8月1日より新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開 配給会社:ブロードメディア・スタジオ (C)2008 Emperor Motion Picture(International)Limited, Warner China Film HG Corporation & BNJ Armor Entertainment Limited. All Rights Reserved. |
近年稀にみる完成度の高さのアナログ・アクション映画だ。
香港アクションという枠に留まらず、アクション映画としてずば抜けて面白い。
キム・ベイシンガー主演の『セルラー』('04)のリメイクで、
“香港映画界がハリウッド作品を初リメイク!”というふれ込み。
『セルラー』は誘拐、監禁された女性が、破壊された電話のワイヤーを接触させ、
繋がった先の青年に救いを求めるという、
一本の電話の糸が命綱となるサスペンス・アクション。
『セルラー』自体、テンポのよい傑作でかなり面白い。
昔の記事を調べたら#99「2005年を振り返る」で、【拾い物度ナンバー1】に挙げていたほどだ。
なので、“わざわざリメイクしなくてもいいんでない?”と思ったりしたんだけど、
『コネクテッド』はベースの部分だけを頂戴し、物語、キャラクター造形、
そして、アクションと、どれもこれもがスケールアップされていた。
始まって5分ぐらいで主人公の女性グレイスが突然拉致される。
グレイスはロボット設計士なので、電子機器に強くさっさと壊れた電話を開通させ、
冴えないサラリーマン、アボンに救いを求める。
最初は取り合わないアボンだったが、
本当にやばそうということで、グレイスとグレイスの一人娘を救出するために立ち上がる。
ここからはもう見せ場の連続だ。
ものの数分で、
“これがクライマックスじゃないの?”ってなレベルのカーチェイスが繰り広げられる。
このカーチェイスの演出は、かなりレベルが高い。
カットの割り方、構図の良さ、引きと寄りの使い分け。
この分かり易く、スピーディーで、激しいカーチェイスシーンを見て感涙。
ぶっ飛ばして、ぶっ飛んで、ぶつかって、破壊して、横転する。
CGアクションでは決して出すことの出来ない、
真実味のある迫力の映像。
これだよ、これ!これぞ本物!
往年のカーチェイスだ!!
監督はジャッキー・チェンの90年代と2000年代の最高傑作
『WHO AM I?/フー・アム・アイ』と『香港国際警察/NEW POLICE STORY』を手掛けたベニー・チャン。
アクション監督は、ベニー・チャン同様、
『デッドヒート』、『レッド・ブロンクス』、『ナイスガイ』、
そして、『WHO AM I?/フー・アム・アイ』、『香港国際警察/NEW POLICE STORY』など、
長年ジャッキー映画のアクションを支え続けたリー・チュンチー。
このアクションを知る尽くした最強コンビが、
古き良き香港アクションの復活を目指して作った前作『インビジブル・ターゲット』は、
決して悪い出来ではなかったんだけど、
ニコラス・ツェー、ショーン・ユー、ジェイシー・チャンたちのアクションには、
“僕たち頑張りました!”という気負いが感じられ、
香港アクション完全復活とは言えないと思った。
『インビジブル・ターゲット』の記事でも書いたけど、
香港アクションの場合、“頑張っている”だけじゃ物足りないんだよね。
しかしながら、『コネクテッド』はごく一般的な男女が事件に巻き込まれるので、
カンフーをやる必要はない。
どちらかと言えば封印しなくてはならない。
なので、かえって役者さんたちの“頑張っている感”がなく、
アクション職人の2人が作り出したアイディア満載の活劇に没頭出来たのかな。
一般人のアボンが、ジョン・マクレーン刑事級に“ダイ・ハードマン”だけど、
危機回避の仕方は、かなり運頼みだったりするので、
窮地に陥る度に、今度はどうやって打開するんだろう!?って楽しめる。
どの作品もそうだけど、ベニー・チャンのサービス精神は凄いね。
これでもか!これでもか!って。
特に本作はそれが過剰だったように思う。
“こんなにして頂いちゃっていいんですか?”って。
物語も二転三転して『セルラー』以上に練られているし、
かなり最初の段階で、これは単なるリメイクじゃないって分かるから、
一体、クライマックスはどうなるんだ!!と期待が募る。
そして、その期待に見事に応えちゃうんだな。
あと、これ程“イライラ”させられたのも久しぶり。
主人公たちが何かをしようとすると、必ずイラッとするような邪魔が入る。
でもこのイライラ感って、この手のサスペンス映画では常套手段だし、
このネチネチした要素がないと物語は盛り上がらない。
キャラクター造形の部分では、グレイスもアボンも子持ちであり、
グレイスは夫を亡くし、娘が唯一の家族。
アボンは嫁さんから愛想を尽かされ、息子の信頼も失いつつある瀬戸際な状態。
この親と子の関係性の活かし方も中々上手く、
物語によいスパイスをもたらしている。
親子のエピソードには、ちょっと涙がちょちょ切れたよ。
いやー、本当にベニー・チャンに感謝だな。
こんなに面白いアクション映画を作ってくれてありがとう!
間違いなくあなたは現代アクション映画監督の最高峰です!
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※『インビジブル・ターゲット』ベニー・チャン監督 インタビュー・テキスト