先週の土曜日に『ライラの冒険 黄金の羅針盤』が初日を迎えました。
『ライラの冒険 黄金の羅針盤』 丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にて公開中 配給会社:ギャガ・コミュニケーションズ、松竹 TM & (C) MMVII NEW LINE PRODUCTIONS, INC.ALL RIGHTS RESERVED. |
初日観客動員数313,762名。
これは『ナルニア国物語 ライオンと魔女』、『ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間』、
『スターウォーズ エピソード1』といった三部作シリーズの初日動員数を上回る数字。
初日2日間(2月22日、23日の先行上映込み)で動員708,573人、興収823,237,400円。
先行上映が、約270,000,000円だったらしいので、
純粋に初日2日間で、約5億5千万円。
この数字は、最終興収68億円だった『ナルニア』対比で75%で、
興収30億円以上は確実、40億円以上も十分に狙えるとのこと。
まぁ、世間一般的には大ヒットスタートなわけでして、配給元のGAGAも一安心。
よって、【伊藤Pの部屋】#191で予告した通り、
どうやら伊藤Pの感想なんて、鼻くそ状態のようなので、
『ライラの冒険 黄金の羅針盤』について、もう少し突っ込んでお話したいと思います。
以下、ネタバレも含んでおりますので、ご注意下さい。
さて、まず、【伊藤Pの部屋】#191でも述べましたが、
『ライラの冒険』はいきなりパラレルワールドから始まります。
『リアル鬼ごっこ』や『ナルニア』がそうであるように、
パラレルワールドが登場する作品の多くは、現実世界から始まり、
何かのきっかけで主人公がパラレルワードに行く。
だから、見ている観客は主人公と一緒に未知の世界に飛び込み、
主人公と共にパラレルワールドに順応していくことが出来る。
しかし、『ライラの冒険』は既にパラレルワールドなので、
冒頭にナレーションによる説明が必要となってしまう。
原作を読んでいたり、そうであると知っていて心構えがあるのならば、
その説明をすんなり理解できるかもしれないが、
何も知らないで見ると、かなり面食らう。
慌てて理解しようと思っても、後の祭り。
パラレルワールドをあまり理解する事なく、ライラの冒険に付き合わされる。
原作を読んでいない人には、ちょっとキツイ展開はその後も続く。
“ダスト”、“ボルバンガー”、“マジステリアム(教権)”、“サバールバル”、
“コブラー族”、“ジプシャン族”などのライラ用語が仰山出てくる。
物語の展開も激しく、あまりきちんとした説明がなされないのか、
頭が悪い自分が理解出来ていないだけなのか、それはわかりませんが、
とにかく色んな用語がバンバン出てきて、まず覚えるのが大変。
大人の自分がこんな状態で、子供たちは理解できるのかな?という余計な心配もしてしまう。
そして、一番の問題は、このような用語を理解していなくても、
それなりに楽しめてしまうということ。
これ、どういう意味かわかりますか?
つまりそういったキャラクターや設定が、あまり効果的に生かされていないとい
うことなんですよ。
原作を読んでいない人を無視しているという意味では、
映画『ハリー・ポッター』シリーズも同様なのですが、
『ハリー・ポッター』の場合、ハリポタ用語を押さえておかないと、面白さが半減
してしまう。
これは大きな違いだ。
さて、入り口から蹴躓いた『ライラの冒険』ですが、
細かい突っ込みどころは沢山ある。
有り過ぎるぐらい有る。
それをファンタジーだからと片付けられるか、られないかで、
この作品の評価は大分変ってくるように思う。
ニコール・キッドマン演じるコールター夫人が、少年たちを誘拐して、何かを計画しているらしい。
誘拐された子供たちを助けるために、ライラは黄金の羅針盤を駆使しながら、
多くの仲間たちと共に、子供たちが収容されている建物を目指して旅に出る。
だいたいこんな大筋。
まず、コールター夫人ですが、
ライラが学寮長から貰った羅針盤を奪おうとする。
(なんで学寮長はライラに羅針盤渡したのかな?)
しかし、その方法が温い。
たかだか10歳そこいらの少女相手に、何を梃子摺っておるのだ。
力ずくで奪えば良いではないか。
それだけの権力と財力はある。
でも、コールター夫人は羅針盤を奪って何に使うんだろう?
後に羅針盤を操れるのは、ライラだけという事実が明らかになるけど、
コールター夫人はそのこと知っているのかな?
もしも知っていたのなら、もっとライラに甘い蜜を吸わせて、懐柔すれば良いで
はないか。
コールター夫人は、ライラの友達のロジャーを誘拐する。
それが簡単にバレてライラに不信感を持たれる。
甘すぎる・・・
続いて、タイトルにもなっている羅針盤ですが、
これがちょっと生きていない。
真実を語りかけてくれる羅針盤。
ライラが操れば次から次へと簡単に真実を語ってくれる。
演出的にも、同じ様な表現の繰り返しで単調。
ちょっと芸が無さ過ぎやしませんか?
「ここは注意しなくちゃいけないなぁー」と自己警告するや否や、
発砲され、ジェームズ・ボンドばりのプチ格闘をかました後、
さっさと捉えられるダニエル・クレイグ。
他に危険区域とわかっていながら、そこを夜間に突き進むライラご一行様。
終いには危険区域で暢気にテント貼って、ご宿泊。
案の定、襲撃をくらい、ライラは捉えられる。
見張りはおらんのか?
平地だったよな?
バカばかりだ・・・
そして、捉えれたライラは何故か、鎧熊族の元へ。
そこでライラは鎧熊族の王様を、口八丁でまんまと騙す。
したたかなライラちゃん。
いく末が恐ろしいよ・・・
ライラの口車に乗せられた鎧熊族の王様と、
ライラが飼いならした鎧熊族のかつての王様、現アルコール依存症のイオレク・バー
ニソンが決闘をはじめる。
イオレクが手首を負傷しながらも勝利を収め、王様の座に返り咲く。
しかし、その後、王になったことを全く生かそうとしない。
これからの旅の道中、様々な危険や困難が予測される。
だったら、部下を従えていけばいいのにさ。
なんでイオレク一匹で行くの?
案の定、最後の闘いで苦労しちゃうじゃない。
しかも、手首の負傷した割には、その影響は全くなく、イオレクは走る回る。
鎧熊族の国を後にしたライラとイオレクは、
さっさと2人で敵地へと突き進む。
なぜ、君たちは仲間と一緒にいかんのだ。
襲われた仲間たちが心配じゃないのか?
続いて、目的地直前で、よくある谷間の一本橋サスペンスが始まる。
結局、ライラが渡ると同時に橋は奈落の底へ。
ライラとイオレクは離れ離れになってしまい、ライラだけが目的地へと潜入する。
あっさりと侵入したライラは、誘拐されたロジャーと対面し、
「大丈夫、私には計画があるから!」とのたまう。
計画あったんだ?
さらに建物の奥へと潜入するライラだが、敵がやってきた。
慌てて隠れるライラ。
隠れた場所は会議室だった。
会議室のテーブルの下に隠れて、会話を盗み聞きするライラ。
これがライラの計画ですか!?
ノープランとしか思えないのですが・・・
そして、あっさりとライラは捕まる。
いろいろあって、ライラは生き延び、敵地の目の前の雪原で、
ライラと子供たちは、大勢の敵に立ち向かおうとする。
そこに、グッド・タイミングでイオレクや他の仲間が現れる。
イオレクはどうやって、あの谷間を渡ったのだろうか・・・
というか、だったら最初からみんなで一緒に来ればよかったじゃない・・・
そんな疑問を打破するかの如く、
クライマックスとなる戦いが繰り広げられる。
途中仲間になった気球乗りは上から銃をパーン、パーンと打つ。
効率悪い。
味方となって一緒に戦ってくれる魔女軍団。
見方になってくれた理由は、ライラの仲間に昔の恋人がいるから。
????
どういうことっすか?
大体、伊藤Pがリーダーだったらもっと襲撃体制を整えるね
1.ザコキャラの歩兵軍団を投入してまずは奇襲攻撃
2.銃と狙撃手をもっと調達して、飛行船に乗せておいて、
出てきたところを狙い撃ち。
3.魔女が助けてくれるのなら、魔女もこの時点で戦ってもらう。
4.トドメとして、鎧熊族を大量投入。
この波状攻撃だったら、余裕で勝てると思うぞ。
ついでにいうと、
ニコール・キッドマンの乗っている飛行機を奪うね。
そうしたら戦の後、子供たちも戦士たちも輸送出来るので、
危険区域を歩かせる必要はない。
とまぁ、突っ込みどころは山ほどあるんですよ。
でも、ファンタジーだからさ。
なんだかんだと好き勝手書かせてもらいましたが、
見ている最中は、そんなに気にならない。
それだけスピーディーに物事が展開していく。
そして、作られるのかどうかはわかりませんが、
続きが気になるのも確か。
『ライラの冒険 黄金の羅針盤』は、突っ込みどころ満載だけど、
それなりに楽しめてしまうファンタジー映画でした。
あと、そうですね、宣伝に携わった方々、本当にお疲れ様でした。
テレビCMやイベントに藤崎マーケットを使ったりして、
“正直どうなの?”って思ったりしたんですけど、
先日、バラエティ番組の「くりーむなんとか」を見て、
藤崎マーケットが子供たちから絶大なる支持を得ている知り、
自分の考えが間違っていたと思い直した。
子供たちに『ライラの冒険』をリーチさせる手段としては、
良かったんだろうなーと、今は思っています。
先週の土曜日、電車に乗っていたら小学生ぐらいの男の子が、
「木曜日に『ライラ』見に行くんだー」って言っていたし、
地元の映画館の前を通ったら、幼稚園ぐらいの子が、
『ライラの冒険』の看板を見ながら、「ライラだ!ライラ!」と騒いでいたのを目にし、
確実に浸透しているんだなぁーと思った次第であります。
あと、大人向けの普通のスポット、日本語吹き替え版スポット、
公開後の追いスポットと抜かりない。
どこの映画サイト見ても『ライラ』一色だった。
とにかく凄い物量作戦。
かつての角川映画みたい。
あくまで個人的な意見ですが、
多分、『ライラの冒険』は普通に公開していたら、
普通以下の結果になりうるクオリティーの作品だと思います。
興収40億円が、買付金、宣伝費、人件費、長期宣伝という点から見て、
万々歳の数字なのかは判りませんが、普通で考えたら大ヒットなわけでして、形にはなった。
これはやっぱり宣伝の力が大きかったのではないでしょうか?
まぁ、その分、金かかってるんだろうけどさ。。。
コメント (2)
まったくその通りの「駄作」でした。
こんなの子供が見ても、意味判んないでしょうね。
でも、自分も小学校1年生の時、スターウォーズ見て
「ルーク、理力だ、理力を使うのだ」とか字幕読めなくても
意味わかんなくても、めちゃめちゃ面白かった。
大人になってから「あ、フォースね」って分かったし。
ベイダー卿が帝国軍で一番偉い人じゃなかったのも、大人になってから知った。
なので、子供は、細かいところは抜いてでも楽しい映画なんだろうなとは思う。
でもでも、つっこみどころ満載でしたね。
投稿者: まやかし | 2008年11月27日 16:10
>まやかしさん
コメントありがとうございます。
突っ込みどころ満載でも良いんですよ。面白くて、納得できれば。
突っ込みどころを探すのも映画鑑賞の一つの楽しみだったりしますしね。
しかし、『ライラの冒険』に関しては、内容ウンヌンよりも配給会社GAGAを崩壊させたインパクトの方が、個人的には大分強くてですね・・・
一本の映画が、多くの人の人生にマイナスに作用する。
映画業界って恐ろしいっすよ・・・
投稿者: 匿名 | 2008年11月28日 21:05