5月1日より新宿オスカーほか全国にて 配給会社:ショウゲート (C)2009 Emperor Dragon Movies Limited All Rights Reserved |
恋人の消息を探るため日本に密入国した中国人鉄頭は、
ヤクザの組長を助けたことから、次第に新宿歌舞伎町で頭角を現すが、
やがて裏社会の抗争に巻き込まれていく・・・
ジャッキー・チェンが、密入国者で極貧で、ワルで女遊びする。
そして、人を殺す。
こんなジャッキー見たことない。
さらにいつものコミカルさだけでなく、カンフー・アクションをも封印。
ハードでダークなフィルムノワールなので、
いつものジャッキー映画を見るスタンスで鑑賞すると驚くかもしれないので要注意。
ジャッキーの長いキャリアにおいて、笑いがない作品はいくつかあった。
、
ジャッキーのコミカル・カンフーのスタイルが確立された『ドランクモンキー/酔拳』以前に製作された『成龍拳』、
『少林寺木人拳』(共に日本での公開は『ドランク・モンキー/酔拳』の後)、
ブレイク後も『プロテクター』、『炎の大捜査線』、『新ポリスストーリー』等がそう。
しかし、どんなシリアスな作品であっても、カンフーは必ずあった。
ラブストーリーに挑戦した『ゴージャス』でも、カンフーは健在だった。
そんなジャッキーの代名詞といもいうべきカンフーを今回排した理由はいくつかある。
まず、ジャッキーの年齢。
55歳とは思えないような動きをするジャッキーだけど、
やはりいつまでも身体にキレがあるわけもない。
アクションが体力的にきついのは、想像に難くない。
でも、今回のカンフー封印は年齢的な問題というよりは、
ジャッキーのいち俳優としての評価に対する意地の方が強いと思う。
以前よりジャッキーは、
「ひとり役者としてぼくの演技を見て欲しい」と言い続けてきた。
それでもやっぱりアクション俳優として見られてしまうし、
世間もそれを求めている。
次のステップに進みたいという願望と周囲の要望。
そのジレンマの産物が、
シリアスもの、ラブストーリーであってもカンフー有りという、
悪い言い方をすると徹しきれない中途半端な形となって表れていたのでしょう。
ちゅうことで、今回のジャッキーは遂に踏ん切った。
完全にシリアス&リアルに徹した。
そうは言ってもジャッキー自身、ファンに受け入れてもらえるかどうか不安だったそうな。
ジャッキーがずっと「演技を評価して欲しい」と言っていたのは知っていたので、
いずれこの手の路線の作品が登場するとは思っていたし、
ジャッキーの気持ちを考えれば、個人的には“有り”だ。
長年ジャッキーのファンだった人たちもきっと同じ思いでしょう。
ジャッキーのキャリアを振り返ると、
ジャッキーのジャッキーのターニングポイントは10年ごとに訪れている。
■1979年:『ドランクモンキー/酔拳』
1978年製作だが、日本では翌1979年7月21日に公開され(併映『トラック野郎 熱風5000キロ』)大ヒットを記録。
日本にジャッキー・チェン・ブームが巻き起こる。
ジャッキーにとって日本が重要な市場となった。
■1989年:『ミラクル/奇蹟』
俳優としてだけでなく、映画監督としても活躍していたジャッキーが、
「香港映画の総力を集結し、ハリウッドに負けない映画を作る」という意気込みで撮った作品。
「香港映画人にだって出来るんだ。バカにされたくないと思った」と語っていた通り、
ゴージャスな衣装とセット、ステディカムによる華麗なカメラワークなど、
今まで以上に気合が入りまくった一本で、ジャッキーが一番好きな作品に挙げている。
■1999年:『ゴージャス』
ジャッキーが初めて恋愛映画に挑んだ異色作。
丁度この頃ぐらいからジャッキーは、「演技を見て欲しい」と頻繁に言い出しており、
ジャッキーがもがきながら、新たな道を模索していた頃の出演作。
そして、2009年『新宿インシデント』である。
『ゴージャス』の評判があまり芳しくなったというのもあり、
ジャッキーはなかなか新たなジャンルに踏み切ることが出来なったのでしょう。
10年間の葛藤を経て、遂に!ということで、
今回ばかりはカンフー・アクションではなく、ジャッキーの渾身の演技を見守りましょう。
映画自体もなかなか面白かった。
ダーク・サイド・オブ・ジャッキーもたまには良い。
でも、これからずっとカンフーなしとなると、それは困るなぁ・・・
『新宿インシデント』でもジャッキーが戦うシーンになると、
ついついカンフーを欲してしまった。
演技派ジャッキーも良いけど、やっぱりジャッキー独特のカンフーが見たい!!!
それから『新宿インシデント』は、ジャッキー映画で初めてR-15指定がついた。
手首切り、腕切り、顔面切りと刃物系の痛い描写もあるし、
その他、バイオレントなシーンがてんこ盛り。
麻薬の描写もある。
正直、ジャッキー主演作品で、そこまで描写する必要あるの?って疑問に思ったんだけどね。
子供たちがジャッキーの映画を見ることが出来ないのは残念だけど、
少々刺激が強すぎるかな。
昔の残酷描写はいかにも作り物って感じだったりして、
笑えたりしたんだけど、今の映画はリアルだからねぇ。
普段は暴力描写=犯罪助長という方程式に大反対なんだけど、
『新宿インシデント』がトラウマになって、他のジャッキー映画を見なくなると困るので、
ちびっ子は大きくなってから見てね!
15歳以上の方々は、ジャッキーの新境地開拓を目撃せよ!
竹中直人、加藤雅也といった日本人俳優との共演シーンも、
たくさんあるのでそれも嬉しいし、新宿でのロケも見もの。
映画の中身自体は、馳星周の「不夜城」シリーズ中国人版といった感じ。
因みに現在、密入国者は11万3072人いるといわれ、
1993年のピーク時である約30万人からかなり減ったという報道を『新宿インシデント』鑑賞後に見た。
『新宿インシデント』
※ジャッキー・チェン インタビュー テキスト
※ジャッキー・チェン 取材記