原作を読んでいなかったので
全くどんな話なのか知らないで見た。
『陰日向に咲く』 1/26より日劇2ほか全国東宝系にて 配給会社:東宝 (C)2008「陰日向に咲く」製作委員会 |
原作では各章の登場人物が、最終章で全員登場するという手法らしいけど、
映画はそうではない。
原作を読んだ人は「あぁーなるほどー」と思うのかも知れないけど、
伊藤Pは基本、原作と映画は別物というスタンスをとりたい人間だし、
そもそも読んでいないのだから、そこに上手さを感じることは端から出来ない。
映画では各エピソードが、オムニバスのようにキッチリ分かれているのではなく、
普通の映画と同じような編集で、物語が進んでいく群像劇。
しかしながら、各エピソードはあまりシンクロしないので、
総てのパートがバラバラ。
人間関係や何故その人がそこにいるのかとか、
多分に説明不足なところがあり、上手くつながらないし、納得も出来ない。
無理もかなりある。
クライマックスの持って行き方も、上手いとは思えない。
塚本高史演じるアキバ系オタクのパートなんて完全に浮いていて、
いるの?って。
全てのエピソードを繋ぐ、台風とか黄色い傘といった小道具的な要素も、
機能しているとは言いがたい。
その黄色い傘は、現実では有り得ない空間移動をする。
今まではかなり現実的に物事を進行しているのに、
突然、ファンタジーになる。
陰日向に生きる人たちに光を当て、観客に共鳴させようとしているのなら、
ファンタジーよりもリアルを追求した方が、よりグッとくると思う。
まぁ、現実的と言っても、
夜中に取立て屋が現れ、更には不法侵入したりするので、
厳密に言えば、ちっともリアリティがなかったりするんだけどさ。
(現在は取立て方法、取立て時間は法律によって決まっているんだってさ)
映画なので、そうした方が面白いのもわかるし、
別に突き詰める程の事でもないんだけどね。
それよりも何よりも、日陰に生きる人たちのエピソードっていうけど、
登場人物のほとんどが日陰に生きているとは思えないんだよね。
岡田准一演じる借金まみれで、パチンコ大好きなシンヤはよしとしよう。
西田敏行演じる浮浪者モーゼ、伊藤敦史演じる売れない芸人雷太も良いでしょう。
それ以外の方々、日陰に生きてるか?
宮崎あおい演じる芸人鳴子。
美人だし、芸人としての力量もある。
その娘の寿子(宮崎あおいが一人二役)も弁護士だ。
三浦友和演じるリュウタロウは、
モーゼに憧れ自らホームレス生活を始めるけど、
エリートサラリーマンであることは変らない。
全て捨て切れてないし。
平山あや演じるアイドルみゃーこも、崖っぷちという割には、
CDやDVDをリリースしている。
出したくても出せないアイドルはたくさんいると思う。
客は入らないが、イベントだって開催している。
例えアイドル扱いされていないにしても、テレビ出演も果たしている。
仕事があるだけマシでしょう。
しかも、それでブレイクした。
塚本高史演じるみゃーこを追っかけるアキバ系オタクも、
みゃーこを応援している時楽しそうだよ。
第一、オタクは日陰に生きる人たちなんかい?
緒川たまき演じるストリッパーのジュピターは、
登場シーンが少ないし、あまり説明してくれないので良くわからん。
あまりダメ人間いないじゃん。
これって作品の根底にあるテーマ性を覆さないか?
ということで、疑問だらけの作品なのですが、良いところもたくさんある。
岡田准一はやっぱりカッコイイ(でも演技がいつも同じ)。
宮崎あおいはやっぱり可愛い(でも人妻)。
平山あやも可愛いことに気が付いた(インタビュー経験あるんだけど。。。)。
冒頭の空撮からバスの中に入っていくカメラワークが面白い。
ロケ地が新宿なのが嬉しい。
原作を読んでみたいと思った。
ほら、こんなに列挙できた。
では、何故、本作品が「裏部屋」行きとなったのか?
それは、西田敏行演じるモーゼがサイテーな人間だからという理由に尽きる。
モーゼは適当で嘘つきだ。
でもその嘘は明らかに嘘だとわかる可愛らしい嘘だ。
しかしながら、モーゼは絶対に許せないような嘘をついてしまう。
あるプロ野球選手がホームレスとなった父親を探していて、
どうやらモーゼが父親らしいと判明し、モーゼに会いに来る。
自分たちを捨てて出て行った父親に対して、
プロ野球選手は、
「あなたのことを許せないけど、許そうとする努力はします」
と言い、一緒に暮らそうと提案する。
酷い人間だけど、自分の父親である。
やり直せるならやり直したいというプロ野球選手の気持ち。
とても勇気のいる行動だし、立派だと思う。
そして、モーゼはそんな息子の気持ちが嬉しかったのか、
オイオイ泣きながら父親であることを認め、
息子の元へと歩み寄り、ホームレス生活を捨てる。
ところが、モーゼはプロ野球選手の父親ではなかったことが、
後で判る。
このプロ野球選手の気持ちを踏みにじる酷い嘘が、どうしても許せなかった。
オオボラ吹きにも程がある。
ふざけんな。
その後、モーゼとプロ野球選手のやり取りは描かれない。
なんだこの演出は。
こんなクソキャラのどこに共鳴して、感動しろというのだ。
2008年度の最低キャラが確定した。
『陰日向に咲く』 塚本高史 インタビュー テキスト |
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プロフィール
伊藤一之<♂>
2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。
本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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