11/15より日劇2ほか全国東宝系にて 配給会社:東宝 (c)2008 FUJI TELEVISION, ALTAMIRA PICTURES, TOHO, DENTSU |
パイロット、キャビンアテンダント、チーフ・パーサー、
グランドスタッフ、管制官、オペレーション・ディレクター、整備士など、
羽田発ホノルル行きの旅客機に携わる人々を描いた群像劇。
飛行機好きの矢口靖史監督が、長年温めていた企画らしい。
「今まで誰も描かなかったのが、不思議」と矢口靖史監督は述べているんだけど、
言われて見れば、確かにパニックもの以外で、
旅客機のフライトを題材にした映画はなかったかも。
相変わらず着眼点が面白い
ANAが全面協力しており、本物のジャンボを使っての撮影、
羽田空港、関西空港での大規模なロケ、ミニチュア撮影やCGと、
今までの川越のシンクロ、山形のジャズバンド以上のスケール感。
サイズがでかくなっても、矢口靖史監督の映画は安心して見ていられる。
単純なストーリーの中に、味のある登場人物の細かいエピソードを織り込む。
尚且、なんとなくこんな人なんだろうって、その人柄がわかるうえ、
それが作品の重要なエッセンスになっている。
群像劇は登場人物が多く、いちいち深く掘り下げられないから、
少ないセリフや行動でキャラクターを表現する必要がある。
例えば、岸部一徳演じるオペレーション・ディレクター高橋は、パソコンをみながら、
「ソフトがすぐに新しくなるからついていけない」と漏らして、タバコを吸いに行ってしまう。
そんなデジタル化に対応できないおじさん高橋に対して、
若い女性管制官(いとうあいこ)は、「昔はあんなんじゃなかったのに」と嘆く。
ところが、パソコンシステムがダウンした途端、高橋は本領を発揮する。
ジオラマを見ながら過去の経験を活かして、テキパキと指示を出す。
上記二つのセリフを入れておいたからこそ、アナログおやじの輝きが増すのだ。
あと、航空業界の舞台裏を知ることが出来るのも嬉しい。
しかもその演出が上手い。
機長と副操縦士は2人同時の食中毒を避けるため、
同じ機内食を食べないとか、ヘッーって感じ。
それも説明的なセリフじゃなくて、ちゃんと会話で表現している。
キャビンアテンダントとグランドスタッフの確執も、
たったの数秒で描写してしまう。
反面、怖いなと思うことも多々あった。
空港の慢性的な混雑のため、旅客機の定時離陸が優先され、
4つあるシステムのうち、1つが壊れていても修理しない。
エンジンの整備も短時間で済まさなくてはならない。
この辺の過密スケジュールに対する危険性は、
何度も本ブログに登場して申し訳ないんだけど(それだけインパクトが絶大だったってこと)、
山崎豊子先生の「沈まぬ太陽」で指摘されていたので、
「あぁ〜、今も改善されてないんだぁ」って。
それから田辺誠一演じる機長昇格を狙う副操縦士も頼りない。
こんな人に自分の命を預けるのかと思うと、ちょっと恐ろしい。
矢口靖史監督が意図したかどうかわからないけど、ちょっとした飛行機業界の風刺を感じた。
よくANAや羽田空港、関西空港が協力したな〜って。
いくら安全性の高い乗り物とはいえ、事故があった場合の被害は甚大。
いろんな事情があるとは思うけど、利用者の立場からすれば、、
関係者の方々には、常にハッピーフライトを心がけて欲しいですね。
ミッドタウンのオフィスから、羽田空港を往来する飛行機が良く見えます。
(たまに911.を思い出すんだけどさ)
今までは、ただ眺めているだけだったけど、『ハッピーフライト』を見てからは、
その一機、一機に対してさえ、今までにない思いを抱くようになりましたね。
飛行機の見方、乗り方が変わる。
そんな映画です。
『ウォーターボーイズ』や『スイングガールズ』ほどの高揚感は得られなかったけど、
様々な知識を得られ、考えさせられ、更に余韻も得られる。
間違いなく良質なエンターテイメント作品だと思う。
矢口ブランドは健在ですな。
コメント (2)
み、み、み、観たい。
紹介サンキューです。
投稿者: ぶちょ。 | 2008年11月12日 21:25
>ぶちょ。さん
コメントありがとうございます。
初登場第2位で、20億を狙える出足だそうです。
もうご覧になりましたか?
オススメの作品ですが、あまり期待し過ぎないで下さいね。
矢口監督らしいライトなノリであることには変わりないですし、
どの映画でもそうなのですが、あまり期待値上げちゃうと、
そのハードルを越えるのは中々難しいですからね。
構えず、気楽に見る映画だと思います。
投稿者: 伊藤P | 2008年11月18日 11:28