タイトル、コスプレチックな衣装を身にまとったキーラ・ナイトレイ。
このメイン・ビジュアルに完全にミスディレクションされた。
『つぐない』 4/12よりテアトルタイムズスクエア、シャンテ・シネほか全国にて順次公開 配給会社:東宝東和 |
てっきり宮廷とか上流階級のお嬢ちゃん、お坊ちゃんの恋愛映画かな?って。
いや、確かに政府官僚の長女の恋愛を描いている。
だけど、スケールがこんなに大きい超大作映画だとは思わなかった。
1930年代、戦火が忍び寄るイギリス。
政府官僚のタリス家の長女セシーリアと使用人の息子ロビーは、
互いに強烈に惹かれ合い愛し合う。
しかし、この二人のやり取りを勘違いして受け取った妹のブライオニーの狂言によって、
セシーリアとロビーの運命は大きく狂いだす。
オスカーに多部門でノミネートされただけあって、見所はたくさんある。
恋愛、悲哀、心理ドラマ、ミステリー、戦争と様々な要素を入れつつ、
上手くブレンドしていて、偏りがない。
おまけにきっちりとオチをつけて終わらせてくれる。
このオチがとても効果的で、引き裂かれたセシーリアとロビーだけでなく、
ブライオニーの長年の苦悩を一瞬にして浮き彫りにさせ、
タイトルの『つぐない(Atonement)」に直結させられる。
役者陣も良い。
セシーリアを演じたキーラ・ナイトレイは、いつも演技に力みがあるように見えるんだけど、
今回は大爆発するシーンもあるけど、比較的抑えた演技で感情を表現している。
ロビー役のジェームズ・マカヴォイは、不可抗力な悲劇に見舞われ苦悩する。
前作『ラストキング・オブ・スコットランド』同様、
マゾな男が良く似合う。
そして、何よりもブライオニーを演じ、
若干13歳でアカデミー助演女優賞にノミネートされたシーアシャ・ローナンと
成長したブライオニー役のロモーラ・ガライが良い。
シーアシャは後先考えずに、無責任な発言をしてしまう子供の残酷性を良く出している。
ロモーナはとにかくキモイ。
何を考えているのかわからないし、そのずんぐりとして容姿から、
『ノーカントリー』の殺し屋シガーを連想してしまった。
“なにしでかんすんだ〜、この女”って。
アカデミー作曲賞を受賞した音楽も使い方が面白いし、効果的。
それと撮影もテクニカルだ。
戦場となったダンケルクの砂浜を、ロビーが徘徊するシーンでは、
『トゥモロー・ワールド』には及ばないまでも、素晴らしい長回しを見せてくれる。
重量感のある美術やセット、一流の役者たち。
一見、こじんまりとした作品に見えるが、
一人の子供によって運命を狂わされ、
さらには戦争によって、より大きな渦へと巻き込まれていく人々を、
巧みな演出で描いた大河メロドラマだ。
最後に:先日亡くなったアンソニー・ミンゲラ監督がちょっとだけ出演している。合掌。