お正月興行だというのに12月13日公開作品を一本も見ていない。
しかしながら、12月20日公開作品が大量にあるため、
1週前倒しで紹介します。
先陣を切るのは『ワールド・オブ・ライズ』
『ワールド・オブ・ライズ』 12/20より丸の内ピカデリー1ほか全国にて 配給会社:ワーナー・ブラザース映画 (c)2008 Warner Bros. Entertainment Inc. |
テロを阻止するために、アメリカから遠く離れた中東の国々で、
死と隣りあわせの危険な任務を遂行するCIAエージェント・フェリス。
アメリカ本土の安全な場所から指示を出すCIA局員ホフマン。
対照的な二人が、嘘を武器にして、大物テロリストを誘き出し、
テロを撲滅しようとする娯楽大作。
監督はリドリー・スコット。
流石に構成が上手くて、なんの混乱もなくストーリーが追える。
アクション・シーンも冴えている。
ただ、レオナルド・ディカプリオ、ラッセル・クロウという二大スターが共演している割には、
わくわくしなかった。
人情を大切にするフェリスと、感情を捨て去ったホフマン。
2人はやり方の違いから頻繁に対立するけど、どこか信頼しあっている。
でもそこにあまり友情は感じられない。
とてもドライだ。
反発、信頼、ライバル・・・2人の微妙な関係性の描写は上手いんだけど、
魂を揺さぶるような男の絆的な部分がないんで、鑑賞後に余韻があまり残らない。
でも製作側はもっと他のところに重きを置いているんだと思う。
CIAのエージェントたちは、世界を守るためにテロリストと戦っているが、
例え大物テロリストを捕えたとしても、また雨後のたけのこの様に、
同じようなテロリストが現れてしまう。
劇中、フェリスとホフマンは、それを作戦に取り入れ利用しようとさえする。
結局、いまの緊張関係のままだったらテロリストを殲滅することは出来ない。
虚しい戦いが続くだけだ。
ではどうするのか?
駆逐するのではなく、国家間で友好関係を結ぶのはどうだろうか?
現場で適地に潜入するフェリスは、
イスラム文化に触れ、理解し、溶け込み、現地の人たちにも敬意を表して接している。
一方のホフマンは、常に誰に対しても上から目線。
文明を守っているのは自分だと自負している。
これは、またアメリカ映画がお得意の比喩じゃないかな?
ホフマンは、世界を守るために戦っていて、
それが正義であると信じて疑わない。
でも結局、テロはなくならない。
それっていまや裸の王様と化したアメリカのことじゃない?って。
一方、フェリスは、もういい加減うんざりしていて、
別の道を求めているアメリカ国民や、他国の人々と重なる。
ネタバレになるからあまり書けないんだけど、
フェリス、ホフマン、そしてもう一人の重要人物ハニ・サラーム、
この3人の考え方、言動を紐解けばこの作品のテーマが見えてくる。
実際に、CIAのエージェントたちがどれだけテロを防止しているのかわからないけど、
彼らの活躍がなければ、もっと多くのテロが起こっていたと言われている。
そう考えると命がけでテロリストと戦っているCIAの人たちに感謝しなくちゃいけない。
でも、そのテロリストたちが生み出された原因はどこにあるのか?ってことを問うと、
なんともシニカルだ。
そんな世界の現実が、この作品には投影されているように思う。
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