『ザ・マジックアワー』 6/7より日劇3ほか全国東宝系にて 配給会社:東宝 |
三谷幸喜監督の最新作。
ですが、何故か伊藤Pは三谷幸喜関連映画と縁があまりない。
原案・脚本の『12人の優しい日本人』('91)
原作・脚本・監督『ラヂオの時間』('97)
映画の初仕事と映画初監督作品であるこの2本しか見ていない。
両作品ともスリルとユーモアに満ちた巧みな脚本で、
とても面白いと感じたし、すごい才能だと思った。
しかし、その後の『みんなのいえ』('01)、『竜馬の妻とその夫と愛人』('02)、
『笑の大学』('04)、『THE有頂天ホテル』('06)は、見ていない。
なんでだろう・・・
『THE有頂天ホテル』なんて麻生久美子嬢が出ているのに・・・
ということで、『ラヂオの時間』以来、映画では約10年ぶりとなる三谷ワールド。
いやー、やっぱり着眼点・設定・脚本が良いよ。
ちょっと長さを感じるのが難点だけど、
三谷ファンがたくさんいる理由が良くわかる。
舞台の転換とか意外性が強いので、今回、あえてあらすじとか書きません。
ポスターやチラシ、テレビCMから受けるイメージのまま見た方が良いでしょう。
特筆すべき点が多々ある。
役者の使い方が上手い。
まず、佐藤浩市という素晴らしい役者に、コメディをやらせたセンス。
佐藤浩市が笑える。
こんな佐藤浩市、見たことない!って。
続いて、アドリブ大好きな西田敏行に対して、アドリブを封印させた度胸。
ヤクザをやってもどこか愛くるしい西田さん。
でもやっぱりこえぇぇぇぇって。
コメディを得意としている人を、コメディ映画で真逆に配している。
そして、賢明で聡明な女性を演じることの多かった深津絵里に悪女をやらせる意外性。
佐藤浩一同様、こんな深津絵里、見たことないかも!って。
物語をリードしていく妻夫木聡はコメディが得意なので、
コメディ映画への出演という点では新鮮さはなかったけど、
胡散臭い詐欺師の様な役柄自体は新しい。
綾瀬はるかに関しては、伊藤Pが彼女が演技しているのを、
意識してきちんと見たのは初めてだったので、新鮮だった(なんだそれは・・・)。
その他、ゲスト出演で大物俳優がたくさん顔を出しているのも楽しい。
寺脇康文とか、どこに出ているのか最初わからなかったよ。
あと、クラシックな映画の撮影風景が、随所に出てくる。
タイトルである“マジック・アワー”という用語もそうだし、
スタントシーンの撮り方とか、雨降らしとか、現場の上下関係とか、
役者の苦悩、ジレンマとかね。
そして、何よりも三谷幸喜監督の「映画愛」をとてつもなく感じることが出来る。
未見なんで、どうこう言える立場ではないけど、
『THE有頂天ホテル』が『グランドホテル』をモチーフにしている様に、
三谷幸喜監督が愛するクラシック映画への「愛」が満ち溢れている。
パクリじゃない。オマージュだ。
さらに凄いのはオマージュで終わらないで、
三谷幸喜監督というフィルターを通過している点。
まさに三谷ワールドだ。
最後のつもりで撮ったという本作。
やっぱり撮り続けるらしいけど、そうであって欲しいな。
三谷幸喜監督にしか出せない世界観がある。
興行面を見ても、
今の日本映画にとって、メチャクチャ貴重な存在だと思う。
プロデューサーは、いろんな意味で問題作を世に送り出し続けている亀山千広。
亀山さんのプロデュース作品で、面白いって思ったのは、
矢口靖史監督作『スウィングガールズ』と、
周防正行監督作『それでもボクはやってない』ぐらいだ。
共に作家性の強い映画監督が撮っている。
今回も「三谷幸喜>亀山千広」って感じで、作家性が勝った。
良かった、良かった。
■余談
しかし、三谷幸喜監督のプロモーション露出の凄さに驚いた。
『クローズド・ノート』の沢尻エリカの比じゃないでしょう?
フジテレビのバラエティへの出演は良くわかるんだけど、
日本テレビの「おしゃれイズム」、「ガキ使」への出演には驚かされた。
何かと映画製作では対抗心を燃やしまくっている両局。
フジ製作の映画のキャンペーンの片棒を担ぐとは・・・
一体、どうやってブッキングしたの!?
しかも、「ガキ使」で三谷監督は両方の鼻の穴にねりわさびのチューブを突っ込み・・・
自分の映画のためとはいえ、下手な芸人以上に芸人魂(?)を見て、
オイラ、泣けてきたよ・・・
あれ、TBSにも出ている・・・・