10/10より新宿ピカデリーほか全国にて 配給会社:角川映画、角川エンタテインメント (C)2009 Imagi Crystal Limited Original Manga (C)Tezuka Productions Co., Ltd. |
伊藤P「で、取材場所は?」
宣伝M「パークだよ」
伊藤P「パーク?新宿の?」
宣伝M「そう。新宿にあるパークハイアット東京」
パークハイアット東京。
伊藤Pが映画業界に入りたての頃、有名外国人俳優や監督の取材と言えば、
ソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』の舞台となったこの高級ホテルだった。
しかしながら、六本木(ヒルズ&ミッドタウン)や日比谷にも高級ホテルが建ち並んだうえ、
配給会社の所在地の多くが、六本木、銀座界隈なため、
最近は以前ほど頻繁に使用されていなかった。
伊藤P自身、取材本数を絞っているというのもあるけど、
パークハイアット東京に取材へ行くのは確か今年初めてだと思う。
だから冒頭にある通り、
『ATOM』のプロデューサー・マリアン・ガーガーの取材場所を聞いた時に、
聞き返してしまったのだ。
他のホテルのほとんどが駅直結なのに対して、
パークハイアット東京は、都庁前駅から10分ぐらい歩くし、
途中に坂もあるから正直ちょっと面倒なんだよね。
なんでパークハイアットなのかMに聞いたら、
『ATOM』のメイン館が新宿ピカデリーだからだって。
なんじゃいそれ!
同じく角川エンタテインメント配給で、
新宿ピカデリーがメイン館だった『トワイライト〜初恋〜』の取材場所は、
ペニンシュラ東京だったじゃないか。
相変わらずいい加減だ。この男。
で、取材当日は雨・・・。
「ちっ、ついてねぇ!」と心の中で舌打ちしつつ都営大江戸線の都庁前駅で降りて、
パークハイアット東京へと向かう。
そして、パークハイアット東京の目の前にある坂に差し掛かる。
この坂には以前からホームレスの方々のものと思われる数々の品物が置かれていたんだけど、
久しぶりに通ったらその数が増加していた。
一流ホテルの目と鼻の先、都庁のすぐ傍、坂道の両側は公園。
ホームレスの方々には申し訳ないが、
やはり景観を損ねていると言わざる負えない。
なんて思いながらパークハイアット東京に到着。
入口を抜けるとエレベーターのエントランスがある。
そこの中央に、ドーン!と巨大なオブジェがある。
そのオブジェの土台に腕時計が置いてある。
実はこれもオブジェなんだけど、初めてパークハイアット東京に来た時、
誰かが置き忘れた本物の時計だと思い、ホテルの人に届けようと手を差し伸べた。
が、騙されたと知り、一人赤面したことを思い出す。
そんな10年前の初々しい自分に赤面しつつ、エレベーターを乗り継ぎ取材部屋へ。
取材部屋に着くと、今回、カメラマンは同行していなかったので、
Mをモデルにスチール写真の試し撮りをする。
そうこうしているうちに取材時間となった。
マリアン・ガーガー。
日本人からすると凄まじい名前だ。
女性らしいマリアンという美しい名前に、
ガーガーといういびきみたいな苗字。
両極端の響きがドッキングした感じだ。
資料には顔写真がなかった。
名前の印象とドリームワークス社のアニメ部門で働いてきたというキャリア、
そして、キャスリーン・ケネディ、ポーラ・ワグナーといった、
ハリウッドでバリバリ活躍している大物女性プロデューサーの容姿。
これらの要素がマリアン・ガーガーのイメージを勝手に頭の中で構築していた。
その姿はデプっと肥えた自信みなぎるキツイ感じのおばちゃん。
しかしながら、部屋に入って来たのは、ごく普通の体系で、
柔らかい笑顔を携えた優しい感じの女性だった。
立って出迎え握手をしながら挨拶を交わす。
その声がまた可愛らしい。
『魔法にかけられて』のエイミー・アダムスみたいな優しいトーンだ。
ほぼ、オンタイムだったのにも関わらず、
「お待たせしちゃったかしら?」なんていう気遣いまでしてもらっちゃった。
早速インタビューを開始し、質問をぶつける。
マリアンが喋っている間は、メモを取りつつ彼女の方を見ていたんだけど、
やはり綺麗だと思った。
手元にあった資料には生年月日が書かれていなかったので、正確な年齢は分からない。
多分、30代半ばから40代前半ぐらいか?
「女優さんでもいけるんじゃないの?(あるいは声優)」
ってな思いが頭にもたげると共に、
「しまった・・・カメラマンを連れてくるべきだった・・・」
という後悔も。
そんなことを考えながらインタビューを続けたんだけど、
一番強く感じたのは「鉄腕アトム」に深い愛情と敬意の念を抱いているということ。
何度も何度も、
「日本の方々が大切にしてきたキャラクターを破壊するようなことだけはしたく無かった」
と言っていた。
「『ATOM』に関してはそれはなかったと思いますよ」と伝えると、
とても喜んでいた。
『ATOM』の紹介記事でも書いたけど、
ホント、日本発祥のキャラクターがハリウッドで映画化されると、
大体、酷い形で出来上がってくる。
そんな話をしたら、マリアンは、
「他の作品がどうしてそうなるのかわからないけど、『ATOM』の場合は・・・」と語りだす。
決して、他の作品を貶さない。
そして、『ATOM』の話に帰結する。
『ATOM』から離れて、「好きな映画は?」って聞くと、
「『サウンド・オブ・ミュージック』ね。美しい物語が何よりも素敵。
それからサブテーマとして父と子、そして家族というテーマがある。
これは『ATOM』にもあって・・・」
やっぱり『ATOM』の話に帰結する。
今後のプロジェクトを聞くと、
「どうやって休暇を過ごすかが最大のプロジェクトね!」
とギャグをかましつつ、
「私のキャリアの中で、『ATOM』ほど深く関わって、熱中した作品はありません。
次のプロジェクトを考えなかったのは初めてです。
それぐらい『ATOM』の製作に没頭していたわ。勿論、楽しみながらね」
何を聞いても『ATOM』に帰結する。
流石はプロデューサー!と思ってしまった。
そんなこんなでインタビュー終了。
続いて、スチール撮影。
これがやっぱりプレッシャーで・・・
監督やプロデューサーとかのスチール撮影は、
普段だったらそこまで緊張しないんだけど、マリアンは綺麗だから・・・
そんな思いもあって、ついこんなことを口走ってしまった。
伊藤P 「とてもお綺麗なので、ちゃんと撮らないと・・・」
通訳さんがすかさず伝えると。
マリアン「アハハハハハハハハハハハハハハハッ!(超豪快な笑い声)
そう言って頂けるのは嬉しいけど・・・・信じないわ!」
伊藤P 「いえいえ、嘘なんてついていません。本心です」
マリアン「メイクさんの腕が良いのよ!」
そんなつもりはなかったんだけど、ちょっと太鼓持ちになってしまいました。
で、パチパチッと撮影してみたんだが・・・
うーん・・・
この写真だとダメだね。
実際のマリアンはもっと可愛らしい感じなんだけどなぁ・・・
やっぱりカメラマン連れてくれば良かった・・・
で、インタビュー内容が良かったから、最後のヨイショの一言が良かったのか、
マリアンは何度も「とても光栄だったわ。ありがとう」を繰り返し、
その都度握手。
インタビューを始める前に、マリアンが名刺をくれたので、
そのお返しに名刺を渡しておいた。
メールくるかな・・・
来る訳無いか・・・
何にしてもマリアンは喜んでくれたし、
自分的にもそこそこ満足のいくインタビューが出来た。
ちょっとした高揚感を抱きながら、パークハイアット東京を後にし、
都庁前駅へと向かう。
駅に着いて、会社に戻るため大江戸線に乗る。
「次は新宿、新宿」
のはずが!
「次は西新宿、西新宿です」
ガァーーーーーーーーーーン!!!
間違えて、両国・飯田橋方面の大江戸線に乗ってしまった!!!!
あんたパークハイアット東京歴何年だよ!と、
自分で自分を突っ込んでしまいましたとさ。
おしまい