文化会館の飯塚主任は、大晦日に開催されるママさんコーラスをダブルブッキングしてしまう。
二つのコーラスグループの調整に嫌々ながら取り掛かる飯塚主任。
しかしながら、飯塚に次から次へと災難が降りかかってくる。
『歓喜の歌』 2/2よりシネカノン有楽町1丁目、アミューズCQN、新宿ガーデンシネマほか全国にて 配給会社:シネカノン (C)2008「歓喜の歌」パートナーズ |
立川志の輔の新作落語『歓喜の歌』の映画化。
新作落語の映画化は、1969〜70年に製作された故春風亭柳昇の原作、
フランキー堺主演の『与太郎戦記』シリーズ以来とのこと。
落語に多く見られる人情劇は、映画化しやすいように思えるので、
相性が良さそうだけど、意外と少ないんですね。
さて、そんな珍しい『歓喜の歌』の主人公飯塚を演じたのは小林薫。
小林薫がいなければ、この作品は成立しなかったのでは?
と思えるぐらいのはまり役。
昔だったら植木等だな。
飯塚は典型的なダメ男。
公務員であるが故か、安穏とした人生を歩み、
仕事はいい加減、日和見主義、事なかれ主義、責任転嫁はお手のもの。
慇懃無礼で、自分のミスは棚に上げて、人の過ちには文句をつける。
酒にだらしなく、情熱を注ぐのは飲み屋の女だけ。
その女が元凶となり、負債さえも抱えてしまう。
当然、家庭なんて省みておらず、
奥さんにも愛想をつかれ、「年越しそば、一人寂しく食べなさいよ!」と離婚寸前。
でもこの飯塚主任、何故か憎めない。
「いるよねぇー、こういう人」って思えるし、
飯塚の中に自分を発見してしまい、ちょっと複雑な心境になったりする。
この憎たらしいけど憎めないという微妙なニュアンスを、
小林薫が見事に演じている。
いい加減な飯塚は、ダブルブッキングも適当に片付けようとするが、
二つのママさんコーラスグループはどちらも譲らない。
どうしたものかと頭を抱えながら、調整を続けていくうちに、
飯塚はママさんコーラスのメンバーたちの情熱に触れ、
少しずつ自分に足りないものに気付き始める。
物語的にはありがちな話だけど、
ユーモアとペーソスが全編に溢れ、
見ていて気持ちが良い。優しい気持ちにもなれる。
優しい気持ちになれた最大のキーパーソンは、
安田成美演じるママさんコーラスのリーダー五十嵐だ。
底抜けに明るい。何があっても超前向き。
超楽観主義者。
こんな人が傍にいてくれたら、良いなぁーと思う。
市民会館で夜を明かし、
疲れきった飯塚主任の「いいなぁー、俺にもなんか良いことないかなぁー」という発言に対して、
五十嵐が発した一言が、素晴らしいと思った。
このセリフ、鑑賞後、何度か使わせてもらっています!
隣の芝は青く見えるし、本当の幸せは灯台下暗し、気付いていないだけなんだよね。
人によって幸せのあり方は違う。
シネカノン作品と松岡錠司監督作品の常連ばっかりで、新鮮味はあんまりないけど、
他の役者さんたちもそれぞれ持ち味を発揮していて良い。
特に根岸季衣。
アンミラな格好をまさか拝むことになるとは。。。
最近見た日本映画の中では、一番笑った作品かも。
無理に笑わせようとしているのではなく、自然に出てくる笑い。
くだらない一発芸なんかより、遥かに高度な技術が必要だ。
というか、狙っていなかったらしい。
悪い人は出てこない。
笑って、ホロっと出来て、優しい気持ちになれる。
そんな作品です
そして、2月から3月にかけて、
本作以外にも『うた魂♪』、『ブラブラバンバン』といった集団合唱、演奏音楽作品がある。
同じ音楽ものでも、それぞれ系統は違う。
3作品を見比べてみるのも楽しいかも。
『歓喜の歌』は歌で感動するというタイプではないかな。
歌よりも、登場人物の面白さの方が印象に残った。
『歓喜の歌』 ※小林薫 インタビュー テキスト |
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1本目は強烈な内容だったので、2本目はお口直しにこちらをどうぞ。
【題名】
歓喜の歌
【製作年】
2007年
【製作国】
日本
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プロフィール
伊藤一之<♂>
2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。
本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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