4月18日よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて順次公開 配給会社：ギャガ・コミュニケーションズ (C)2008 Celador Films and Channel 4 Television Corporation |
世界最大のクイズショー「クイズ＄ミリオネア」に出演し、
あと１問正解すれば番組史上最高の金額を獲得できる状態の少年ジャマール。
スラム出身で学歴も無い18歳の少年が、ここまで勝ち残ることが出来た理由を紐解くことによって、
少年の過酷な人生と運命、そして、インドのスラム街が抱える問題点を浮き彫りにする。
原作となる「ぼくと１ルピーの神様」を元に、
『フル・モンティ』を手掛けたサイモン・ビューフォイが、スラム街の明暗を取り入れた物語の面白さ。
時系列を複雑に織り交ぜた効果的、且つ巧みな編集。
躍動感に溢れ、疾走感に満ちたスピーディーなショットと、
インドの風景と人々の心情をじっくり見せるショット。
その両方を切り取った素晴らしい撮影技術。
観客の魂を鼓舞する音楽と音響。
常に様々なジャンルにチャレンジし、今回慣れない地でのロケ撮影だったにも関わらず、
今までにない斬新な作品を作り上げたイギリス人監督ダニー・ボイルの手腕。
米アカデミー作品賞、監督賞、脚色賞、編集賞、撮影賞ほか全8部門を受賞しただけあって、
その完成度はかなり高いと思う。
アカデミー賞受賞時にちょっと記事にしたけど、
インド（多分、富裕層）では、スラムの描き方に問題があると物議を醸した。
確かに、本作はスラム街の暗部を描いていると思うんだけど、
見ている最中は、そこよりもスラムで暮らす人たちの力強さや逞しさの方に目が行った。
そして、本作の真のテーマはそこじゃないとも思う。
スラム街の問題はあくまでサブであり、物語のど真ん中にあるのは“愛”でしょう。
個人的にはこの“ラブストーリー”にいたく感動した。
過酷な状況下で育った幼いジャマールと兄のサリーム。
そして、兄弟と行動を共にする女の子ラティカ。
やがて、ジャマールとラティカは互いに魅かれあっていく。
がっ！
世の中は2人にそれは、それは凄まじい試練を次から次へと与える。
その試練は、『赤い糸』の敦史と芽衣の試練なんか鼻糞以下に思えるほど凄まじい。
やっぱり障害が沢山あって、乗り越えるのが困難であればあるほど、
見ているこっちは、2人の愛の成就をより強く求めるよね。
どんなに遠い道のりであろうと、どんなに絶望的状況であろうと、
ジャマールは折れないし、諦めない。
“あんたストーカー？って”ってぐらいラティカを追い求める。
ラティカもジャマールの気持ちに応えたいんだけど、
都度、邪魔が入る。
頑張れ！ジャマール！！
頑張れ！ラティカ！！
ここの部分で言うと、インド版『愛のむきだし』だね。
で、本作は幼少・少女・現在という3つの時代を、
それぞれ違う俳優が演じているんだけど、ラティカを演じた女優陣が凄いんだよね。
幼女時代のラティカは、普通に子供として愛くるしくて可愛い。
少女時代のラティカは、小さいくせに妙な色気を発している。
そして、大きくなったラティカは、美しく爽やかにエロい！
フリーダ・ピント演じる成長後のラティカは、
序盤にジャマールのフラッシュバックのシーンで初めて登場する。
ほんの一瞬なんだけど、その笑顔が最高。
まるで太陽のような輝きを放っている。
幼少時代のジャマールが、成長後のラティカに出会うまでかなりの道程があるんで、
見ているこっちもその残像を追い求め、輝けるラティカに会いたくなってしまうのだよ。
こんな心境に観客を陥れるのも編集の妙ってやつであります。
今回はラブストーリーの部分をメインに書きましたが、
いろんな切り口が存在する作品なんで、語るべきポイントはたくさんある。
ということは、人によって刺さる部分が違うってことでもあるので、
鑑賞後は様々な意見交換が出来る作品だ。
パワフルで、エキゾチックで、エキサイティング。
感動的であり、爽快さも感じてしまう。
そして、何よりも“面白い”。
やっぱり映画はこれが最も重要でしょう。
うーん、改めて凄い作品なんだなぁーって思うのであります。
