他人の夢の中に入れる特殊な能力を持った<悪夢探偵>こと影沼京一。
松田龍平演じるやる気のないダークヒーローの活躍を描いた『悪夢探偵』の続編。
『悪夢探偵2』 12/20よりシネセゾン渋谷ほか全国にて順次公開 配給会社:ムービーアイ エンタテインメント |
『悪夢探偵』が、塚本晋也監督らしいパンキッシュなスリラーだったのには対して、
『悪夢探偵2』は、京一の過去に踏み込み、より人間ドラマ色を濃厚にしている。
どんな映画でも理論的に見ちゃう節があるので(だからファンタジーが苦手)、
いちいちシーンごとに理由や説明を求めてしまう。
前作もそうだったんだけど、難解な部分が多々あって、
全てを理解したかと言われれば、理解出来ませんでした。
でも、『悪夢探偵2』には言葉では上手く説明できない、
心で感じる何かが存在する作品だった。
今回、京一と亡き母の関係性が描かれている。
京一の母親はあらゆるものを怖がり、遂には生きることの恐怖に耐え切れず自殺してしまう。
その母親の思いを知るために、
母とよく似たクラスメイトの悪夢を見る女子学生の夢の中に入っていく。
塚本晋也監督は、自分の母親と子供を育てる奥さんの姿を本作に投影しているという。
母に対する畏敬だ。
ノスタルジックで、優しくて、暖かい。
悪夢探偵は自分探しのために夢に入る。
だから京一の体験に共感できるか否かが本作の肝になる。
一方、ホラー的な要素も多分にある。
ホラー映画が好きで結構見ているけど、
久しぶりに映画を見て「こえぇぇぇぇぇぇ!」って思った。
シャーペンをカチカチとノックしながら、やってくるクラスメイト。
エレベーターに乗って逃げる女子学生。
階段を上ってくる女子学生。
自宅マンションのドアまであと少し・・・
このシーンは相当怖い。
よくホラー映画ではドーン!とかバァーン!とか、
効果音を使ってビックリさせるけど、これは本当の恐怖じゃない。
「驚き」だ。
いきなり音出されたら誰だって驚くよ。
しかも、今の劇場やDVDの音はメチャクチャ良いわけだからさ。
驚いて当たり前。
では本当に怖い演出って何かといえば、
ジリジリと得体の知れないモノが迫ってくる感覚だと思う。
『悪夢探偵2』のジリジリ感は、久しぶりに戦慄だったなぁ。
カチカチカチ・・・
あぁ〜、怖ぇって。
他にも真っ白に画面をぶっ飛ばしたトイレと体育館のシーンとか、
スタスタスタスタ・・・って迫ってくる。
それも何度も何度も・・・
もうやめてくれぇぇぇぇぇ!!
って、叫んじゃう人もいるんじゃないかな?
と、あまりホラー色を強調すると、ホラーが苦手な人が見てくれなくなるので、
この辺にしておきます。
あと、役者も良い。
松田龍平は前作以上の存在感で、主人公影沼京一を演じているし、
ラスト近くで見せる感情の露呈は名演だと思う。
京一の母親を演じた市川実和子も元々、少々おっかない顔なんだけど、
恐怖に怯える顔はより強烈なインパクトを残す。
しかも怖いだけじゃなくて、悲しみや優しさまでも表現しているのが凄いね。
京一に助けを求める女子学生を演じた新人・三浦由衣、
伊藤Pを恐怖のどん底に陥れたカチカチ・シャーペン女役の韓英恵(カンハナエ)も
ドンピシャにはまっていたし、若いのに良くやるなぁーって。
素晴らしいキャスティングと役者の演技に支えられ、
塚本晋也監督は自らの作家性を最大限に発揮。
恐怖、優しさ、悲しみ、懐かしさといったいろんな感情が喚起させられる作品。
人によっては号泣必至。
「どんと・ちんく!ふぃ〜る」
考えるよりも感じることが大切だということを改めて教えてくれた作品でもある。
■『悪夢探偵2』
※松田龍平&塚本晋也 インタビュー テキスト