1/24より全国にて 配給会社:東宝 (c)2009 フジテレビジョン 日本映画衛星放送 |
兄が逮捕され、ある日突然、殺人犯の妹になってしまった女子高生の沙織。
マスコミやネット社会から執拗に追われることとなった沙織と彼女の保護をする刑事。
二人の交流を軸に、今、日本が抱える様々な問題を浮き彫りにする社会派人間ドラマ。
『踊る大捜査線』シリーズの脚本家であり、『MAKOTO』、『容疑者 室井慎次』など、
映画監督としても活躍している君塚良一が手掛けた完全オリジナル作品。
『踊る大捜査線』のリサーチのため警察に取材した際、
容疑者家族を警察が秘密裏に保護していることを知り、以来10年間構想を温めてきた企画。
君塚良一脚本作品はオマージュ(あるいはパクリ)が多く見受けられるけど、
本作は着眼点が面白く、オリジナリティ溢れる作品となっている。
モントリオール世界映画祭で最優秀脚本賞を受賞したのも頷ける。
ちょっとネットの暴走の描写はやり過ぎな気がしたけど、
マスコミの在り方や匿名性の強いネットの暴力、
そして、殺人事件が及ぼす影響など様々なことを考えさせられた。
特に、容疑者家族に降りかかる難事は深刻だ。
人を殺めると身内にどういうことが起こるのか良く分かる。
『手紙』でも兄が殺人犯となったために、世間から白い目で見られてしまう弟が出て来る。
併せて見ればより理解が深まるかと。
どこまで、いつまでも容疑者家族という烙印は付いて来る。
まだネットがない時代だったけど、
幼女連続殺害事件の犯人宮崎勤の父親が自殺してしまったことを思い出した。
あと、役者がみんな良い。
志田未来は天才と言われているだけあって、
突然、今までと違う世界に放り込まれ戸惑い、混乱する沙織を見事に演じ切っている。
セリフを喋らなくても、たたずまいで感情が伝わって来る。
実際に経験することが出来ない役柄な訳でして、役作りも大変だったことでしょう。
刑事役の佐藤浩市はいつも通り、くたびれているけど、哀愁が漂っていてかっこいい。
松田龍平とのコンビも面白い。
子供を殺人事件で失ったペンションのオーナーを演じた柳葉敏郎も気合い入りまくりの熱演を披露。
新聞記者の梅本役の佐々木蔵之介は気持ち悪さ全開だ。
リハーサル段階でカメラを回すセミ・ドキュメンタリー撮影という方法で撮っていて、
役者のリアルな演技を捉えている。
とまぁ、褒めまくりですが、不満なところもあるにはある。
まず音楽。
カーチェイスシーンでの劇盤にはちょっと気が抜けた。
そして、何よりも佐藤浩市と柳葉敏郎が芝居をぶつけあっているところに、
在り来たりのピアノのメロディ。
せっかくセミ・ドキュメンタリーで撮ったのなら、ここは音楽なしで勝負して欲しかった。
その方が見ている側も役者の演技に集中できるし、感情にもより訴えると思う。
とは言うものの、それ程大きな不満ではないんだけどね・・・
ちょっと気になっただけ。
あと印象に残った演出テクニックがあった。
それは人と人の間に遮蔽物を置くこと。
佐藤浩市と柳葉敏郎との会話のシーンで、二人の間に玉暖簾を垂らし、
二人の気持ちが決して通いあってはいないことを表現している。
志田未来が刑事役の津田寛二に尋問されるシーンでは、
傍観している佐藤浩市を手前、志田未来と津田寛二を奥に配し、
その間にまた遮蔽物を置き、同じ空間にいるのに、それぞれが別の世界であるように見せている。
こういった構図を使った演出は他の作品でも見られるので、
意識して見るのも面白いかと。
君塚良一監督が本作に込めたメッセージは、分かりやすい。
でも分かりやすいからこそ、心に響くし、意識もしやすい。
鑑賞後、テーマ性について色々と語り合える、
とても意義ある作品であることは間違いないと思う。
マスコミの糾弾やネット社会の暴走も、
そもそも殺人事件がなかったら起きない。
多くの人たちに見てもらって、少しでも犯罪抑制になれば良いな。
そして、子供を持つ親は他人事とは思えないでしょう。
自分の息子や娘は大丈夫か?
子供の育て方や接し方は今のままで良いのか?という疑問に至るかも知れない。
親子で一緒に見に行って、
お互い意見交換するのにうってつけの作品かもしれない。