2009年11月18日更新

#431 『曲がれ!スプーン』


曲がれ!スプーン

『曲がれ!スプーン』

11/21より全国にて
配給会社:東宝
(C)2009 フジテレビ/ROBOT/博報堂DYメディアパートナーズ/東宝/日本映画衛星放送




どうも本広克行監督とはあんまり肌が合わないようだ。


『踊る大捜査線 THE MOVIE』('98)を劇場で見た時は、
日本映画をそれほど見ていない頃だったし、
あくまでも観客として見たからか、
そこそこ面白いとその時は思った(今、見たら大分、印象は変わるのでしょう)。


でも、これ以降の監督作品は、少々苦戦気味。


『踊る大捜査線 THE MOVIE』が(その時は)面白かったから、
期待大で見た『スペーストラベラーズ』('00)は、
期待が大きかった分、割を食ったか、完全に肩透かしだった。


『サトラレ』('01)はパスして、
続く『踊る大捜査線 THE MOVIE2〜レインボーブリッジを封鎖せよ!』('03)は、
テレビ放映で見たんだけども、
なんでこの作品が実写日本映画で歴代No.1の興行成績を収めたのか、まるで理解出来なかった。


シチュエーション・コメディの『サマータイムマシン・ブルース』('05)は、
あまりにどうでも良い内容で、途中でどうでも良くなった。


「踊る大捜査線」のスピンオフ『交渉人 真下正義』('05)はまぁまぁ良かったけど、
そこまで面白いとは思わなかった。
よく知らないんだけど、『機動警察パトレイバー 劇場版』をパクリまくっているんだって?


『スペーストラベラーズ』以降、どれもこれもダメだった中、
唯一『UDON』('06)は結構面白く鑑賞できたんだが、
昨年の『少林少女』が・・・絶望的な出来栄えで・・・。


そして、最新作『曲がれ!スプーン』。


曲がれ!スプーン


“『サマータイムマシン・ブルース』のチームが再集結!”
というふれこみだけで、個人的にはマイナスに作用してしまうんだが、
危惧した通りの出来だった。


『サマータイムマシン・ブルース』同様、
ヨーロッパ企画という劇団の戯曲を映画化した作品なんだが、
やっぱり、どうでも良い内容で、どうでも良くなった。
因みに今回は始めからどうでも良くなった。


年に一度エスパーが集まる喫茶店。
そこに紛れ込んだ偽エスパー。
彼を取材するためにやって来た超常現象バラエティ番組のAD。


彼らが繰り広げるクスと笑えて、心がホッコリするシチュエーション・コメディ。


クスリともしなかったし、ホッコリともしなかった。


主人公の桜井米(ヨネ)は、超常現象を信じる女の子。


曲がれ!スプーン


伊藤Pも超常現象とか大好きだし、夢やロマンを感じるけど、
半信半疑ながらもそんな現象をカメラに収めようとする米はちょっと痛い。


エスパーたちもキャラが揃っている割りには、
映画を牽引するほど求心的な魅力になっていない。


それぞれのキャラクターに興味を感じられない時点で、
米とエスパーの絡みが、面白いと思えるわけもなく・・・。


このキャラクターを殺したのは、テンポの悪さとうすら寒いノリのせいだと思う。


まずテンポ。


要らないセリフやシーンがたくさんある。


シチュエーション・コメディならば、粋なセリフと軽やかな展開にするか、
それこそ舞台の再現に徹し、じっくり撮るかでしょう。


本作は前者を目指す作品だと思うし、やろうとしているんだけど、
中途半端になってしまっている。


次いでノリに関しては、役者の演技に起因と思う。


米を演じた長澤まさみ以外は、小劇団の役者さんたちがほとんど。


曲がれ!スプーン


彼らは映画やドラマにも出演しているが、
舞台の映画化である本作では、やはり舞台役者のカラーが多分に出てしまったのか、
芝居が全てにおいてオーバー。


役者じゃないから偉そうなことは言えないけど、
映画と舞台では、演技の仕方は違うはず。


原作と映画が違うように、舞台と映画も別モノでしょう。


キャラクターを面白いと思う人もいるだろうし、
このテンポが心地よいと感じる人もいるだろうし、
こういう芝居が好きという人もいるだろうから、
最終的には好みの問題なんだと思う。


つまり、自分の肌には合わなかったってことですね。


曲がれ!スプーン


で、どうでも良くなった最大の要因は、テーマ性かな。


子供の頃に抱いていた夢=超常現象で、
その夢を大人になっても信じることは大切だというメッセージは、
正直よう分からず、スプーンじゃなくって、首が曲がっちゃったよ。


だからそれを具現化する役割の桜井米の考え方や行動や、
米の夢の実現の手助けをするエスパーたちにあんまり共鳴出来ない。


スプーンが曲がったからって、サンタクロースがいたからって、
UFOが実在したからって、結局、だから?ってなる。


それらが実際に出来たり、存在したら夢の実現なの?


そりゃ、米は喜ぶかもしれないけどさ・・・。


曲がれ!スプーン


ようわからんメッセージを突っ込むよりも、
『キサラギ』みたいにその場の楽しさを追求した方が、
題材的に良かったんじゃないかな。


別に害のある作品だとは思わないので、良いとこ見つけて、
そこを書こうと思ったんだけど、なんも思い浮かばなくて・・・。


それでも【裏部屋】行きじゃないのは、
長澤まさみが一生懸命キャンペーンしているから、ということにしておこう。
(いいのか?そんな判断基準で・・・)


ちゅうかさぁ、本当にこういう作品を楽しめなくなっている自分が悲しいね。


映画に夢や希望を求めるよりも、
リアリティとか自分の人生に照らし合わせることの出来る何かを求めてしまう。


ということで、まだ映画に夢や希望を求める方々は、
35歳の疲れきったオッサンの戯言だと思って、
読み飛ばしてください。


■『曲がれ!スプーン』
※長澤まさみ インタビュー テキスト
長澤まさみ

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「曲がれ!スプーン」★★★ 長澤まさみ、三宅弘城、諏訪雅、中川晴樹主演 本広克行監督、106分 、公開日:2009-11-21、2009年 ... [詳しくはこちら]

コメント (2)

かばた:

今日このブログを見つけて数時間かけて数十個の記事を読み、伊藤Pさんの虜になってしまいました。映画の見方や趣味に共感できる事が多く、楽しく記事を読み続けていたのですが、初めて大きく共感できないこと伊藤Pさんがこの記事に書かれていました。
それは、「サマータイムマシン・ブルース」がつまらない、ということについてです。あの映画は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」へのオマージュであり、本家に負けないくらい良く出来ていると思います。伊藤Pさんはこの映画の記事を書かれていないようなので、手短かにでも伊藤Pさんの意見が聞きたいと思いコメントしてみました。
ワガママだとは思いますが聞いてくれれば嬉しいです。。。

伊藤P:

>かばたさん

コメントありがとうございます。
すみません『サマータイムマシンブルース』なのですが、もう5年も前に見たので、細かい内容までは覚えていないというのが正直なところです。ただ、見た時にとてもガッカリしたことだけは覚えているんです。
せっかくタイムマシンという凄い物がアイテムがあるのに、なんで殆ど部室内で、クーラーのリモコンなの?って。
舞台の映画化ということも知らないで見たので、もっと壮大なストーリーを期待していたのでしょう。
この前も映画配給会社の方と話していたら『サマータイムマシンブルース』の話が出てきたのですが、その方は面白かったと言っていました。
今と5年前とでは映画の見方も大分変わったと思われ、今見たらまた違う感想を抱くのかもしれません。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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