2008年11月13日更新

若者の洋画離れの要因は?

今年の9月、映画雑誌「ロードショー」が、
11月21日発売の2009年1月号を最後に休刊すると報道された。


洋画中心に構成していたが、外国人スターの不在、若者の洋画離れ、
映画情報収集がサイトに移ったことなどが原因となり、発行部数が激減していたそうな。


まぁ、自分も映画情報をネットでやっているので、
休刊に追い込んだうちの一人になっちゃうのかもしれないけど、
小学校から高校生ぐらいまで毎月買って、
隅から隅まで読んでいたんで、やはり休刊は残念だ。


なんにしもて、洋画が低迷する日本映画界を象徴する出来事の一つなんだけど、
なんで外国人スターがいなくなり、洋画が見られなくなってしまったんだろう、
ってことを考えてみた。


要因は色々ある。


・世の中のグローバル化。
・アメリカがブッシュのせいで、憧れの国とは思えなくなってしまった。
・日本人が西洋人級のスタイルと美しい・カッコイイ顔を手に入れた。
トム・クルーズがカウチソファの上で飛び跳ねたうえ、宗教色が強くなった。
・シュワちゃんが政治家になってしまった。
・韓流スターがやって来た。
・シリーズもの、リメイクものばかりで飽きられた。


他にもたくさんあるだろうけど、
伊藤Pは映倫が定めているレイティングも要因の一つだと思っている。


レイティングは4つに区分される。


一般(あらゆる年齢層が鑑賞可能)
PG-12(12歳未満鑑賞制限 鑑賞には成人保護者の同伴が適当)
R-15(15歳未満鑑賞禁止)
R-18(18歳未満鑑賞禁止)


審査基準が曖昧であると頻繁に指摘されているんだけど、
性描写、暴力描写が過激だったりすると引っかかる。
ドラッグ描写に到っては一発アウトらしい。


以前は、性的シーンが審査の対象になることが多かったんだけど、
酒鬼薔薇聖斗といった少年犯罪の増加に伴い、
バイオレンスシーンも厳しく審査されるようになった。


これがねぇ、伊藤P的には問題なのよ。


今年見た洋画のアクション、ホラーのほとんどが、何かしら指定を喰らっている。


<PG-12>
『クローバーフィールド/HAKAISHA』
『ヒットマン』
『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』
『デス・レース』


<R-15>
『ランボー 最後の戦場』
『ザ・フィースト』
『シューテム・アップ』
『ミスト』
『スタースップ・トゥルーパーズ3』
『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』
『ハプニング』
『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』
『ハロウィン』
『ウォンテッド』
『ソウ5』


高学年の小学生や中学生の男子だったら、
『ランボー 最後の戦場』とか『デス・レース』とか『ウォンテッド』とか、
普通に見たがると思うのよ。


でも「見ちゃダメ!」って、映画業界自らが入り口を塞いじゃう。


PG-12の作品は保護者同伴だったら見ることが出来るって言ったってさ、
小学5、6年生にもなったら親となんか映画見に行かないよ。


友達と行くよ。


もしも『ウォンテッド』が、一般映画として公開されていたら、
もっと興行収入も増えたと思う。


友達と学校帰りに見に行って、
鑑賞後、「アンジーが美しかった」、「マカヴォイがかっこよかった」って、
あーだこーだ感想を語り合ってるよ。


伊藤Pが映画小僧だった1980年代は、バイオレンス描写に対する規制が緩かったから、
『ロボコップ』、『リーサル・ウェポン』、スプラッター映画とか、
今だったら間違いなくレイティングに引っかかるであろう作品を、
普通に見ることが出来る時代だった。


『リーサル・ウェポン』を見て、メル・ギブソンがカッコイイと思ったし、
『ロボコップ』を見て、ピーター・ウェラーという俳優を知った。


『男たちの晩歌』とか見てシビレタわけだ。
「二丁拳銃カッコイイ!!」ってね。


『アンタッチャブル』だって、
冒頭にロバート・デ・ニーロがバットで頭かち割るシーンがあるから、
今だったらPG-12かR-15でしょう。


『アンタッチャブル』によって、
ケビン・コスナー、アンディ・ガルシアが日本でも認知され、人気俳優になったんだよ


80年代に日本の多くの女性を虜にしたミッキー・ローク。
彼の出演作なんてことごとくダメでしょう。
『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』、『エンゼル・ハート』、『ナインハーフ』(これは性描写だけど)。


こういった映画をガンガン見まくって、
「ロードショー」買って情報収集していたわけさ。


そうして、こういう34歳が出来上がったわけだ。


いや、ダメだろう。
こんな34歳・・・


話がそれましたが、要するに今の子供たちは洋画を見たくても、
映画館で見られない環境に置かれているってことだ。


これじゃ、洋画文化が根付くわけがないし、
スターだって不在になるでしょう。
字幕も読めなくなるわさ。


現在、唯一客が呼べるスターであろうジョニー・デップだって、
『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』がR-15だよ。


あとアカデミー作品賞を受賞した『ノーカントリー』がR-15。
確か『クラッシュ』もPG-12だったな。
オスカー受賞作を見ることが出来ないなんて・・・


確かに映画の暴力シーンが、子供たちに影響を与えないとは思わない。


でも映画のシーンを真似る行為は、伊藤Pたちの世代だってやっている。


伊藤Pは『ロボコップ』に出てくる銃のモデルガンを持っていた。
今じゃ有り得ないフロンガス使用の連射式で、
トリガーを引けばBB弾がバンバン発射された。


『ゲッタウェイ』を見て、
ショットガンをぶっ放すスティーブ・マックィーンにノックアウトされ、
ショットガンのモデルガンも購入した。


よく映画を一緒に見に行っていた小林君は、
小学生の時に『ランボー 怒りの脱出』を見て感動し、
これまた今じゃ有り得ないんだけど、サバイバルナイフを所持していた。


流石にこれは小林君のお母さんに咎められていたけど、
伊藤Pはモデルガンを人に向けたことはなかったし、
小林君も人や動物に危害を加えるようなことは一切しなかった。


80年代の映画よりも、今の映画の方が描写がリアルになっているけど、
やっている行為自体は変わらないわけでしてね。
ちゅうか、ホラー映画なんかは今よりもエグいシーンいっぱいあったもん。


もっと遡ってみると、
ヒッチコックの『フレンジー』なんて絞殺シーンがバッチリあったし、
サム・ペキンパーの『ガルシアの首』なんて生首を運ぶ話っすよ。


大体さ、小学5年生や6年生で、命の重みが理解できないってのは、
映画だけのせいじゃないでしょう。


麻薬の描写もダメなわけなんだけど、
子供以前に、加勢大周、赤坂晃、若ノ鵬、
プロテニスプレイヤーの宮尾祥慈&元AV女優の倖田梨紗、
同志社大の女子大生、慶應ボーイといった、
大の大人たちが麻薬やってんだもん。
話にならん。


数名のバカどものせいで、アクション映画やホラー映画が規制されちまう。


困った世の中だ。


もちろん、全ての映画のレイティングを外す必要はないと思うけど、
もうちっとどうにかならんかね。


洋画に限らずだけど、若者の映画離れを阻止する策として、
映倫が定めるレイティングの見直しってのは、有り得ない話なのかなぁ・・・


『ランボー 最後の戦場』や『ホット・ファズ』を見て、
「人に危害を加えよう!」って思う中学生がいるかね?


なーんて自論をとある劇場の方の前で展開したら、
「なんでこんな映画を上映するんだ!という苦情は全部映画館に来るんです」
ピシャリと言われた。


すんません。
浅はかでした・・・

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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