10/10よりシネセゾン渋谷、シネ・リーブル池袋、新宿ミラノほか全国にて 配給会社:日活 (C)2009「悪夢のエレベーター」製作委員会 |
エレベーターに閉じ込められた男女4人。
チンピラヤクザ風の中年男、今時の若いサラリーマン、
ジョギングに行くという黄緑色のジャージを着たおっさん、
そして、自殺願望を持ったゴスロリ少女。
密室で繰り広げられる4人のやり取りは、意外な方向へと観客を誘って行く。
エレベーターに閉じ込められた人々の物語という点で、
ジョビジョバのシチュエーション・コメディ『ショコキ!』を思い出すが、
『悪夢のエレベーター』の方が比べものにならないぐらい面白かった。
上映時間105分。
数分の冒頭タイトルが開けて直ぐに、舞台はエレベーター内へ。
4人の会話劇が、フラッシュバックを挟みながら進んで行く。
キャラクターがとても個性豊かだし、そのやり取りも面白いので、
密室劇として楽しめるけど、流石に場面転換が少なくちょっと飽きがきた。
しかしながら、“永遠にこれが続くのかな?ちょっと厳しいなぁー”って、
思い始めたその瞬間、
こちらの心情を察知したかのように、物語は急展開をみせる。
後は今までの疑問を全て回収しながら、新たな道筋を作り出し、
見る者をぐいぐいと惹きつけ、最後まで一気に突っ走っていく。
まず、二転三転する物語そのものが面白い。
更に笑える一方で、ビターなテイストもちゃんと入っている点が素晴らしい。
人生を野球のペナントレースに例えるところとか、
ちょっと自分の人生の立ち位置を見つめ直してしまった。
残酷な描写もあるんだけど、なんだか滑稽で笑える。
そして、役者がみんな良い。
特に内野聖陽の演技力に脱帽。
凄いや。
エレベーターに閉じ込められる残り3人を演じた斎藤工、モト冬樹、
佐津川愛美もバッチリはまっている。
この4人以外にも登場人物がいる。
ここではあえて書かないいけど、2人の女優が見事な演技を披露している。
もう一人重要キャラが出てくるんだけど、最高にキモくて素敵。
監督は堀部圭亮。
練られたストーリーだけで楽しませてくれるだけでなく、
人間の滑稽さや悲しみ、孤独感などを巧みに散りばめ、
作品全体に奥行を作り出すことに成功している。
俳優、構成作家(「ガキの使いやあらへんで!!」)として既に地位を築いているけど、
この初監督作品で、フィルムメーカーとしても才能があることを証明した。
見た感じかなり低予算で作られていると思われる。
金をかけなくても面白いエンターテイメント作品は作れる。