2009年05月01日更新

#371 『チェイサー』


チェイサー

『チェイサー

5月1日よりシネマスクエアとうきゅうほか全国にて
配給会社:クロックワークス、アスミック・エース エンタテインメント
(C) 2008 BIG HOUSE / VANTAGE HOLDINGS. All Rights Reserved.




面白いけど不快。


そんな映画だった。


風俗店を経営する元刑事ジュンホと
店の客でデリヘル嬢を殺害している青年ヨンミンの息詰まる攻防を描いたサスペンス・スリラー。


失踪した店の女をとった男からまたオーダーを受けたジュンホは、
風邪で休みたいというデリヘル嬢ミジンを強引に説得し、探りを入れるために送り込む。

しかし、ミジンはヨンミンの手に落ちてしまう。


ひょんなことからヨンミンを捕まえることに成功したジュンホ。


警察の取調べに対しても曖昧な返答をするヨンミン。
自供のみで証拠もなく、一向に捜査ははかどらず、ヨンミンの隠れ家さえも分からない。


シビレを切らしたジョンホは、独自の調査に乗り出す。
そして、ミジンに7歳の娘がいると知る。


キム・ユンソク演じる警察をクビになった冴えない中年男ジュンホのキャラクターが良い。


チェイサー


短気で粗暴。
最初はどちらかと言えば、金のために行動しているが、
7歳の少女との交流によって、自責の念に駆られ、必死にミジンを探し出そうとする。
その流れが泣ける。


チェイサー


ちょっと『レオン』ぽいけど、キム・ユンソクは、ジャン・レノのように格好良くない。
容姿は次長課長の河本だ。


不恰好だけど、必死。
全てにおいて上手く行かず、ただただ焦燥感に駆られる中年男。
そこがまた良いんだよね。


7歳の少女とのやり取りも、親密過ぎず、ある程度距離感を持たせている。
だから設定はベタなんだけど、そこまでベタベタな印象を受けない。
このバランス感覚も上手いじゃない。


ヨンミンを演じたハ・ジョンウも、何を考えているのか分からない、
掴みどころのない不気味な男を巧みに演じている。


チェイサー


ヨンミンが取る行動はかなり間抜けだし、
キャラクター自体も(あえて)曖昧なんだけど、
妙に説得力があるのはハ・ジョンウのお陰でしょう。


ミジン役のソ・ヨンヒも体当たり演技を見せている。


チェイサー


そして、日本映画にはない韓国映画独特の硬い映像が、
これまた韓国映画によく見受けられる残虐性をより一層際立たせている。


正直、物語の展開は強引だし、警察の捜査の仕方もバカだ。
なんでミジンの車が停められている場所近辺を捜査せんのだ!!


ジュンホも気付くの遅い。


さらに“どうやって帰ったの?”とか、
“どうやってそれを切ったの?”あるいは“どうやって持って帰ったの?”
とか細かい穴は沢山ある。


でも、キャストの熱演が有無を言わせないし、
残酷なまでの不条理世界が胸を打つ。


そう『チェイサー』は、見応えのある面白い映画だ。


が、冒頭に書いた通り、面白いんだけど不快なのである。


理由は言えないけど、『チェイサー』を見て同じ感想を持つ人はいると思う。
でも不快感を感じるということは、逆に言えば作り手の術中に嵌ったとも言える。
それだけ感情を掻き毟られたわけだから。


しかし、韓国映画を見たのはいつ以来だろうか・・・
気になったので調べてみたら、最後に見た韓国映画は『グエムル-漢江の怪物-』だった。


2006年の作品だから3年ぶりってことだ。


別に韓国映画を毛嫌いしていた訳じゃないんだけどね。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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