたの?

日本の人口、約1億2千万人だよ(平成17年調べ)。


今の高校生はこういうの読んで、見て感性磨いているのか!?

それこそ衝撃だ。


衝撃に次ぐ衝撃で、笑撃になっちまったよ。

若者の人格形成に悪影響を及ぼすと思われ、伊藤P的にはR−18指定だ。


ということで、途中までネタバレ覚悟で笑撃を解説しよう。


「主人公はごく普通の高校生・美嘉(新垣結衣)。

彼女は学校で携帯を無くしてしまう。

探した末、図書館で着信音を鳴らす我が携帯を発見。

電話に出ると男の声が。


どうやら携帯を拾った(あるいは盗んだ?)男で、図書館に置いたのもコイツらしい。

ちょっと不審がって、美嘉は電話を切る。


確認すると携帯のデータが総て消去されていた。

そして、その後も、誰かもわからないその男から連絡がくる。

美嘉は丁度夏休みで暇を持て余していたのか、メールのやり取りを始めたばかりか、やがて普通に電話での会話にまで発展する。

朝までおしゃべりである」


携帯のデータ消されたらみなさんどうします?

普通怒りますよね?

それだけならまだしも、どこの誰だかわからない男と日常会話するか?

キモくない?

それとも、今時の高校生にとってはこれが普通なのか?

ジェネレーションギャップなのかな?と思いつつ、話は進む。

 

「夏休みが終わり、プールサイドでの初顔合わせ。

美嘉の前に現れたのはイケメンだけどパツキンで、大分アナーキーなヒロ(三浦春馬)であった。


美嘉は初対面ということで、意識バリバリしまくりで、普段はしないブルーのアイシャドウを塗りたくっていた。

しかし、ヒロは“似合わねぇーよ”といって、アイシャドウを拭う」


確かにアイシャドウは似合わない。というか志茂田景樹である。

明らかにおかしい。

これが可愛いと思っているのなら、美嘉の美的センスは多いに疑わしい。


ウブな美嘉の背伸びを表現したい気持ちは判るけど、酷くない?これ?

更に、電話で幾ら話していたとはいえ、付き合っているわけではない女子のアイシャドウをいきなり拭うデリカシーの欠片も無いヒロの行為はどうなんだい?


更にプレゼントとして差し出した品がねぇ。。。
(これは映画見て確認してください)

それじゃ、乙女は響かんさ。。。

あんたマセてんのかウブなのかどっちなんだい。


「美嘉はヒロであること、そして、ヒロの思いがけない行動に戸惑い逃げ出すが、結局二人は付き合うことになる。

美嘉にとっては初めての恋愛である。


人の携帯のデータを故意に消去したうえ、携帯を利用して乙女心を操作し、正面から堂々と告れない男に恋をしたのである」
 

と、まぁ、ここまでは違和感はあるにしてもまだ許容範囲である。

この後、衝撃じゃなくて、笑撃の展開が炸裂する。


「付き合うことになり、デートの待ち合わせ場所に佇む美嘉の前に、突然一台のワゴン車が停まり美嘉を拉致る。

草原に停まった車から逃げ出す美嘉を3〜4人の野郎どもが追いかけ、真昼間の青空強姦をする。

しかもビデオカメラでの録画付きである」


強姦チームは何故わざわざ車を停めて、目撃率が高くなる外を選ぶ!

「そして、犯された割には体も洋服もダメージがほとんどない美嘉は、茫然自失状態で、夜の草原でへたり込んでいる。

そこへ激チャリのヒロが美嘉を探しにやってくる。


美嘉を見つけたヒロ。

“なんでここに居るってわかったの?”という美嘉の質問に、全く根拠のない自信を持って探しに来た旨を伝える。


あんたはエスパーか!?

更に犯されたと知り、“許せねー!!”と怒り爆発、傷だらけの彼女をヤンキーであるヒロの姉に託して、走り出す。


ヒロの前カノが妬んで仕組んだ嫌がらせだと踏んだヒロは、いとも簡単に元カノの手下である実行犯を見つけ、ボコボコにして、ゲロさせ、ビデオカメラを破壊する」


おーい!!!

なんじゃそりゃー!!!!


元カノ、妬みだけでやる行為か?
強姦は重罪だぞ!

しかもヒロに5秒でばれてるぞ!


で、ヒロ、幾ら喧嘩強くても(強そうに見えないけど)、野郎3〜4人を一人で相手にしたら、勝てないって。

NOAHのプロレスラー三沢でさえ、4人の相手は無理って言ってたぞ。


更にビデオカメラの破壊行為。

あんたが証拠品を破壊してどーするの!!

顔も体も声も収録されている超ウルトラ重要証拠品だぞ!!!


強姦は精神的な苦痛と、世間の偏見の眼を気にして被害者が訴えないケースが多いという。

でも、こんな決定的な証拠品があったら、一発検挙で少年院送りに出来るかも知れないんだぞ!!


もうこの時点で、真面目に見る気はなくなったのだが、『恋空』はまだまだ有り得ない展開を爆進する。

「強姦された美嘉だが、幸い妊娠はしていなかった。

浅野ゆう子演じる母親も“あなたはなにも変らないのよ”と励ます」


高校生の娘が犯されたと知ったら、みなさんどうします?

怒りますよね?


この一家は娘が強姦されたのにも関わらず全く動じない。

母親の一言で片付けてしまう。


犯人判っているのに、犯人に対して、あるいはその親に対して、なんのお咎めもしない。

せめて警察に訴えかけなさいよ。


「流石に強姦による精神的なダメージがあるため、美嘉は学校を休んで引き篭る」

美嘉は学校を休んでいるだけであって、あまりPTSD(心的外傷後ストレス障害)が感じられない。


両親の行動といい、美嘉の精神状態といい、全くリアリティが感じられない。

とはいうものの、もう既に「強姦 → 報復」のくだりで、伊藤Pには免疫が出来たのでさほど驚きはしない。

そういうものだと思って取り組むのが正しい『恋空』鑑賞法だ。


「やがて、PTSDを乗り越えた美嘉は学校へ登校するが、ヒロの元カノからの嫌がらせメールがくるようになる。

更に、各教室の黒板に“傷物女”と書かれ、彼女が強姦されたことが学校中に広まってしまう。


黒板の中傷文を読んだヒロは怒り狂い、黒板を消して周り、首謀者が誰であるか判っているのにも関わらず、全く関係ない生徒を小突き、“誰だ!この野郎!!絶対に許さねーぞ!美嘉は俺が守る!!”と怒鳴り散らす」


あのさー、元カノは美嘉のメルアドどこでゲットしたの?

美嘉も嫌がらせメールが嫌なら、メルアド変えれば良いじゃない。

送信元は分かっているんだから着信拒否するとかさ〜対処しなさいよ。

あんたバカ?


で、この元カノのやっていることは侮辱罪、名誉毀損罪に該当する犯罪行為です。

そして、その証拠となる黒板の中傷文を、ヒロは証拠写真も撮らずに消してしまう。

あんたまた証拠隠滅ですか?


強姦現場も判っていたし、実はヒロ、元カノの手下?
 

「怒り狂ったヒロは思い出の場所、図書館に美嘉を連れ込み、“絶対に俺が守る”と豪語する。

男らしいヒロに感動した美嘉は完全に惚れてしまう。


で、二人は結ばれる」

 

だぁーーーーーーー!!

一限開始前の図書館でHするな!!!


せめて家でやれ!!!

図書委員に怒られるぞ!!!

ちゅうか担任出て来い!!


美嘉は強姦されているけど、セックスに関して後遺症・トラウマはないんかい!!!!

やっぱりR−18だ!!!

はぁはぁ。。


それとも若者の性欲と勢いなんてそんなもんなのか?

「肉体関係を結んだことによって、完全に心の傷が(簡単に)癒えた美嘉。

そして、なんと美嘉の体にはベイビー@図書館が!!!!

ヒロは喜び学校を辞めて働くから一緒に育てようと言う」


ヒロくん。せめて高校は卒業しましょう。

それまでは実家に住まわせてもらうとか、親からお金を借りるとかして、凌ぎなさい。


男らしく在りたいという気持ちは判るが、世の中そんなに簡単じゃないよ。


って思っていたら、

「取り急ぎ、さっさとヒロ側の家族の承諾を得る美嘉とヒロ。

続いて、ヒロは自慢のパツキンを黒髪に戻し、美嘉の自宅を訪問し、ご両親に挨拶をする」


ここが一番の爆笑どころである。

美嘉の父親を演じたのは高橋ジョージ。

最高のセリフを発します。

「お前に私の気持ちが分かるか!?」


40歳にして16歳の三船美嘉と結婚した高橋ジョージにこのセリフを言わせるとは!

高橋ジョージは役者として良い味出しているんだけど、もう試写室で噴出しそうになっちまったよ。


絶妙なキャスティングだ。

でも、試写室では誰も笑っていなかった。


伊藤Pだけ?このツボ?

 

「晴れて両家の承諾を得た二人は生む前提で、生活を始める。

一方、元カノの嫌がらせは執拗に続いており、遂に強姦の実行犯を引き連れて美嘉の前に現れる。


しかし、気丈に振舞う美嘉。

それに対して、元カノは美嘉を突き飛ばす。


短い階段から転げ落ちる美嘉。

手下は強姦しているのにも関わらず、それはやり過ぎだよという顔をする。


そして、クリスマスイブの夜。美嘉は流産してしまう。

原因はもちろん突き飛ばされたからである」


この元カノの行為はどうなんでしょう。

日本の法律では、胎児は母体の一部という扱いになるので、流産してしまったことに対して、元カノが罪に問われることはない。


しかしながら、元カノさんは強姦教唆、侮辱・名誉毀損行為を既に犯しており暴行行為が流産の原因になったとなれば、裁判官の心証も良くないでしょう。

より重い刑が科せられる可能性が高くなります。


でも、美嘉たちは元カノを訴えません。

やっぱりバカ?


「流産によるショックもあまり見受けられないまま、美嘉とヒロは更に強い絆で結ばれ、永遠の愛を誓う。

しかし、高校2年の春、誓ったくせにヒロは突然、美嘉に別れを告げる。。。

ヒロの行為が理解できないうえ、失恋に苦しむ美嘉」


美嘉はたった1年間で、初恋愛、強姦、妊娠、流産、失恋を経験しています。

凄いねぇー、美嘉。

壮絶だよ。

それはそれは相当応えたでしょう。。。
 

「やがて美嘉は大学生の優(小出恵介)と知り合い付き合うことになる」

ハヤッ!!!


「素敵な恋愛関係を築いていた美嘉と優。

しかし、美嘉はヒロに関する衝撃の事実を知る。。。」


えーい!

もうどーでもいいやぁー!!!

って、もうとっくの昔にどうでも良くなってんだけどさ!!!


「衝撃の結末」なんて、もうこれだけ笑撃見せられたら、なにが起きても衝撃にならんわ。。。

しかもトドメの衝撃がそれかい!!

この強引さ、『連理の枝』かい!!

あぁ、衝撃だよ!衝撃!!!


とまぁ、疑問だらけのストーリーを追ってきましたが、小出恵介が出てくるあたりから映画として大分持ち直します。

ただ、前半から中盤にかけての展開は苦しすぎる。
可笑しくて。


新垣結衣は良いですよ。

フレッシュだし、いろんな表情を見せてくれる。


三浦春馬も気合が入り過ぎて滑っているところあるけど、気持ちは物凄い伝わってきます。


小出恵介も“良い人”である必要性を理解した上で演技している。


そんな彼らの意気込みを、余りにもリアリティの無い、細部の配慮に欠けた物語とチープなセリフがブチ壊している。

俳優たちが真面目に挑んでいる分、余計に可笑しくなっちゃうんだよね。


強姦のくだりとか無くても十分に成立するし、二人が愛を深める表現方法は他にもあるでしょう。

劇的な展開しか思いつかないのは、単に作り手の練りが足りないんだよ。


えっ?

なに?

これ、実話なの?

ほんと?

だとしたらスゲーな。。。

 
追伸:
新垣結衣の取材。取材日設けて頂いたのですが、伊藤Pのスケジュールが合わず、インタビュアーを務められず。。。
無念。。。なんのために「恋空」を見たのだ。。。俺。。。



あっ、このコラムを書くためだ!

※『恋空』

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コメント (9)

真衣:

意味わかんねぇ

恋空大好き:

ひどいよ・・・
少しはフィクションガはいってンの知ってる???
最低

dies:

全く同意見。

流石です。

伊藤Pさん。

全て代弁してくれました。

全く同意見。

伊藤P:

>diesさん

コメントありがとうございます。

内容的には本当に酷い映画だと今でも思っているし、この気持ちは一生変わらないでしょう。

仕事上、映画業界の人と話す機会が多々あるんですけど、その際に結構頻繁に出てくるタイトルなんですよ。
勿論、マイナス的な扱いなんですけどね。
そういった意味では、見た後、一度も話題に上らない映画よりは、
まだ使い勝手が良いって感じっすね。

正月には同じくケータイ小説を映画化した『赤い糸』がある。
これはどうなんでしょうね・・・

まやかし:

映画うんぬんの前に
「携帯小説」っていうクソジャンルをなんとかしないと・・・

まぁ、でも普段本も読まないような、政治とか経済とか、歴史とか環境とか、イデオロギーとか戦争とか、なんの縁もない「恋愛」と「セックス」と「芸能」と「ゴシップ」だけが脳みそにつまってる人には、衝撃なんでしょうね。

伊藤P:

>まやかしさん
コメントありがとうございます。
『クローズド・ノート』もケータイ小説なんですよね。あまり良い出来ではありませんでしたが、『恋空』と比べるとまだマシですね。
近日、『赤い糸』を見ようかと思っているのですが、既に見た人の感想を聞くに・・・
うーん、限りある人生、時間を無駄にしたくないんだけど、
いろんな意味で見ておくべき作品なので、葛藤しております・・・


ケータイ小説というクソジャンルは、瀬戸内寂聴先生に改善してもらいましょう。

亜衣:

ケータイ小説をくそジャンルって言うな!!
だったら、抗議しろっ!!
瀬戸内寂聴先生って…そんな説得力あるかぁ??
ていうか、改善なんてしなくていいしぃ〜!!
少しフィクション入ってる事ぐらい、分んだろ(笑)
それにさぁ、そんなに言うなら見なくてよくね??
少しはお前ら、頭使え。

学生:

何の財力も無い若者が、出版費用などを一切かけずに情報を発信できる。そんなジャンルとして携帯小説は有用だと思いますよ。また、出版倫理とか関係なく情報を垂れ流せるというのは「恋空」のような惨事を生む可能性はあるものの、「他ではいえないことがいえる」という優れた一面であります。
このジャンルの問題は、コメント欄にも沸いているような、倫理観に乏しい土人的若者が生産者と消費者の両方に腰を据えているということです。
瀬戸内寂聴先生でなくても改善できる問題だと思いますね。

話は変わりますが、本文で「日本の法律では、胎児は母体の一部という扱いになるので、流産してしまったことに対して、元カノが罪に問われることはない。」と述べられていますが、突き飛ばしたのが原因で流産したのであれば暴行障害罪ですよ。民事で争うことも可能ですし。
それに、法的手段に訴えるよりまず、彼女のアフターケアに専念したヒロくん(だっけ?)の姿勢も、見方によってはアリとはいかないまでも、ナシではないんじゃないかと思います。
まあ、法を頼る事を知らない若者には困りものですが。

レン:

恋空は好きだけど、確かにそーかも知れない!
赤い糸も好き。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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