9/4よりTOHOシネマズ日劇ほか全国にて 配給会社:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント |
ニューヨークの地下鉄運行司令室勤務の職員(デンゼル・ワシントン)と、
ハイジャック犯(ジョン・トラボルタ)の息詰まる頭脳戦を描いたサスペンス・アクション映画。
74年に製作された傑作『サブウェイ・パニック』のリメイクということで、
日本もアメリカも本当にネタが枯渇しているんだね。
そのオリジナルを見たのは15年以上も前なんで、
細かい部分までは覚えていないけど、
サスペンス映画なのに機知に富んだ作品だったという印象が強く残っている。
そんなとぼけたウィット感を作品に生み出していた
ウォルター・マッソーのラストの顔は忘れられない。
で、リメイク版なんだけども、
主人公におとぼけ感があまりなく、比較的硬派な作りになっていたんで、
個人的にはちょっとガッカリした。
デンゼル・ワシントンじゃ、仕方ないか。
前半はオペレーションルームと地下鉄という限られた空間で、
鉄道職員とハイジャック犯が心理戦を繰り返す。
本作の売りの部分にも関わらず、
2人のやり取りを凄いと思えなかった。
『交渉人』のケビン・スペイシー対サミュエル・L・ジャクソンみたいな戦いを期待したんだが・・・
鑑賞してから1ヶ月ぐらいしか経っていないのに、
どんなやり取りだったかさえちゃんと思い出せない。
中吊り広告に、
「なぜ、自分なのか?」
「なぜ、1車両だけなのか?」
「なぜ、59分なのか?」
「なぜ、1000万ドルなのか?」
という問い掛けが書かれていたんだけど、
「なんでだっけ?」って、思い出すのに苦労した。
というか、一部思い出せない。
2人の頭脳戦の印象が薄くなった理由はもう一つある。
それは後半のアクション・シーンが悪い意味でインパクト大だったから。
前から兄貴に比べて雑な演出をするトニー・スコットだけど、
今回の地下鉄暴走シーンは、ちょっと酷すぎやしないかい?
『エネミー・オブ・アメリカ』('98)、『スパイ・ゲーム』('01)辺りから、
スローモーションと早送りを交互に繋いでカメラをぐるりと回してみたり、
チリチリした荒い映像を加えてみたりといった演出が見られるようになり、
遂に『ドミノ』では全編それ。
これがさぁ、見ていると疲れるんだよね。
今回も随所にこの手法がインサートされていて・・・
特に地下鉄暴走シーンで多用されており、
カット割が早いのも手伝って、もう訳がわからない。
いつの間にか車両が停まっていたよ。
同じく主人公が電車を停めようとする『スピード』、
『スパイダーマン』みたいにハラハラドキドキしないんだよね。
オリジナルは暴走シーンにかなり時間を割いているし、
車内に取り残された乗客たちの様子を克明に描いている。
「どうやって停めんのよ!」って!
それがサスペンス・アクションの醍醐味だと思うんだけどな。
キメになるアクションがないのも本作の弱点かな。
オリジナルはアクション控え目だけど、
その分、ハイジャック犯の逃走劇や暴走車両のシーケンスが面白かった。
リメイクに際して、それをやめてアクションと2人の対決に重きを置くならば、
もっとじっくりと、そして、しっかりと演出して欲しかった。
一番印象的なのが、追突されて吹っ飛ぶパトカーじゃ、ちょっと物足りない。
もっと言えば、逃走&追跡劇も2人の頭脳がぶつかり合うような展開だったらなぁって。
と、マイナスなことを書いてみたものの、
この作品が嫌いかと言うと決してそうではなく、逆に結構好きだったりする。
オリジナルのイメージが強過ぎただけ。
70年代、80年代のアクション、サスペンス映画を愛する者として、
この手のジャンルが今の時代に作られるだけでも嬉しい。
ましてや、オリジナルを見ている人、
どれだけいるのか?
そして、デンゼル・ワシントン、ジョン・トラボルタという、
古くから知る2大スターが共演というだけで、普通に興奮する。
昔は誰と誰が共演というだけで、ウキウキしたもんだ。
『タワーリング・インフェルノ』ポール・ニューマン+スティーブ・マックィーン
『クレイマー、クレイマー』ダスティン・ホフマン+メリル・ストリープ
『デッドフォール』シルベスター・スタローン+カート・ラッセル
『ユニバーサル・ソルジャー』ジャン=クロード・ヴァン・ダム+ドルフ・ラングレン
『マーヴェリック』メル・ギブソン+ジョディ・フォスター
『フェイク』アル・パチーノ+ジョニー・デップ
『フィエス/オフ』ニコラス・ケイジ+ジョン・トラボルタ
『ヒート』ロバート・デ・ニーロ+アル・パチーノ
最近はそういうキャスティングで「うぉ〜!」ってのがあんまりない。
スターが減ったのも原因かな。
なんだかすっかり自分が昔を懐かしむオッサンになっている事実に愕然・・・
今を生きよう!
って、話がそれましたが、なんか良し悪しは別として、
こういった娯楽映画の王道ともいえる作品が、
もっともっとガシガシ製作されると嬉しいっす。
そして、『トップガン』にときめいた者として、
なんだかんだと言って、トニスコ作品は外せない。
あんまりハイスピード撮影とか使わないで、
シンプルなアクション映画撮ってくれないかなぁ〜。