いやー、強烈な作品だった。
映像、演技、音楽、スケール、何もかもが圧倒的だった。
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 4/26よりシャンテ・シネほか全国にて順次公開 配給会社:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン |
20世紀初頭、油田掘削で財を成したダニエル・プレインヴュー。
欲にまみれた彼の破滅までの道のりを描いた人間ドラマ。
ファーストショット。
鉱山が映し出され、サイレンようなスコアがかかる。
もうここからガーンって感じ。
何かが起こる。
そんな予感がする警告音。
ここから約数十分間、セリフは一切無い。
黙々と穴を掘るプレインヴュー。
石油掘りがいかに危険な作業であるかを、
淡々と描いているのだが、とてつもない緊張感がある。
凄いよ、このオープニングは。
ここだけでも必見だ。
そして、プレインヴューは石油の掘削中に事故で死んだ仲間の子供、
H.W.を引き取り、とある町で石油を掘り当て莫大な財産を手中に収める。
H.W.への期待と失望と溝。
町の狂信的な牧師イーライ・サンデーとの確執。
石油という名のドス黒い液体に浸かり、
富と権力を欲しいままにするあまり、
次第に疑心暗鬼を募らせ、誰も信じられなくなり、破滅へと突き進むプレインヴュー。
冒頭から終わりまで、抑制の効いた映像の中、時に感情と石油を爆発させつつ、
絶妙な緊迫感を維持しながらプレインヴューの生き様を一気に見せる。
吸えるものは、石油でも金でも人でもミルクシェイクでもなんでも吸い尽くす!!
I dirnk it up!
すべて吸い尽くした時、果たしてプレインヴューは・・・・
本当に滑稽で、可哀相なプレインヴュー。
孤独な男は哀れよのぉ。
彼の姿を見て、人間こうなっちゃいかんと思った。
本作でアカデミー主演男優賞を受賞したダニエル・デイ=ルイス。
こりゃ、誰も勝てないよ、ってぐらい凄まじい。
『ギャング・オブ・ニューヨーク』でもそうだったけど、
何をしでかすかわからない、
狂気じみたオッサンを演じさせたら天下一品だね。
是非、いつかジャック・ニコルソンと気狂い合戦を繰り広げて欲しい。
戦いといえば、
プレインヴューと対立する牧師を演じたボール・ダノも相当キモイ。
なよなよしているくせに、ナルシストで貪欲でしたたか者で負けず嫌い。
ある意味似た者同士の2人の戦いは今年のベストバウトになるかもしれない。
教会での洗礼シーンとか凄すぎて可笑しいもん。
役者たちの演技だけでなく、セット、美術、衣装、撮影、
どれもが素晴らしい。
特にレディオヘッドのジョニー・グリーンウッドが手掛けた音楽。
前もアカデミー賞の予想の時に書いたけど、
なんでノミネートされないの?ってぐらい良かった。
先述のサイレンもそうだし、
なんでこのシーンにこの音楽を!?と思わせておいて、
実はその後を暗示させる劇盤の付け方には唸るばかりだ。
衝撃のラストシーンの後のエンドロールでかかる音楽の使い方なんて、
本当にセンスがあると思う。
グリーンウッドの音楽なくして、本作は絶対に成立しない。
さてさて、『ブギーナイツ』、『マグノリア』で群像劇を撮ってきた
ポール・トーマス・アンダーソン監督が、
『パンチドランク・ラブ』以来、5年ぶりに撮った本作。
得意の群像劇を封印し、クラシック映画的なアプローチをとりながらも、
奇抜なアイディアとユーモアに満ちたPTA色が、色濃く反映されている。
いやー、伊藤Pレベルの文章力では、
とてもこの映画の凄さを伝えることが出来ないっすよ。
“百聞は一見に如かず”
是非、劇場で“体感”して欲しい一本。
で、見たらコレを見て下さい。
(絶対に本作を見てからにしてくださいね!)