11/23より下北沢トリウッドにて 配給会社:トリウッド (C)UMEZZ.com |
漫画家楳図かずおのドキュメンタリー映画。
公開規模も小さいし、普通だったらスルーしちゃうところだが、
楳図先生のお住まいが伊藤Pと同じ吉祥寺ということもありちょっと興味をそそられた。
本当に吉祥寺を歩いていると、良くお見かけする。
元々散歩好きということで良く外出しているらしい。
服装はかなりの確率で、トレードマークの赤と白のボーダーだ。
吉祥寺で月に2回は目撃する楳図かずお先生ですが、
実は先生の漫画をきちんと読んだことがなく、
年少の頃に「まことちゃん」をちょっと読んだぐらい。
映画化された『漂流教室』、『神の左手 悪魔の右手』とかは見たけど、
どちらも残念な出来栄えだった。
こんな感じで楳図かずお先生の作品にはほとんど触れたことがなく、
このドキュメンタリーで、その凄さを知ることが出来たら良いなと思った。
で、見た訳ですが、ドキュメンタリー映画としては正直ちょっと微妙な出来だったかな。
冒頭、少女の絵を描いている楳図先生がずっと映し出される。
このシーケンスはどのように楳図先生が絵を描いているのかが分かるので良い。
しかし、これ以降もそこまで長くインサートしなくても良いんじゃない?
というシーンが多々ある。
例えば、楳図先生が「まことちゃんダンス」を練習している風景や、
その「まことちゃんダンス」をイベント会場で披露する様子が延々と映し出される。
73歳にしてこれだけアグレッシブにダンスしまくる楳図先生の姿は、
確かに強烈なインパクトを与えてくれる。
しかしながら幾らなんでも編集しないでマルマルそのまま入れちゃうのは、
ちょっとどうかと思うな。
もうちょっと丸めるなりしないと、見ているこっちは飽きてしまい、
映画そのものへの興味が薄れてしまう。
これが一番気になった。
これ以外の部分は中々興味深いものがあった。
まず、ちゃんと読んだことがないけど、楳図かずおの漫画は凄そうで、
読んでみたいと思った。
先述の“まことちゃんダンス”も衝撃的だったし、
語学を未だに独学で練習しているバイタリティにも敬服する。
また、本編の大半を占めるのが、“楳図ハウス(まことちゃんハウス)”の建設過程だ。
この“楳図ハウス”は、
2年ぐらい前に大きく報道されたから知っている人もいると思うけど、
近隣住民から「外観が派手で、地域の景観を損ねる」という主な理由で、
建設差し止めの訴えを出されてしまう。
結局、訴状は却下され無事建築されるんだけど、
ご近所と対立してまでも、“楳図ハウス”を建てたいという、
楳図先生の強い思いが本作から伝わってくる。
設計を自ら行い、内装、使う建築材料にまでこだわり、
ステンドグラスのデザインも自分で行う徹底ぶり。
その奇抜な外観だけでなく、
様々なオブジェが並ぶ“楳図ハウス”の内部の様子を本作で確認することが出来る。
これは中々貴重だ。
この映画は、“楳図ハウス”の完成と共に終わる。
見ている最中は、“楳図ハウス”も良いけど、
もっと色んな人にインタビューして、楳図かずおを掘り下げたり、
楳図先生の作品を紐解いたりして欲しいなぁーと思った。
でも見終わって本作の意図するところは、そこじゃないってことに気が付いた。
楳図先生は現在、指関節の痛みのため、約15年ほど漫画を執筆していない。
多分、もう描かない、というか描けないんだと思う。
漫画が描けないのなら、違う形で集大成としての“作品”を残したい。
それが“楳図ハウス”だったんだと思う。