3/7より全国にて 配給会社:東宝 (C)2009 映画「ジェネラル・ルージュの凱旋」製作委員会 |
海堂尊のベストセラーを映画化した『チーム・バチスタの栄光』の続編。
原作シリーズでは、2作目の「ナイチン・ゲール」をすっ飛ばして、
シリーズ第3弾にあたる「ジェネラル・ルージュの凱旋」を映画化している。
理由は明確で、原作にある“患者のたらい回し”、医師不足などの医療問題がタイムリーだから。
そういった時事ネタを活かすためか、製作発表から僅か6ヶ月の2008年12月28日にクランクアップ。
約1ヵ月間のポストプロダクションを経て、2月中下旬に映画が完成。
そして、その2週間後に公開という荒業。
なのになかなかの仕上がりだった。
たとえ病院が舞台で、限られた場所での撮影が多かったとしても、
後半にはそれなりの規模の見せ場があるし、カット数もかなりの数だ。
続編だからある程度、準備の目処が立つのかもしれないけど、
プリプロダクション、撮影、ポストプロダクションという流れを考えるとかなりタイトなはず。
中村義洋監督恐るべし・・・
原作を読んでから1年位経っているので、細かいところまでは覚えていないけど、
かなり大胆な脚色がなされている。
でも全く気にならない。
原作にあった内部告発ミステリー、日本の病院が抱える医療問題といった柱を壊さずに、
映画がならではの独自性を構築している。
つまり創造があるってことだ。
製作が決まってから脚本が書かれたのかな?だとしたら益々凄い。
ミステリーを解き明かす場となる会議室シーンの後、更なるクライマックスがある二段構え。
しかも会議室でのやり取りがあるからこそ、そのクライマックスが活きるという構成だ。
ジェネラル・ルージュこと救命救急センター長の速水の車はメチャクチャ汚いし、
その車が停めてある場所だけ、草がボウボウに生えている。
ここでは触れないけど、ちゃんと理由がある。
こういう細かい演出も見逃せない。
その速水を演じたのは、堺雅人。
はじめこのキャスティングにはピンと来なかった。
若すぎる。
でも原作では中年男性だった主人公の田口を、
映画化にあたり若い女医に変更した訳で、
速水自体の年齢を下げるのもバランス的に見て必然かと思い直す。
そして、堺雅人はメチャクチャ上手い。
掴みどころがなく、人を食ったような態度も見うけられ、周囲から誤解されているが、
人一倍、医療に対して真摯に向き合っている速水という人物を巧みに表現している。
田口を演じた竹内結子も、前作では色々言われてたけど、
個人的には良かったと思うし、二作目になって、なんかもう田口役が定着した感があった。
田口と再コンビを組む白鳥を演じた阿部寛は言うまでもない。
この三人を含め、羽田美智子、山本太郎、貫地谷しほり、高嶋政伸、
おみとしのり、國村準、平泉成らが一堂に会する先述の会議室のシーンは見応え十分。
そして、『感染列島』に引き続き、医療現場で働く人たちの大変さが胸を打った。
様々な医療問題とミステリーを見事に融合させ、
それを軽快に描きつつ、その実とてもシリアス。
単なる娯楽映画に終わっていない。