![]() 7月25日よりシネカノン有楽町2丁目、シネマート新宿ほか全国にて 配給会社:オフィス・シロウズ、シネカノン、パナリ本舗 (C)2009「真夏の夜の夢」パートナーズ |
沖縄にこだわってはいないが、
沖縄を舞台にした映画を撮り続けている中江裕司監督最新作。
シェイクスピアの戯曲を沖縄の架空の離島・世嘉冨島に置き換えて作り上げたファンタジックな人間悲喜劇。
東京での恋に破れ傷心状態で、故郷の世嘉冨島にやって来たゆり子と、
彼女を見守る精霊キジムンのマジルーとの交流と活躍を描いている。
沖縄の風土がそうさせるのか、ゆったりとした中江裕司監督らしい空間が今回も支配しているが、
『ナビィの恋』、『ホテル・ハイビスカス』、『恋しくて』にはない、
シビアな題材も扱っている点が今までと違うところ。
島から島民が離れていく描写は、『恋しくて』でインタビューさせて頂いた際に、
「日本中が東京化し、その土地にあった風土が無くなりつつある」と気に病んでいた
中江裕司監督なりのメッセージなのでしょう。
そんな要素をまぶしつつ、テイスト・オブ・オキナワが、
リアルに、そして、神秘的に盛り込まれて、やはり見ていると沖縄への想いが馳せる。
東京で暮らしていると日々疲れるんで、
島民とは逆にサウスバウンドしたくなるさぁ〜。
隣の芝は青く見える。
話を映画に戻そう。
ゆり子を演じたのは柴本幸。
NHKの大河ドラマ「風林火山」のヒロイン役で脚光を浴びたようだが、
生憎、大河ドラマを生まれてこの方見たことがない輩なので、
初めてその演技に触れた。

ゆり子は不慣れな土地に来て様々な騒動に巻き込まれるため、
喜怒哀楽が激しい。
そんなゆり子の喜びや戸惑いを自然に演じているなぁ、と思ったら、
まさにゆり子=柴本幸であることが狙いだと、中江監督がインタビューで語ってくれた。
中江監督は『ホテル・ハイビスカス』や『恋しくて』で素人同然の役者を使い、
有りのままの姿を捉えた。
柴本幸はプロの役者だけど、今回もアプローチの仕方はある意味同じで、
柴本幸と役柄を同化させ、演技とは言えないような自然な演技を引き出すことに成功している。
そして、中江監督作品史上、最も演技らしからぬ演技を披露したのは、
『ホテル・ハイビスカス』で元気一杯の少女美恵子を演じた蔵下穂波だろう。
その蔵下穂波が、今回精霊マジルーを演じている点が大注目。

いやー、その後どうしているんだろうと思っていたんだよねぇ。
それがすっかり大きくなっちゃって。
『ホテル・ハイビスカス』って、つい最近の映画という感覚だったんだけど、
2002年の作品なのね・・・
もう7年前か。
当時9歳の幼女が、16歳っすよ・・・
時が経つのは早いなぁー。
って自分も同じ様に年食ってんだけどさ・・・
随分前から髭に白いものが混じるようになったし、
先日も今まで絶対になかった場所から白髪が生えていたのを発見した。
こりゃ、そう遠くない日に下の毛が白くなることも覚悟しておかないとなぁ・・・
って、なんの話じゃい!!!
この他、沖縄映画といえばの平良とみとその旦那の平良進を筆頭に、
ウチナンチューの役者がゾロゾロと出演している。

やっぱりね、どんなに方言指導したとしてもネイティヴの役者には敵わないよ。
特に沖縄は。
そういえば、『涙そうそう』で「にいぃ、にいぃ〜」って、
ス・テ・キなウチナーグチを披露していた長澤まさみが、
存在すら知られていない『群青 愛が沈んだ海の色』で再びウチナンチューを演じていたけど、
果たしてどうだったのだろうか・・・
沖縄を舞台にした映画は率先して見るように心がけているけど、
この作品に至ってはまるで見る気になれなかったなぁ。
いけね、また話が逸れた。
お恥ずかしい話ですが、
シェイクスピアの「真夏の夜の夢」がどういう話なのかまるで知らないので、
どこをどう置き換えているのかさっぱり分からなかったんだけど、
きっと、話の中身を知っていれば、より一層楽しめる作品なのでしょう。

中江裕司監督らしく、今回も沖縄の観光スポットは登場しない。
強いて言えば伊是名島の“さんかく山”ぐらいなんだろうけど、
“さんかく山”は物語で重要な役割を果たしている本作のマストスポットだ。
良くあるランドマーク的な使い方は、一切ない。
だからファンタジーだけど、生々しい沖縄が伝わってくる。
それがまた沖縄に行きたいと思わせるんだよなぁ・・・
行きてぇ・・・
行けねぇ・・・
ちょっとでも沖縄を感じたい。
ということで、今夜の晩酌は泡盛に決まりだ。
■『真夏の夜の夢』
※柴本幸&中江裕司監督 インタビュー テキスト
※柴本幸&中江裕司監督 取材記
