5/30より渋谷シアターTSUTAYA、シネマート新宿ほかにて 配給会社:ヘキサゴン・ピクチャーズ (C)ハイキック・ガール!パートナーズ |
この所『ラスト・ブラッド』、『チョコレート・ファイター』(未見)、
そして、『ハイキック・ガール!』と、
アジア人女性が生身の身体を酷使して戦うアクション映画が多い。
『ハイキック・ガール』は、
琉球空手道 月心会の黒帯保持者である17歳の女子高生、武田梨奈主演の空手映画だ。
監督は西冬彦。
元ギャガ・コミュニケーションズのバイヤーとして、
『少林サッカー』、『マッハ!』を買い付けて来た人物。
凄いのが、サラリーマンやりながら、自主制作で映画を作り続け、
主演までこなしている点。
買い付けた作品からも分かるとおり、アクション大好き。
当然、自ら作っている映画もアクション映画だ。
伊藤Pは西冬彦監督と直接面識はないが、
6〜7年ぐらい前に当時ギャガに務めていた女友達の家で、
酒を飲みながら西冬彦主演・監督作品を鑑賞したことがある。
(その女友達は今、『ハイキック・ガール!』の宣伝をしている)
タイトルは覚えていないが、恐らく『WILD NIGHTS』だと思われる。
映画の出来、不出来はさて置き(酔っ払って見たので内容も良く覚えていない)、
普通の会社員が本気で身体を張って、アクション映画を作っていることに驚いた。
特にギャガは、“六本木の不夜城”と言われるほど連日深夜残業の嵐で、
配給会社の中でも屈指の激務会社として名を馳せていた。
そんな会社に勤めながら、アクション映画を監督し、主演までしちゃうなんて・・・
その後、西冬彦氏はギャガを去り、『黒帯 KURO-OBI』で企画・武術指導を担当。
T-SHIRT-YA.COMでコラボTシャツを作り、
先日の『トワイライト〜初恋〜』のキャンペーンで来日したテイラー・ロートナーにも
そのTシャツをプレゼントしたんで、
伊藤Pともちょっとだけ縁のある作品だ。
この『黒帯 KURO-OBI』で、西冬彦氏は本物の空手師範たちを主演にし、
本気で失神するまで戦わせた。
所謂、“マジ当て”というスタイルで、
本当に相手の頭や顔面にパンチや蹴りを叩き込む危険なアクションだ。
ジャッキー・チェンやトニー・ジャーのアクションを真似しても仕方がないと考え、
西冬彦氏はオリジナリティを追究した。
結果、この「失神体感アクション」というアイディアに辿り着いたというわけだ。
ただ、『黒帯 KURO-OBI』のマジ当ては、
コツコツとダメージを相手に与えるいかにも空手らしいものだったため、
アクションとしては地味な印象となった。
そこで、もう少し娯楽性と華やかさを加味しつつ、
「失神体感アクション」を進化させたのが『ハイキック・ガール!』だ。
タイトル通り、ハイキック一発で相手を沈める。
しかも丈の短いスカートをはいた制服姿の女子高生が、男性を蹴り倒すという爽快さ。
アクションに拘る西冬彦監督が、目を付けただけあって武田梨奈の動きは確かに素晴らしい。
CGに頼らないでアクションを撮るという西冬彦監督の思いには、
ジャッキー・チェンで育ったってのもあり、多分に響く。
しかーし!!
アクション映画の本質は、物語があって、その中にいかにアクションをはめ込むかだと思う。
とにかく『ハイキック・ガール!』は格闘、格闘、格闘。
全編格闘だらけ。
それを見せることが前提の映画なのは理解出来る。
でも、アクションのために物語があるのではなく、
物語があってこそのアクションじゃないと。
残念ながらストーリーはかなりおざなり。
そして、キメとなるアクションを再度スローモーションで見せるという、
ジャッキー・チェンやトニー・ジャー作品でも見られる演出が登場するんだけど、
これが各アクションシーケンスの度に、何度も、何度も、何度も繰り返される。
確かにマジで当てているのことが判るし、痛そうだし、
見せたい気持ちは分かる。
しかし、限度ってもんがあるでしょう。
いくらアクション好きといえども、流石に興醒めしてしまった。
もっとストーリーが練られていて、
インパクトのあるアクションがバランスよく要所に配されていたら、
物語とアクションの相乗効果で、より面白くて、
多くの人にリーチする様な作品になり得ると思う。
とはいうものの、アクション好きとしては、
西冬彦監督の本格志向の「失神体感アクション」はウェルカムだし、
主演の武田梨奈もアクションが出来る日本人女優としては、
志穂美悦子以来の逸材かもしれない。
可能性は未知数だ。
『ハイキック・ガール!』を手始めとして、
更なる進化を遂げた「失神体感アクションムービー」の登場に期待したい。
うーん、なんかエラソーな文章だな・・・
でも、本当にそう思うのであります。