2/21よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネカノン有楽町2丁目、新宿バルト9ほかにて 配給会社:シネカノン (C) 2009「ハルフウェイ」製作委員会 |
「愛していると言ってくれ」、「ロングバケーション」など、
テレビドラマで有名な脚本家・北川悦吏子の初映画監督作『ハルフウェイ』。
語るべき点が多い作品だった。
まず、セリフが全て役者のアドリブ。
脚本家はセリフの一字一句に思いを込め、血汗を流しながら書いているから、
役者が脚本家の意図とは違う表現をしたり、セリフを変えられたり、
カットされたりすることを嫌う傾向が強い(らしい)。
倉本聡がその筆頭だ。
君塚良一も自分が監督するまで、
“なんでセリフをカットするんだ!”って、思っていたと言っていた。
だから脚本家として名を馳た北川悦吏子が、アドリブを用いたことにまず驚いた。
一応、台本は用意されたが、大雑把なもので、
撮影日の朝、役者にこんな感じという当日分のメモが届き、
あとは全て役者に委ねられたという。
また、北乃きいと岡田将生ら役者たちのアドリブをいつでも捉えられるように、
機敏に動けるデジタルビデオカメラを用い、照明無しの最少人数で撮影されている。
ひたすら役者に演じさせ、カメラを回し続け、その中から最良の部分を選んでいるので
あまり演技を感じさせない生々しい臨場感が出ている。
また自然光も雰囲気作りに大いに貢献している。
編集もメチャクチャなパン、手ブレ、ジャンプカットと文法無視なところがあるんだけど、
作品のテイストにマッチしていて返って良かった。
そして、役者たちが素晴らしい。
主役の北乃きい、岡田将生は勿論、役者全員が自然体。
特に北乃きいが良かった。
恋は盲目状態に陥った女の子の喜怒哀楽を巧みに表現している。
若く輝く撮影当時16歳の歳の北乃きいを
鮮明にフィルムに焼き付けた監督を始めとするスタッフの方々に拍手。
※北乃きいの『ハルフウェイ』の魅力については、
【北乃きい&岡田将生 取材記】にて既に書いているので、ここではこれぐらいにしておこう。
そして、肝心の中身。女子高校生のヒロはシュウの青春ラブストーリーなのですが、
この二人が繰り広げる告白の下りとか最高だった。
なるほど、北川悦吏子がラブストーリーの神様と言われる所以がわかったような気がする。
(ドラマ見ないんで・・・)
二人は付き合い始めたが、シュウは早稲田大学志望で勉強がしたい。
一方のヒロは勉強よりもシュウと一緒にいる時間を大切にしたい。
この男女のすれ違い感とか絶妙だった。
自分の経験と重なり、シュウの心境が良く分かった。
34歳のオッサン目線で申し訳ないが、
この二人、特にヒロは目先のことしか考えることが出来ていない。
それが若さの長所でもあり短所。
成宮寛貴が演じた体育教師が、シュウに伝えるアドバイス通りだ。
“あぁ、わけぇなぁ〜”って。
“でも自分が高校生の時とかもそうだったしなぁ”なんて気持ちにさせてくれる。
多分、この作品は見る世代によって感じ方が違うと思う。
オッサン、オバサンは、追体験するような、ノスタルジックな気分になり、
かつ二人のやり取りを初々しいと思いながら見守ることでしょう。
作品を見た比較的ヒロやシュウたちと世代が近い20代前半の女性スタッフも、
同じような感想を言っていたんだけど、
現在、恋愛進行形の20代半ばの男性スタッフの方は、
「今、あんな感じです・・・」と述べていた。
そして、ドンピシャの世代の人たちが見たらどう感じるのかな?
古臭いって感じてしまうのかな?
シャボン玉みたいにフワフワしていて、淡くて美しいけど、
簡単に弾け飛んでしまいそうな高校生の恋愛。
その恋愛の多くが人生の途中の出来事でしかない。
でも、それは人生にとって、とてもとても大切な時期だとも思う。
もう戻って来ないけど・・・
いじめ、自殺、ドラッグが登場しなくても、ちゃんとドラマがあって、
オッサンも楽しめる高校生たちが主人公の青春映画。
そんな作品を作ってくれた北川悦吏子監督に大感謝。
しかし、一点。
ヒロとシュウが付き合い始めた初期段階の描写がないため、
ヒロが急に我侭な女の子に見えてしまう。
一応、親密になっていく過程は撮ったらしいんだけど、
無いってことはカットしたのでしょう。
85分の映画なので尺的には余裕がある。
なんでカットしたんだろう・・・
『ハルフウェイ』
※北乃きい&岡田将生 インタビュー テキスト
※北乃きい&岡田将生 取材記