「フィデルというお転婆で、おしゃまな女の子が、
周囲の人たちを翻弄するコメディタッチの成長物語」
『ぜんぶ、フィデルのせい』 恵比寿ガーデンシネマほか全国にて公開中 配給会社:ショウゲート |
女の子のしかめっ面ながらも可愛らしいビジュアルと、
タイトルからこんな内容の映画だと思っていた。
『大人は判ってくれない』の軟化版、
あるいは『ロッタちゃん』のもう少し年上版な感じ。
ところが、“フィデル”が“フィデル・カストロ”であり、
両親が共産主義に傾倒したため、生活が一変し、
逆に娘のアンナが振り回される話だと知り驚いた。
しかも1970年の話。
おやおや、これはちょっと予習が必要じゃない。
と、鑑賞前に少しだけプレスを読んで、
ド・ゴール政権、五月革命、ギリシアとスペインの軍事政権など、
大まかな周辺情報を頭に叩き込んだ。
しかしながら、別に小難しい作品ではない。
社会情勢に伴う生活の変化をアンナの視点で描いているので、
別に当時の出来事を知らなくても、話についていけなくなることはない。
逆に当時のことを知らない場合、アンナの気持ちが疑似体験できるとも言える。
まぁ、知っていた方が良いとは思うけどね。
にしても、アンナの両親は無茶苦茶である。
子供に迎合しがちな今の日本の親にはない信念を貫いている。
アンナが反抗的になり、噛み付く気持ちも良くわかる。
でもアンナはアンナで、めくるめく環境変化に対して、
子供なりに理解し、対応し、気が付かないうちに成長していく。
ラストシーンがアンナの成長を物語っている。
親はなくとも子は育つ。
監督は『Z』、『戒厳令』、『ミッシング』など社会派の名作を多く手がけた巨匠コスタ・ガヴラスの娘、ジュリー・ガヴラス。
父親譲りの社会派的な一面を見せる一方、
女性らしい着眼点での演出も光る。
例えば、食べ物。
アンナの生活が変るごとに食事もどんどん変化していく。
子供たちにとって食べることは、楽しみであり、興味の対象になる。
「お母さん、今日の夕飯なに?」
「ハンバーグよ」
「わーい!!」
ってね。
アンナの生活の変化を食事で表現するアイディアは、この作品の重要なスパイスとなっている。
何でも食べることの出来る食生活は勿論のこと、
デモも反戦も共産主義もない今の日本の子供たちと、
アンナの環境とは大違いであり、そこに共通項を見出すことは難しい。
でも、逆に日本の子供たちの生活環境と比較して、考えさせられた。
今の子供たちに限らず、自分が子供だった頃も含めてね。
作品の中でのアンナは9歳。
2008年には47歳になっている。
一体、どんな中年女性に成長しているんだろう。
『ぜんぶ、フィデルのせい』 ※ニナ・ケルヴェル&ジュリー・ガヴラス監督 インタビュー テキスト ※ジュリー・ガヴラス監督 インタビュー テキスト |
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.t-shirt-ya.com/blog/cgi/mt-tb.cgi/806
この一覧は、次のエントリーを参照しています: #180 『ぜんぶ、フィデルのせい』:
» 「ぜんぶ、フィデルのせい」少女の目から見た革命 送信元 soramove
「ぜんぶ、フィデルのせい」★★★
ニナ・ケルヴェル、ジュリー・ドパルデュー主演
ジュリー・ガヴラス監督、2006年、イタリア、フランス、99分
... [詳しくはこちら]
[↑ページトップへ]
「伊藤Pの部屋」内検索
タグ一覧
リンク
プロフィール
伊藤一之<♂>
2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。
本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
Powered by
Movable Type
Movable Type