2008年01月31日更新

#184 『歓喜の歌』

文化会館の飯塚主任は、大晦日に開催されるママさんコーラスをダブルブッキングしてしまう。
二つのコーラスグループの調整に嫌々ながら取り掛かる飯塚主任。
しかしながら、飯塚に次から次へと災難が降りかかってくる。




歓喜の歌
『歓喜の歌』
2/2よりシネカノン有楽町1丁目、アミューズCQN、新宿ガーデンシネマほか全国にて
配給会社:シネカノン
(C)2008「歓喜の歌」パートナーズ



立川志の輔の新作落語『歓喜の歌』の映画化。
新作落語の映画化は、1969〜70年に製作された故春風亭柳昇の原作、
フランキー堺主演の『与太郎戦記』シリーズ以来とのこと。


落語に多く見られる人情劇は、映画化しやすいように思えるので、
相性が良さそうだけど、意外と少ないんですね。


さて、そんな珍しい『歓喜の歌』の主人公飯塚を演じたのは小林薫。


小林薫がいなければ、この作品は成立しなかったのでは?
と思えるぐらいのはまり役。
昔だったら植木等だな。


飯塚は典型的なダメ男。
公務員であるが故か、安穏とした人生を歩み、
仕事はいい加減、日和見主義、事なかれ主義、責任転嫁はお手のもの。
慇懃無礼で、自分のミスは棚に上げて、人の過ちには文句をつける。


酒にだらしなく、情熱を注ぐのは飲み屋の女だけ。
その女が元凶となり、負債さえも抱えてしまう。


当然、家庭なんて省みておらず、
奥さんにも愛想をつかれ、「年越しそば、一人寂しく食べなさいよ!」と離婚寸前。


でもこの飯塚主任、何故か憎めない。


「いるよねぇー、こういう人」って思えるし、
飯塚の中に自分を発見してしまい、ちょっと複雑な心境になったりする。


この憎たらしいけど憎めないという微妙なニュアンスを、
小林薫が見事に演じている。


いい加減な飯塚は、ダブルブッキングも適当に片付けようとするが、
二つのママさんコーラスグループはどちらも譲らない。


どうしたものかと頭を抱えながら、調整を続けていくうちに、
飯塚はママさんコーラスのメンバーたちの情熱に触れ、
少しずつ自分に足りないものに気付き始める。


物語的にはありがちな話だけど、
ユーモアとペーソスが全編に溢れ、
見ていて気持ちが良い。優しい気持ちにもなれる。


優しい気持ちになれた最大のキーパーソンは、
安田成美演じるママさんコーラスのリーダー五十嵐だ。


底抜けに明るい。何があっても超前向き。
超楽観主義者。
こんな人が傍にいてくれたら、良いなぁーと思う。


市民会館で夜を明かし、
疲れきった飯塚主任の「いいなぁー、俺にもなんか良いことないかなぁー」という発言に対して、
五十嵐が発した一言が、素晴らしいと思った。


このセリフ、鑑賞後、何度か使わせてもらっています!


隣の芝は青く見えるし、本当の幸せは灯台下暗し、気付いていないだけなんだよね。
人によって幸せのあり方は違う。


シネカノン作品と松岡錠司監督作品の常連ばっかりで、新鮮味はあんまりないけど、
他の役者さんたちもそれぞれ持ち味を発揮していて良い。
特に根岸季衣。
アンミラな格好をまさか拝むことになるとは。。。


最近見た日本映画の中では、一番笑った作品かも。
無理に笑わせようとしているのではなく、自然に出てくる笑い。
くだらない一発芸なんかより、遥かに高度な技術が必要だ。
というか、狙っていなかったらしい。


悪い人は出てこない。
笑って、ホロっと出来て、優しい気持ちになれる。
そんな作品です


そして、2月から3月にかけて、
本作以外にも『うた魂♪』、『ブラブラバンバン』といった集団合唱、演奏音楽作品がある。


同じ音楽ものでも、それぞれ系統は違う。
3作品を見比べてみるのも楽しいかも。


『歓喜の歌』は歌で感動するというタイプではないかな。
歌よりも、登場人物の面白さの方が印象に残った。






『歓喜の歌』
※小林薫 インタビュー テキスト

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 1本目は強烈な内容だったので、2本目はお口直しにこちらをどうぞ。 【題名】 歓喜の歌 【製作年】 2007年 【製作国】 日本 ... [詳しくはこちら]

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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