12/20よりシネマート新宿、シネマート六本木ほかにて 配給会社:日活 (C)2008 山田典枝 /「魔法遣いに大切なこと」製作委員会 |
『ハルフウェイ』で岡田将生の取材があり、
彼の出演作ってことで見たんだけども、
笑撃的な映像と無理矢理な展開は、『赤い糸』以上かもしれない。
“魔法士”という魔法遣いが普通に存在する世界。
手続きさえ取れば、誰でも魔法を依頼することができ、
魔法士が魔法を悪用しないように、“魔法局”なる国家機関まである。
そんな世界観にまずズッコケた。
魔法遣いの血筋を受け継ぐ16歳の少女ソラは、魔法士になるための研修を受けに上京。
同じく研修のためにやって来た落ちこぼれ緑川豪太と共に、
先輩魔法士の家にホームステイしながら実技指導を受ける。
様々な魔法の現場を目撃し、ソラは魔法が及ぼす影響力と矛盾に戸惑いながらも、
ある目的のために一人前の魔法士になることを目指す。
そんな物語。
まず、強烈なのが「イルカ救出作戦」。
東京湾(お台場)に打ち上げられたイルカの群れを、
魔法士たちが魔法を使って助けるエピソードなんだけど、
ビジュアルが面白すぎる。
砂浜に打ち上げられたイルカが、オタオタ体を動かす。
このショットだけでもかなり爆笑。
ソラや豪太に救出方法を先輩魔法士が教えてくれる。
先輩魔法士「イルカは今、パニック状態」
あのオタオタはイルカのパニック状態を表していたのか!
先輩魔法士「だから水のまくに包んで一旦空中に持ち上げて、
落ち着いたところを見計らって海に出す」
ソラたちがイルカに向かって手をかざしうねうねと腕を動かすと、
イルカの周りに水のまくができて、浮き上がる。
そんな魔法です。
せめて「チンカラホイ」ぐらい言って欲しい。
みんなが要領よくやっている中、
豪太だけが上手くできない。
見かねたソラが豪太に助け舟を出す。
「落ち着いて。あなたは出来る。私がきっかけになる。
赤ちゃんは大人が歩くのを見て歩く。
喋るのを真似て喋る。
豪太くんはまだ赤ちゃんなの。
今は集中して!私が力を貸すから。さぁ!」
そっと背中に手を添える。
なんだその説得は・・・
それにそんな力添えはダメだろう。
真の魔法士になるのなら、自分の力で解決せにゃいかんと思うのだが、
再度イルカ救出作戦にトライした豪太は、
難なくイルカを水の幕に包み浮かび上がらせることに成功する。
先ほどの先輩魔法士が、
「海ほたるの先まで飛ばしますよ。せーの!」
水の球に包まれたイルカたちが、お台場の空を飛ぶ!!
恐らく本作最大の見せ場なんだろうけど、大爆笑だよ。
真面目に演出している分、余計に痛いシーンになっている。
続いて、デートに出掛けたソラと豪太は、
知り合いに誘われてとあるところに赴く。
“よさこいソーラン”の練習。
いきなりソーラン節で踊る人々。
一緒になって踊りだすソラと豪太。
ブルブル震えそうになるぐらい寒いぞ、この演出・・・
そして、次のシーンではあっさり手を握るソラと豪太。
「イルカ救出作戦」と「よさこいソーラン」のエピソードで、
ソラと豪太が恋に落ちる過程を描いているんだけど、
まるで納得出来ないっすね。
魔法が上手く使いこなせなくて、叱咤激励される。
先輩とかだったら良いけど、同じ研修生、しかも女性から言われたら・・・
しかもちょっと手助けされたみたいだし。
凹むし、悔しいって思う。
暢気にデートなんてしている場合ではない。
まぁ、次のシーンでフォローのセリフがあるんで、
「イルカ救出作戦」は良いとしても、
“よさこいソーラン”を一緒に踊って、なぜ恋に落ちるのだ・・・
鑑賞後、資料を読んだら中原俊監督のインタビューが載っていて、
このシーンの解説をしていた。
「映画の流れを切る危険を承知で“よさこいソーラン”のシーンを入れた。
理由は、ソラが一度でいいから素の笑顔を見せる瞬間を撮りたかったから。
そして、ソラを演じた映画初出演の山下リオに演技の不安を吹っ飛ばして、
映画の達成感を感じて欲しかったから」
気持ちはワカランでもないが、
危険を冒してまでして、入れる必要があったのだろうか・・・
むしろ危惧したとおりの結果になっているように思う。
いくらでも“素の笑顔”を引き出す話は作れるでしょう。
<以下、ネタバレになるので、読まれる際はご注意ください>
そして、倒れるソラ。
ソラは不治の病に侵されていたのだ。
以前に一回意識を失うシーンがあったが、まさか余命いくばくも無いとは・・・
韓国映画級の強引な展開に唖然というか、
「また難病ものっすかぁ・・・」って、ゲンナリ。
でさぁ、死ぬって判っていながら、豪太と恋愛するのはいかがなものかと。
どう考えたって残される豪太を苦しめるだけでしょう。
そういった意味では、『恋空』のヒロよりもタチが悪い。
そして、死を覚悟して使った魔法ってのが、
“お母さんに自分の花嫁姿を見せたい!”という違反魔法。
そ、そうなんかい!?
今までは、意識不明の人の意識を呼び覚ます、
灰になった形見を再現させる、先の「イルカ救出作戦」と、
有形的な魔法が多かったのに、
突然、人にイメージを見せる魔法とは・・・
うーん・・・
ソラと豪太の恋愛関係、ソラと仲間の支え合い、
先輩魔法士たちとの交流、数々の魔法、
そのどれもが噛み合っていないんだよね。
だからクライマックスに向けて、ガァーって盛り上がらない。
周囲の評判はあまり悪くないし、害のある作品でもない。
でもオイラ、ピュアな心なんてもんは遥か昔に置いてきちゃったんでね、
個人的には共感出来る部分の無いまま映画が終わってしまったよ。
コメント (2)
そんなに爆笑できる作品とは…!!
決してキライな設定ではなかったので、少し気にはなっていたのですよ。
でも、にっくき難病展開なので、見たら発狂しそうです。
私なんぞは、ピュアな心なんて、あったかどうかも覚えてない程ですし…
イルカが飛んでいるシーンと聞いて
「銀河ヒッチハイクガイド」のOPが見たくなってしまいました。
(あ、アレは地球から退避するのか…)
投稿者: Qm | 2008年12月19日 07:11
>Qmさん
コメントありがとうございます。
人によっては“爆笑”出来ると思いますが、悪意のある映画では決してありません。
ファンタジー映画が好きな人とか、普通に楽しめると思いますよ。
あと、難病モノは難病モノなんですけど、そこで泣かそうとかそういうのは無かったです。
個人的にツボに入ってしまった作品でございます。
投稿者: 伊藤P | 2008年12月24日 15:17