1/24より丸の内ルーブルほか全国にて 配給会社:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント (C)2008 Danjaq, LLC, United Artists Corporation, Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. |
ミスを犯してしまった。
今までの「007」はシリーズものといっても一話完結。
ボンドが殺しのライセンスを持ったスパイであることさえ知っていれば良かったから、
前作を見直す必要なんて皆無だった。
しかし、本作を見る前に『007/カジノ・ロワイヤル』を見直すべきだった・・・
見直す時間がないのなら、せめてストーリーを改めて読んでおくべきだった・・・
いや、勿論、ダニエル・クレイグによるニュー・ボンドの第2弾である『007/慰めの報酬』が、
『007/カジノ・ロワイヤル』の続きであるということは認識していた。
しかしながら、これ程までに密接に関係しているとは・・・
今までのボンドだったら、タイトルが出る前に、本筋とは違う見せ場から始まる。
『007/慰めの報酬』もいきなりカーチェイス・シーンから始まるんだけど、
ここから既に前作の続き。
前作の1時間後だと・・・
思い出す暇もなく、バンバン人名が飛び出す。
覚えてねぇ〜
思い出すのはダニエル・クレイグの素っ裸拷問シーンばかり・・・
ミスター・ホワイトって誰だっけ?
マティスって誰だっけ?
ジェフリー・ライトって前作にも出てたっけ?
ただでさえテンポが速いうえ前作の記憶がほとんど欠落しているし、
回想シーンとかもないので、所々、かなり戸惑った。
断言する。
本作を見る前に『007/カジノ・ロワイヤル』を見るか、
見ていても覚えていないのなら、見返した方が絶対に良い。
予習不足のため不完全燃焼。
60点ぐらい。
でも、前作を覚えていたのなら、90点ぐらいは取れたと思う。
車、バイク、ボート、飛行機といった乗り物アクションに加え、
ガンアクション、追跡、肉弾戦、大爆発とアクションてんこ盛り。
これだけアクションを詰め込んでいるのに、人間ドラマも充実。
それでも上映時間1時間46分という恐るべき作品だ。
『007/カジノ・ロワイヤル』もそうだったけど、
新生ボンド・シリーズは、ボンドをより人間味溢れる人物として描いている。
怒り、傷つき、感情を露わにする。
余裕綽々で任務を遂行するボンドとは明らかに違う。
勿論、宇宙に行ったりとおかしな方向に向かったロジャー・ムーアや、
どちらかというとその路線の大味なピアーズ・ブロスナンのボンドにも魅力的な部分は多分にあったから、
クレイグ・ボンドによる大規模な路線変更を良しとしないファンもいるかもしれない。
でも、新にカスタマイズすることによって、
時代にあった作風になっていると思うし、シリーズ延命にも繋がったと思う。
『007/カジノ・ロワイヤル』でボンドは初めて本当の愛を知る。
そして、裏切られ、傷つく。
『007/慰めの報酬』では、復讐と組織殲滅を結びつけ、
人間として、いや、男として、そして、スパイとして成長していく。
この2本によって、ジェームズ・ボンドが一人前になる。
ってことは、次回作で初めて真の諜報員としての活躍が描かれるということだ。
我々は過去を知った上で、ボンドの任務を見ることになる。
これは歴代ボンド作品にはない要素だ。
あらゆる面でプロフェッショナルとなったボンドが、一体どんな仕事をするのか?
今から次回作が楽しみだね。
しかし、ダニエル・クレイグがボンドになった時に、大ブーイングが起きたのが嘘のようだね。
いまではダニエル・クレイグ以外、ボンド役は考えられない。
いやー、本当にかっこいいよ。
男も惚れる。
戦うボンドは勿論だけど、スーツの着方、身のこなし、
あらゆる所作がカッコイイ。
ホテルからコッソリ出る時に、突き出した縁をスタスタと駆け抜けるシーンがある。
その軽やかで颯爽とした動きが超セクシーだ。
そして、『007/慰めの報酬』ではボンド・ガールも重要。
オルガ・キュリレンコ演じるカミーユは、
ダニエル・クレイグに負けないぐらいアクティブで強くてセクシー。
でもやっぱり弱さも持っている。
二人の共鳴から生まれるエナジーは、大きな活力となる。
でも、今までのボンドだったらこうなるだろうという展開に行かない。
そこが個人的にはたまらなく好きだ。
『チョコレート』や『ネバーランド』もそうだったけど、
マーク・フォースター監督は男女間の心の機微を描くのが本当に上手い。
今までボンド作品を手掛けてきた監督たちは明らかに毛色が違う。
違うからこそ新たな息吹を作品に吹き込んでいる。
前作以上のド派手なアクションと、しっかりとした人間ドラマ。
2本の柱が見事にシンクロした贅沢な逸品。
『007/慰めの報酬』
※ダニエル・クレイグ、オルガ・キュリレンコ、マーク・フォースター監督 取材記
※ダニエル・クレイグ インタビュー テキスト
※オルガ・キュリレンコ インタビュー テキスト
※マーク・フォースター監督 インタビュー テキスト