2008年01月22日更新

#180 『ぜんぶ、フィデルのせい』

「フィデルというお転婆で、おしゃまな女の子が、
周囲の人たちを翻弄するコメディタッチの成長物語」




ぜんぶ、フィデルのせい
『ぜんぶ、フィデルのせい』
恵比寿ガーデンシネマほか全国にて公開中
配給会社:ショウゲート




女の子のしかめっ面ながらも可愛らしいビジュアルと、
タイトルからこんな内容の映画だと思っていた。


『大人は判ってくれない』の軟化版、
あるいは『ロッタちゃん』のもう少し年上版な感じ。


ところが、“フィデル”が“フィデル・カストロ”であり、
両親が共産主義に傾倒したため、生活が一変し、
逆に娘のアンナが振り回される話だと知り驚いた。


しかも1970年の話。


おやおや、これはちょっと予習が必要じゃない。
と、鑑賞前に少しだけプレスを読んで、
ド・ゴール政権、五月革命、ギリシアとスペインの軍事政権など、
大まかな周辺情報を頭に叩き込んだ。


しかしながら、別に小難しい作品ではない。
社会情勢に伴う生活の変化をアンナの視点で描いているので、
別に当時の出来事を知らなくても、話についていけなくなることはない。


逆に当時のことを知らない場合、アンナの気持ちが疑似体験できるとも言える。


まぁ、知っていた方が良いとは思うけどね。


ぜんぶ、フィデルのせい


にしても、アンナの両親は無茶苦茶である。
子供に迎合しがちな今の日本の親にはない信念を貫いている。


アンナが反抗的になり、噛み付く気持ちも良くわかる。


でもアンナはアンナで、めくるめく環境変化に対して、
子供なりに理解し、対応し、気が付かないうちに成長していく。


ラストシーンがアンナの成長を物語っている。


親はなくとも子は育つ。


ぜんぶ、フィデルのせい


監督は『Z』、『戒厳令』、『ミッシング』など社会派の名作を多く手がけた巨匠コスタ・ガヴラスの娘、ジュリー・ガヴラス。


父親譲りの社会派的な一面を見せる一方、
女性らしい着眼点での演出も光る。


例えば、食べ物。
アンナの生活が変るごとに食事もどんどん変化していく。
子供たちにとって食べることは、楽しみであり、興味の対象になる。


「お母さん、今日の夕飯なに?」
「ハンバーグよ」
「わーい!!」
ってね。


アンナの生活の変化を食事で表現するアイディアは、この作品の重要なスパイスとなっている。


何でも食べることの出来る食生活は勿論のこと、
デモも反戦も共産主義もない今の日本の子供たちと、
アンナの環境とは大違いであり、そこに共通項を見出すことは難しい。


でも、逆に日本の子供たちの生活環境と比較して、考えさせられた。
今の子供たちに限らず、自分が子供だった頃も含めてね。


作品の中でのアンナは9歳。
2008年には47歳になっている。
一体、どんな中年女性に成長しているんだろう。






『ぜんぶ、フィデルのせい』
ニナ&監督
※ニナ・ケルヴェル&ジュリー・ガヴラス監督 インタビュー テキスト
※ジュリー・ガヴラス監督 インタビュー テキスト

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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