助産師のアンナとロシアン・マフィアの運転手。
出会うはずのなかった二人が、
赤ん坊を産み落とした後死んでいった身元不明の少女の日記によって、
引き寄せられていく。
『イースタン・プロミス』 6/14よりシャンテ シネ、シネ・リーブル池袋ほか全国にて 配給会社:日活 |
デヴィッド・クローネンバーグが、
前作『ヒストリー・オブ・バイオレンス』に引き続き、
ヴィゴ・モーテンセンとタッグを組んだ『イースタン・プロミス』。
同じコンビなので、当然『ヒストリー・オブ・バイオレンス』と比較してしまう本作ですが、
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の延長線上にある作品であり
前章譚的な位置付けにも成り得るかなと。
しかしながら、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』ほどたぎるものはなかった。
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』は、
クローネンバーグがかなり作風を変えてきた点、
冒頭の長い回しといったテクニカルな点、
その冒頭の殺人シーンが以降の緊張感を生み出す巧みな構成。
そして、ヴィゴ、マリア・ベロの素晴らしい演技、
エド・ハリスの不気味さ、ウィリアム・ハートのぶっ飛び演技。
そんから、バイオレンス描写、
幸福が崩壊していく悲しみ、恐れ、脅え、
階段での悲しきファックシーンなどなど、
緊迫感、恐怖、悲しみ、怒り、暴力といった要素が上手くブレンドされていた。
『イースタン・プロミス』には、そのどれもがちょっと欠けているように思う。
スリルがないというか、
なんというか、全て予想の範疇に収まっている。
ナオミ・ワッツが、今の生活をもっと脅かされるような脅しを受けるとか、
先の読めない展開が欲しかったな。
切羽詰るほどの危うさがない。
冒頭の床屋のシーンみたいな、何をしでかすかわからない緊迫感が、
もっともっとあればなぁーって。
まぁ、そもそも描かれているテーマが違うので、比較のしても仕方ないか?
まぁ、ドン!と来過ぎた『ヒストリー・オブ・バイオレンス』があるから,
どうしても、そこを期待ちゃうんだよね。
で、ですね。
両作で言えることはヴィゴ・モーテンセンの存在感。
圧倒的だ。
同じ俳優を起用しないクローネンバーグ監督が、
ヴィゴと再び使った理由が良くわかる。
とあるシーンでヴィゴは、クローネンバーグ監督からの要求に、
ものの見事に応えている。
これ程凄まじいシーンをやれる俳優は、あまりいないんじゃないかな?
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のダニエル・デイ=ルイスがいなければ、
オスカーはヴィゴじゃない?
あと、今回同じ俳優を使わないということで、
クローネンバーグの代表的な作品の主演俳優に着目してみた。
・『ヴィデオドローム』('83):ジェームズ・ウッズ
・『デッドゾーン』('83):クリストファー・ウォーケン
・『ザ・フライ』('86):ジェフ・ゴールドブラム
・『戦慄の絆』('88):ジェレミー・アイアンズ
・『裸のランチ』('91):ピーター・ウェラー
・『クラッシュ』('96):ジェームズ・スペイダー
・『イグジステンズ』('99):ジュード・ロウ
かなり目がギョロギョロした爬虫類系だ。
きっと、好きなんだろうね。
こういう顔が。
あれ?『Mバタフライ』('93)は、ジェレミー・アイアンズが主演だな。
同じ俳優、起用してた・・・