2008年11月04日更新

『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』ギレルモ・デル・トロ監督 取材記

久しぶりに取材記。
この間、取材の仕事をしていなかった訳ではないのだが、
合同取材ばかりで、イマイチ達成感がなくて・・・


“合同だろうと取材出来るだけマシじゃないか!贅沢言うな!”と、
一部の方々からお叱りを受けるかもしれないし、
『コドモのコドモ』の麻生久美子さんの取材記で、
合同取材のメリットを挙げてはみたけど、
やっぱり合同取材はやり難くて仕方がない。


みんなが多く質問できるよう、気を遣って短めに質問したりしているのに、
自分の感想をチンタラ話して、なかなか質問に到らない奴がいたりする。


そして、大概、その感想と質問は微妙にリンクしていないのだよ。
意味がない。時間の無駄。


更に、1人1問というルールを守らず、2問以上質問したりする奴がいる。


“やったもん勝ち”的な発想なんだよね。


1回しか質問タイムが回ってこなかったこともある。


あと対象者が喋ってくれるのなら良いんだけど、
多くを語らない人とかの場合、質問回数に制限があるから踏み込んで聞き出せない。
これが一番ネックだ。


とまぁ、デメリットだらけだったりするんで、
『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』のギレルモ・デル・トロ監督の取材も、
合同と聞きガックし・・・


まぁ、仕方ない。媒体力の問題さ・・・


と、愚痴はこの辺にして本題です。


ヘルボーイ
『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』
配給:東宝東和
1/9よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国にて
(C)2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.


デル・トロ監督は『ブレイド2』の時にも取材させてもらっているので、
大体の雰囲気は掴んでいる。
良く喋るデブで陽気なオタクの髭モジャオヤジだ。


今回も巨体を揺らしながらノソノソの取材部屋に入ってきた。
デル・トロ監督が座るソファへの導線が狭く、
足元に注意しながらちょっとずつ歩む姿が可愛らしい。


ドカリとソファに腰掛、いよいよ質問タイム。
伊藤Pは2番目だ。


以前、記事で書いたように、
アメリカン・ヒーローはアメリカの象徴として描かれることが多く(#275参照)、
メキシコ人であるデル・トロ監督が描く『ヘルボーイ』は、どうなのか聞いてみたら、


「I'm fat Maxican.(僕は太ったメキシコ人だよ)」
と即答された。


いや、そういう答が返ってくるのは予測していた。
でも自らデブという形容詞を付けるとは思わんかった・・・


デル・トロ監督曰く、


「ヘルボーイは何かを象徴しているのではなく、
男の駄目なところを謳っている。ヘルボーイは欠陥だらけの男で、そこが魅力的」


なんだそーな。


予想外にサクと簡潔に答えるデル・トロ監督。
取材は、テンポ良く進む。


そして、今回の合同取材はインタビュー中も撮影OKだったので、
伊藤Pも他の媒体の質問タイムを利用して、
喋っているデル・トロ監督を撮るため、カメラを向けた。


しかし、レンズがどうしてもある一定の場所に吸い寄せられる。


デル・トロのメタボ腹


やばいね。この腹。


少年期にトビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』を見て、
肉が食えなくなり、ベジタリアンになったことがあるのが嘘のよう。
(といっても、4年で肉食に戻ったようだが・・・)


何にしても、デル・トロ監督、売れっ子だからかなり忙しいはずなんだけど、
痩せないねぇ・・・


同じくデブ線だったピーター・ジャクソン監督は、
『キングコング』での激務で痩せたけど、疲れた感じで痛々しかった。


そう考えると、
デル・トロ監督はトトロみたいで愛嬌あるし、デブのままが良いかもね。


デル・トロ監督はデブな上にオタクでもある。
自身もオタクという言葉を頻繁に使っている。


で、オタク監督の下には、オタク記者が集うのか、
今回の合同取材のインタビュアーが結構、マニアックな質問をしていた。


「デル・トロ監督作品には歯車やぜんまい仕掛けの機械が登場しますが、その理由は?」


「ラヴクラフト(「クトゥルフ神話」の著者)の影響が見受けられたのですが?」


歯車とかは「あぁ〜、そういえばそうだなぁ〜」って、思ったんだけど、
ラヴクラフトとかは全く判らなくて・・・・


しかし、そんなツボを得た質問にデル・トロ監督はご満悦。


デル・トロ監督で映画化が発表されているラヴクラフトの
「マウンテン・オブ・マッドネス」(「狂気の山脈にて」)に登場するモンスターが、
“トロール市場”に出て来るそうな。


「こんな感じだよ」って、手帳を破いて絵を書き出すデル・トロ監督。


デル・トロのスケッチ


逆さまなんで、よくわからんから手に持ってかざして欲しいってオーダーしたら、
笑いながら「ダメだよ」といって仕舞われてしまった・・・


そんなデル・トロ監督がまたお茶目はお茶目なんだが、
取材があんまりマニアックに成り過ぎると、一般のお客さんがついて来れないでしょ。


だから、想定していなかったんだけど、
2つ目の質問として「女性のお客さんへの訴求ポイント」を聞いてみた。


本当は「色に物語のコードを隠すそうですが、今回は?」という質問をしたかったんだけどね・・・


これもかなりオタッキーな質問なんで、自制したよ。


30分で5媒体なので、2問の質問で終了。
次いで写真撮影。


ヘルボーイの腕を付けて下さいとか、座って下さいとか、
笑ってくださいとか、モンスター顔して下さいとか、
カメラマンからのオーダーにも笑顔で対応。


デル・トロ


カメラマンの1人が、
「監督の大ファンなんです。一番好きなのは『ブレイド2』です」と言えば、
これまた笑顔で「Oh!I like it!」と切り返す。


「あれはねぇ、ウェズリーに撮る前に言ったんだよ。
 僕は、スーパーヒーローの気持ち、つまりブレイドのことは全く判らないってね。
 敵側のモンスターの気持ちしか判らないから、ブレイドのことはウェズリーに任せたんだ」


と、聞いていないことまでお喋りしてくれた。


しかし、なんですな、
本当にモンスターの心情を描くのが好きなんだね。


『ミミック』の時に主演のミラ・ソルヴィーノから、
「ひょっとしてこの映画、虫側の視点で描いてませんか?」という質問を受け、
「うん、そうだよ」と答えたデル・トロ監督。


また、「モンスターが出ない映画は作らない」と公言しており、その理由として、
「モンスターは人間の精神を象徴するものを持っていて、人間より純粋だと思うから」
と答えている。


多分、デル・トロ監督は、自分の容姿が原因で、相当嫌な目に遭っていて、
コンプレックスを抱いているように思う。


その思いとモンスターを重ね合わせている節が多分に見受けられる。


容姿じゃない、中身なんだという思いは、
一番好きなモンスターとしてフランケンシュタインを挙げている点からも伺える。


デブであること、オタクであることを笑いのネタにしている点も、
コンプレックスの裏返しの様な気がしてならない。


また、デル・トロ監督は、
「こんなデブオタを愛してくれる人がいるなんて!」ということで、
奥さんのことを溺愛しているらしい。


これは『ヘルボーイ』におけるヘルボーイとリズの関係性に酷似している。


ちゅうことで、『ヘルボーイ』はまさにデル・トロ監督の分身だ。


なんかねぇ。
たまんないよねぇ。


デル・トロ監督は愛嬌があるから、
余計にいじらしく感じちゃうよ。


益々『ヘルボーイ』が好きになったよ。


そんなデル・トロ監督は最後にインタビュアー全員と握手をして、
笑顔でノシノシと去っていきました。


その笑顔はちょっとハリセンボンの近藤春菜に似ているのであります・・・


はるなじぇーよぉ
はるなじゃねぇーよ

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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