2/7より丸の内ピカデリー1ほか全国にて 配給会社:ワーナー・ブラザース映画 (C) 2008 Paramount Pictures Corporation and Warner Bros. Entertainment All Rights Reserved. |
80歳で生まれたベンジャミン・バトンは、年を重ねるごとに若返っていく。
時間を逆行し、普通の人とは違う体験したベンジャミンの数奇な人生を描いた話題作。
しみたねぇ・・・
超好きです。
人並みの人生すら送ることの出来ない男、ベンジャミン・バトン。
愛する人と一緒に人生を歩むことの出来ないベンジャミン・バトン。
子供の成長を見守ることが出来ないベンジャミン・バトン。
普通の生活を送っている我々にしてみたら当たり前のことが、
ベンジャミンにとって当たり前ではない。
ベンジャミンは生まれて直ぐに捨てられる。
拾われた先は老人施設を営む一家。
若返るベンジャミンとは反対に、老人たちは次々と人生を全うしていく。
ベンジャミンの周りには小さい時から常に死が当たり前のように存在していた。
死に対する悲しみの感覚も麻痺する。
だからベンジャミンは育ての親が死んでも泣かない。
実父がこの世を去っても泣かない。
これが普通のことなのか?
本当の愛を分かち合える女性と、
幸せを共有出来る時間も限られている。
人は年齢相応の“時”を享受するもの。
その一瞬、一瞬が大切であり、生きている証し。
時間に逆らって生きていかざる負えないベンジャミが、
生きていくこと、成長していくこと、そして、死んでいくことの意味を、
問いかけてくる。
数奇な人生を歩んだベンジャミン。
でも幸せだったと思う。
理由はネタバレになるから書かないけどね。
こうして、見たときのことを思い出し、
改めてジ〜ンと来る。
特にベンジャミンと幼馴染みのデイジーの恋のエピソードは、
切ないなぁ・・・
そのベンジャミンを老人から若者までブラッド・ピットが演じている。
すごい特殊メイクとCGの技術だ。
ベンジャミンの人生を実際に体験することは出来ない。
80歳で生まれて若返っていくことが、
どう人格形成に影響を及ぼすのかを理解していないと絶対に演じられない役柄だ。
心情の細かい変化を表現したブラッド・ピットの演技が素晴らしい。
『リバー・ランズ・スルー・イット』の頃の若いブラピが拝めるので、
ファンの方々は嬉しいんじゃないかな。
それから、デイジーを演じたケイト・ブランシェット。
この女優さんの説得力は半端ないですね。
良い意味でモンスターのような女優さんだと思うなぁ。
ブラピとケイトは『バベル』でも共演しているけど、
作品のタイプがまるで違うので、とても新鮮だった。
監督はデビッド・フィンチャー。
『エイリアン3』でシリーズを迷走させたし、
『ファイトクラブ』、『ゲーム』などギミックをやたら使うので、
あんまり好きな監督じゃなかったんだけど、
前作『ゾディアック』での人間描写にそんな思いも吹っ飛んだ。
『ゾディアック』は、比較的オーソドックスな作りで、
特別な技術を使った作品ではなかったけど、
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』は、
フィンチャーが得意とした映像マジックと『ゾディアック』の人間ドラマが融合した感じ。
そういった意味では、集大成的な作品なのかもしれない。
あと、この映画、やたらと嵐のシーンが多い。
恐らく、ベンジャミンの荒れた人生と、その後に起きる苦難の暗示として、
嵐が用いられているんだと思うけど、
それはベンジャミンに限ったことではない。
誰の人生でも良い時もあれば悪い時もある。
嵐の中を生きていく。
そんなメッセージも込められているように思う。
そして、ハチドリが印象的に登場する。
鑑賞後、調べたらハチドリには様々な意味があるようだ。
南米アンデス地方では“豊かさ”を表し、
ネイティブアメリカンの間では“美しさや愛の象徴”なのだそうだ。
この意味を踏まえてから見ると、ちょっと感じ方が変わってくるかも知れない。
何にしても、スケール感があって、物語が面白い。テーマも良い。
役者の演技、映像技術もハイレベル。
ここまでの風格と気品を持ちえた娯楽作品には、
1年間でそれほど出会えないように思う。