10/3より新宿バルト9にてレイトショー 配給会社:ティ・ジョイ |
“いちねんのはじめ”と読む。
第19回東京国際映画祭「アジアの風」部門で上映された作品が、
何故だか分りませんが、突然、3年後の今、特別上映される。
大晦日の24時間に起きる5つの物語をパラレルに描き、
徐々にそれぞれの物語の人間が交錯し、その関係性が明らかになっていく群像劇。
台湾映画にはかなり疎い。
『キラー・ヴァージンロード』の記事で図らずも触れることとなった『戯夢人生』。
多分、純粋な台湾映画はこれしか見ていない。
有名なエドワード・ヤン監督の『ヤンヤン 夏の思い出』、
アン・リー監督の『恋人たちの食卓』といった作品からなんとなーくイメージできる台湾映画像は、
リアルなホームドラマ。
『一年之初』のチェン・ヨウチェ監督は1977年生まれの若手ということで、
“どんな感じなのかな?”と思って見てみたら、上記イメージを覆す作品だった。
まず物語の交錯のさせ方。
中々手が込んでいる。
脚本もチェン・ヨウチェ監督が手掛けており、かなり練ったに違いない。
撮影も様々な技法がエピソードごとに用いられている。
ケンカシーンでは、登場人物の肩の部分にカメラを据えて、
まるでその場にいるかのような臨場感を作り出してみたり、
その他、手持ち、長回し、クレーン、ポイント・オブ・ビューなど、
あれも!これも!な状態だ。
音の使い方も、かなり凝っている。
照明の調節だけでなく、ポスプロ段階でも手を加えたんだろうけど、
画面を飛ばして白ぽくしたり、
ザラザラさせてみたり、黄色くしてみたり、妙に生々しくしてみたり、
ふわふわさせみたりと、手間がかかっている。
「ピカチュウ!」、『バベル』に匹敵するパカパカ高速点滅まであるので、
鑑賞の際は要注意だ。
これらの演出を斬新と見るか、鼻に付くと感じるかは受け手次第でしょう。
登場人物たちは全員何かしら苦悩のを抱えていて陰があり、
演じている俳優、特に女優さんたちには妙な透明感がある。
作風的には、
ヌーベルバーグ+ウォン・カーウァイ+岩井俊二。
これって、伊藤Pの三大苦手要素じゃない・・・
それでもこの作品を受け入れることが出来たのは、
伊藤Pの免疫力が増したとか、精神的にオトナになったからとかでなく、
単に“やりたいことを全部入れました!”というチェン・ヨウチェ監督の意気込みが、
初々しいく感じられたからかな。
“思い入れが強い”→“勿体無い”→“カットできない”
という新人監督が陥り易いドツボにはまっている点も微笑ましい。
(だからちょっと単調な部分がある)
登場人物たちにイマイチ共感できなかったり、
終始暗くて、悪い方へとミスリードされるので、
やや辛く感じる部分もあったけど、
最終的にきちんと着地して、爽やかな気分にさせてくれる。
でもさぁ、大晦日から元旦に掛けての話だというのに、
映画の撮影していたり、裏組織では会議が開かれていたりする。
台湾人はワーカフォリックなのでしょうか?
<情報>
チェン・ヨウチェ監督の新作『ヤンヤン』ですが、
10/17(土)から開催される第22回東京国際映画祭の「アジアの風」で上映されます。
『ヤンヤン』
■10/19 17:20 - 19:42(開場17:00)
六本木会場 [TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen5]
登壇ゲスト(予定):リー・ガン(プロデューサー)
■10/24 11:00 - 13:22(開場10:40)
六本木会場 [TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen2]
登壇ゲスト(予定):チェン・ヨウチェ(監督)、ホワン・チェンウェイ(俳優)
予告編を見る限り、“らしさ”が出ている。
手持ちカメラがブレブレで、予告編だけでちょっと酔いそうだけど・・・。