ソ連軍をアフガニスタンから撤退させたのは、
ジョン・ランボーではなく、この男だった!!
『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』 5/17より日劇1ほか全国にて 配給会社:東宝東和 |
ソ連がアフガニスタンに侵攻していた時代。
あの手のこの手を駆使して、
アフガンの窮地を救おうとした下院議員チャーリー・ウィルソンを描いた人間ドラマ。
このチャーリー・ウィルソンは実在の人物で、
彼の証言を元に書籍化された本が原作となっている。
つまり実話ベース。
テキサス州のセレブや、はみ出し者のCIAエージェントの協力を得て、
武器をアフガニスタンに供給し、人民を武装させ、
ソ連軍と戦うことが出来るように手助けをするチャーリー。
本作ではその過程が描かれているけど、ポイントはそれだけではない。
観客はソ連軍撤退後、アフガニスタンがアメリカにとってどういう存在となり、
武装勢力たちが2001年に何をしたかを知っている。
9.11テロの原因のひとつと言える中東テロ組織の武装化の根本的な要因が、
アメリカの武器提供であることは、『華氏911』や他の文献で知っていたけど、
その詳細までは知らなかったので、
本作をとても興味深く見ることが出来た。
こうやって字面だけを追うと、多分に社会派だけど、
そこは名匠マイク・ニコルズ。
チャーリーを演じたトム・ハンクスのキャラを活かし、
ユーモア溢れる人間ドラマに仕上げている。
ほら、テレビで見るこの作品のCM(スポット)も、
妙に明るくて、コメディぽくなっているでしょ。
戦争やアフガニスタンが前面に出ちゃうと、社会派映画の印象を与えかねない。
そうなるとお客さんが限られちゃうから、
ライトなイメージを植えつけようってのが配給会社の狙いなんでしょう。
その狙いは正しいと思うし、実際に作品自体、社会派な面もあるけど、
人間ドラマとして面白いし、良い意味で重くない。
物語を楽しみにながらにして、
今の中東情勢がどうしてこうなったかを知ることが出来る。
トム・ハンクスはもちろん、
CIAエージェントを演じたフィリップ・シーモア・ホフマンも良い味を出している。
二人のやりとりは漫才みたい。
大富豪役でジュリア・ロバーツも出演しているから、
オスカー受賞俳優が3人も顔を揃えている。
マイク・ニコルズもオスカー受賞しているな。
ついでにもう一人、オスカー受賞スタッフをご紹介。
SFXスーパーバイザーのリチャード・エドランド。
いやー、久しぶりにクレジットされているのを見たよ。
この方は、『スター・ウォーズ』旧三部作、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』で、
アカデミー視覚効果賞を受賞し、その後も『ゴーストバスターズ』とかを手掛けた人物
80年代のSFXマンといえば、リチャード・エドランドの名前が真っ先に挙がった。
しかし、90年代に入り、次第に名前を見る機会が減っていき、
自身が所属していた会社も倒産の憂き目を見る。
CGが全盛となった2000年以降は、ほとんど名前を見ることがなくなってしまった。
そんなリチャード・エドランドの復活は嬉しい限りだ。
でも、どこがSFXなの?
戦闘シーン?
ジュリア・ロバーツのメイク?
まぁ、いいや。。。復活を喜ぼう。
ひとりの男の善意が、一時の成功を見た後、
その先の世界を揺るがす大惨事の元凶になってしまうとは、なんとも皮肉な話。
あの時、ちゃんと対処していれば良かったのに・・・
まさに後悔先に立たず。
『大いなる陰謀』の際に書いたけど、
『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』は、『大いなる陰謀』につながる。
本作を見てから『大いなる陰謀』を見ると、
作戦に参加する若者たちの姿がより痛々しく感じる。
追記:『再会の街で』で反論させて頂いたことのある映画評論家の本作の批評文に、
「当時の国際情勢をよく知らぬ人には、どこが凄い話なのかさっぱりわからないであろう」
って書いてあったんですけど、
伊藤Pはそんなに当時の国際情勢詳しくないっす。
でも凄い話だと思いました。
そりゃ、知っていた方が良いに決まっているけど、
別に詳しく知らなくても「凄さ」は変らないと思うので、知らないままでも大丈夫でしょう。
知っていることが最低条件っていうのなら、当時の国際情勢の説明をしてくれれば良いのにさぁ。
それが優しさってもんでしょう。