『ジェフ・ベック ライヴ・アット・ロニー・スコッツ cine sound ver.』 9/19よりTOHOシネマズ六本木ヒルズにて先行公開 9/26より全国にて 配給会社:ローソンエンターメディア (C) Class Act |
2007年11月27日から12月1日まで、三大ギタリストの一人であるジェフ・ベックが、
ロンドンのロニー・スコッツ・ジャズ・クラブで行ったライブの模様を収めた作品。
ジェフ・ベック唯一の公式ライヴ映像としてパッケージ販売されてもので、
映画館での上映に際して、細かい音の調整が施されている。
それがタイトルにもある「cine sound ver.」で、
資料には下記、説明が明記されていた。
「音楽コンサート」制作者の演出意図を、最新音響システムを持つ映画館で忠実に再現するために、
レベル/ノイズ/残響音/音響機材/スピーカの設定位置などに配慮したサウンド再生設定。
過程では再現不可能な大音量、巨大スクリーンに映し出される映像を含めると
実際のライヴ以上の迫力と臨場感が味わえる。」
昨年も『QUEEN Rock Montreal cine sound ver.』が上映されたりと、
映画館の役割も多様化が進んでいる。
さて、ジェフ・ベックですが、
ロック大好きにも関わらず、何故かこの孤高のギタリストをスルーし続けており、
アルバムは『ベック・ボガート&アピス』しか持っていない。
ジミー・ペイジが在籍していたLed Zeppelinのアルバムは全部持っているし、
クリーム以降のエリック・クラプトンのアルバムも殆ど所有しているのに・・・
なんなんだこの差は・・・。
確か、高校生ぐらいの時に、名盤と誉れ高い「WIRED」を聴いてはみたものの、
崇高すぎちゃってチンプンカンプンだったんだよね。
当時、ハードロック/ヘビーメタルばかり聴いていたので、
ギンギンのロックを求めていたから、
まぁ、理解しろという方が無理ってやつかな?
そんなトラウマ(?)から、ずっとジェフ・ベックを聴かず終い。
でもジェフ・ベックが素晴らしいギタリストであることは、
理解しているつもりだ。
この「ライヴ・アット・ロニー・スコッツ」のDVDが発売された時、
地元のCDショップの店内モニターでガンガン映像が流れていたんだけど、
いやー、ビビッタね。
今まで見たこともない様な演奏法で、
なんだこのオッサンは!って思った。
変態だよ。
変態。
思わずDVD買いそうになってしまった。
(約5,000円もしたので止めたけど)
そんな購買意欲さえ喚起してしまうジェフ・ベックのライヴ・コンサートが、
スクリーンで見られる!ということで、見た。
それ程大きなスクリーンでの鑑賞ではなかったけど、
流石、緻密に整音されているだけあって、ジェフの奏でるギターの音色は勿論、
ベースやドラムといった低音や、観客の歓声がボンボン耳に飛び込んできた。
で、音も大切ですが、何と言ってもライヴ映像で重要なのは、
ジェフ・ベックの演奏でしょう。
やっぱり、変態だね。
速弾きのイングヴェィ・マルムスティーンとか、
ギターに革命を起こしたエドワード・ヴァン・ヘイレンとか、
7弦ギターを弾いちゃうドリーム・シアターのジョン・ペトルーシやスティーヴ・ヴァイ
といったギタリストも超絶テクニックを持った変態ギタリストだけど、
ジェフ・ベックは、何かが違う。
まずフィンガーピッキングってのが凄い。
一体どうやったらこんな速いビートを右手で刻めるのだ!!
ここからしてまず独特。
その他、タッピング、スライド、ボリューム奏法、アーミング、
ライトハンドとありとあらゆる技術を駆使して、
ギターで出せる音色の限界に挑んでいる。
今は映像でどうやって弾いているのか確認できるけど、
ジェフ・ベックがギターの可能性を突き詰めていった70年代には、
映像が無かった。
アルバムを聴いた人たちが「一体どうやって弾いているんだ!?」って、
首をかしげたのもうなずける。
いや、本当に圧倒された。
どっかのサイトで、
「ジェフ・ベックのライヴはフィギュア・スケートみたい」という記述を読んだことがあった。
多くのミュージシャンは、ライヴでミスなく演奏できて当たり前とみなされることが多い。
しかし、ジェフ・ベックの場合は、あまりに高度なテクニックが必要なため、
曲によってはライヴで正確に弾き通すことが出来ない。
難しいフレーズをライヴで出来る限り完璧に弾けるように試みる。
それがフィギュア・スケートに似ているというのだ。
全く同感。
そんなジェフ・ベックの妙技と一体化するバックのミュージシャンたちも素晴らしい。
“スッキャッターブレイン”とか、圧巻だ。
んでもって、何よりも女性べーシストのタル・ウィルケンフェルドが抜群。
演奏は勿論ですが、可愛いっす。
ジェフ・ベックがタルの顔を見ながら、デレデレになってしまうのも仕方ない。
ジェフ・ベックって気難しくって、
演奏する時もムッツリしているというイメージが何故かあったんだけど、
タルの笑顔のお陰か、超楽しそうに演奏している。
やっぱりさ、演奏している人が楽しそうにしているのって、
本当に重要だと思う。
そして、ジェフ・ベックが一番破顔するのは、
エリック・クラプトンの登場の時。
今年2月、日本でも実現した生きるレジェンドの共演。
これにはしびれた。
マディ・ウォーターズのブルースナンバーを演奏するんだけど、
それぞれが“らしい”フレーズを弾いた時のリアクションが楽しい。
シンプルなブルースだからこそ、2人のギタリストの個性が際立つ。
演奏終了後、2人は抱き合う。
ちょっと感動的だ。
その時、汗まみれになっていることを気にするジェフの心遣いもナイス。
こんな間近でジェフの生フィンガーテクニックが堪能出来るなんて!!
感動といえば、
観客としてジミー・ペイジとロバート・プラントの姿が映し出される。
ジェフ・ベック、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジ。
この歴史に名を残す3人のギタリストが同じ空間にいた。
多分、ヤードバーズに在籍していたということ以外、
あまり接点のない間柄だったと思うんだけど、
3人とも意識はしていたでしょう。
全員60代半ばに差し掛かり、エゴとか無くなったのかなぁー、
なんて勝手に思いながらジェフ・ベック率いるバンドの演奏に酔いしれました。
ジェフ・ベックの曲を知らなくても良い。
もっと言えば、ジェフ・ベックというミュージシャンを知らなくても良い。
それでも十分に楽しめるはず。
そして、ジェフ・ベックが如何に偉大なミュージシャンであるかが分かる!
コメント (2)
ホントそうですねー ペイジ、クラプトンと比べると、商業的認知度やミーハー
的な部分、素人受けしないベックはある意味、最後の職人的ロックギタリストかもしれませんねー 今日は久しぶりにBLOW BY BLOW 、WIREDを聞いてみようと思います。伊藤さん いつもありがとう
投稿者: FLOYD | 2009年09月16日 12:39
FLOYDさん
コメントありがとうございます。今更のコメント返しで申し訳ないです。記事にあるとおり、ジェフ・ベックはほぼ完全スルーだったので、これを機に、名盤と呼ばれるアルバムをちょいちょい聴いてみようと思います。
以前、近所のCD屋さんにジェフ・ベックのボックスが70%オフで売られていました。今思えば買っておけば良かったと後悔しきりです。
投稿者: 伊藤P | 2009年09月25日 20:06