第16作目となる映画「クレヨンしんちゃん」。
監督はなんと、1作目から4作目を手掛け、
原恵一監督と共に「クレしん」ワールドの礎を築いた本郷みつる。
『ヘンダーランドの大冒険』以来、実に12年ぶりの参戦だ!
本郷監督作品は、野原一家をトリップさせ別世界で活躍させる、
いわばファンタジーのテイストが強い。
また、キャラクターや設定に、
白黒、明暗、善悪、男女といった対比の構図を取り入れることが多い。
男女に関してはその中間ネタ(つまりホモとか男装とか)もよく用いる。
『映画クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者』 1/19より日劇2ほか全国にて 配給会社:東宝 |
今回のポスタービジュアルを見ても、本郷テイスト全快。
かなりファンタジー要素が強そうなので、そのつもりで見た。
確かにファンタジーだけど日常生活を巧みにインサートし、
素晴らしいバランスで物語を進行してくれる。
日常とファンタジーを適度な時間と間隔で見せてくれるので、
全く飽きが来ない。
日常シーンでの笑いが、TVの「クレしん」の面白さだと思っているんだけど、
今回はその日常での出来事を、ファンタジーシーンで更なる笑いに昇華させている。
特にひろしの通勤、勤務中のシーンは効果的だ。
そして、ファンタジーの世界観も独創的で面白い。
「ファンタジーはなんでもありだから嫌いなのよ」という、
伊藤Pの思いを代弁してくれるようなセリフをみさえに言わせている。
これは確信犯でしょう。
本作ではきちんとしたルールがあった上で、ファンタジーの世界が展開するので、
“ファンタジーだからなんでもあり”といった予定調和は、それ程感じない。
ファンタジーが苦手な人でも大丈夫でしょう。
また、対比の構図ですが、
地球と地球を侵略しようとする暗黒界の対比という、
本作の核となる設定がまずそれに該当する。
そして、敵のボスキャラが白黒だし、
手下も男女で互いにライバル視している。
野原家の愛犬シロとそっくりだけど、色が黒い犬まで登場する。
野原家の定番ひろしVSみさえも当然ある。
男女の中間ネタは封印?と思わせるが、これもちゃんと出て来る。
あと、今回、“おや?”と思った点が2つある。
まず、しんのすけの“ケツだけ星人ブリブリ”をことごとくスベらせる。
流石にしんのすけも“ウケない”と気が付き、この行為を控える。
チンチンとかも出てくるのですが、下ネタをギャグとして使っていない。
これはひょっとして、「クレしん」は有害だというクソバカ連中(PTAとか)対策か?
更に、これは今までもそうなんだけど、
野原一家は朝食と夕食を必ず一家全員で摂っている。
食事は、家族間のコミュニケーションを取る重要な時間。
みんなで美味しく、楽しく食事を摂るのは最高の食育だ。
最近、バラバラに食事を摂るという家族が増えていると聞く。
それが家族疎遠の要因のひとつとまで言われている。
野原一家はごくごく当たり前なこととして、食育を行っている。
これでもPTAのお母さん方は、「クレしん」を有害だと言いますか?
そういうお宅は、きちんと家族みんなで食卓囲んでいますか?
また、不況、温暖化といった近年の話題の社会問題も、
いやらしくない程度に随所に入れる。
というか、悪いニュースだらけの社会に対して、
「暗いときこそ明るくしようよ!」という投げ掛けを、本郷監督がしているように思う。
作品自体、地球が暗黒界の侵略者に脅かされるわけでして、
この侵略者こそ、今の社会に蔓延する暗い出来事であり、
その対抗として、“明”である野原しんのすけ(野原一家)をぶつける。
アニメ技術の部分も含め、
今だから出来る表現、テーマを本郷ワールドにぶち込んだ。
そんな印象を受けました。
子供には理解できない文面かもしれませんが、
伊藤P的には「クレしん」ワールドに触れていない、
また、その素晴らしさを理解していないという大人の方々に対して、
布教活動をすることが使命だと思っている。
PS:今年も東宝さんにお願いして、一般試写会で鑑賞させて頂いた。
いつもはほとんど親子連ればかりなのに、今回は若いカップルもチラホラ。
どうやら主題歌を歌っているDJ OZMAの舞台挨拶が目当てだったようで。
そんな舞台挨拶の模様はコチラでどうぞ!