ポール・ハギス監督作品、イラク戦争関連の社会派、
トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロン、スーザン・サランドン3大オスカー俳優共演。
これだけで見たいと思っていた。
そして、期待通りのこってり濃厚な秀作だった。
『告発のとき』 6/28より有楽座ほか全国東宝系にて 配給会社:ムービーアイ エンタテインメント |
元軍人警官だったハンクの元に、
イラク戦争から帰還した軍人である息子マイクが失踪したという知らせが入る。
マイクが失踪した場所へ向かったハンクは、地元の女刑事エミリーの助けを借り、
消息を探り始めるが、マイクの焼死体が発見される。
息子の死に疑問を感じたハンクは、自ら調査を進め謎を解明していくが、
ハンクの想像を遥かに上回る事件の真相が待ち受けていた・・・
「初めはごく平凡なミステリーのように見えたが、
映画のテーマは実に巧妙に隠されている。
大きな出来事がごく普通の人々にもたらすインパクトを、
見た者に考えさせるよりはむしろ感じさせる、
悲しく、巧妙なとても素晴らしい映画だ」
このタイム誌の映評が伊藤Pの感想をストレートに言い当てている。
これが本作を見て一番強く感じたことだ。
って、他の人のレビューに頼るな!!って感じですが、
すんません、この作品を見たのは今から半年前の1月末なんす。
細かいこと良く覚えておらんのです・・・
年齢と共に忘却能力は飛躍的にアップしているからね。
と、言い訳にもならん言い訳ですが、下記、覚えている限りの感想。
まず、タイム誌の映評にある“大きな出来事”を“イラク戦争”に置き換えると、
この映画のテーマが見えてくる。
詳細を語るとネタバレになるし、是非、本作を見て“体感”して欲しいので、
割愛するけど、アメリカ人ではない伊藤Pでもかなりビンビンと響くものがある。
こういう社会派映画を、娯楽作品として作れるアメリカの映画産業が羨ましい。
懐が深い。
それに比べて日本は・・・
しかし、911やイラク戦争絡みの作品のアメリカでの興行成績は、
あまり芳しくないので、今後も作り続けてくれるのかちょっと心配。
大統領も変わるしね。
続きまして、オスカー俳優の共演。
やっぱり見ごたえ有り。
喋らなくても表情や習慣的行動から、
どんな人物で、何を感じているのかがわかるトミー・リー・ジョーンズの演技力は、
本当に凄い。
しかも通り一辺倒の感情じゃない。
息子の真実が明らかにされた時の戸惑いとか、
人間が持ちえる様々な感情が伝わってくる。
そんなハンクの人格について、ちょっと注意点がある。
本作の時代設定は2004年。
今でこそ、破壊兵器も発見されず、イラクの再建も滞り、
テロが頻発し、アメリカ兵士も無駄に死に続けて、
イラク戦争の意義に疑問を抱いているけど、
2004年は、今よりもイラク戦争に対する非難の声は少なかった。
今のイラク戦争に対するアメリカ国民の世論と
2004年当時とでは多分、大分、温度差ある。
そんな2004年の国勢の中で生き、ましてや元軍人であったハンクは、
恐らくイラク戦争になんの疑問も抱いていない。
このハンクのスタンスは、本作を見る上で結構重要じゃないかと思う。
日本人にはちょっと判り難いので一応、補足。
さてさて、話を俳優の話に戻すと、
スーザン・サランドンも目だけで、
息子の死を受け止めようとする母親を表現してしまう。
シャーリーズ・セロンは、微妙な立ち位置故、
戸惑い、時に感情を爆発させるエミリーを説得力を持って演じている。
セロンとサランドンが絡まなかったのが残念ですけど・・・
あっ、あと出演シーンは無茶苦茶少ないんだけど、
ジョシュ・ブローリンが出ている。
これがまた、最高に良い。
と、軒並み良好な作品なのですが、
原題の「In The Valley Of Elah』の解釈にちょっと苦しんだ。
旧約聖書に登場する物語がタイトルになっている。
物語の内容は長くなるのでコチラで読んで頂くとして、
登場人物であるゴリアテ(上記サイトではゴリアトと表記)、サウル王、ダビデは、
それぞれ
ゴリアテ=イラク
サウル王子=ブッシュ
ダビデ=アメリカ兵
てな感じに当てはめることが出来る。
なんかドンピシャで当てはまらないんだよねぇ・・・
初めから勝負がはっきりしている戦いの例としてよく用いられる話らしいんだけど、
どう考えても、イラクがアメリカに軍事力で勝てるとは思えない。
イラク戦争は終わっていないし、アメリカある意味負けてるけど・・・
宣伝担当の方の解釈を聞いて、多少納得したんだけど、
やっぱりしっくりこないっす・・・
まぁ、そんなにタイトルに拘る必要はないんだけどね。