12/26より吉祥寺バウスシアター(レイト)にて 全国順次 配給会社:SPOTTED PRODUCTIONS |
2009年1月1日。
一人のミャージシャンがギターで弾き語りながら、
吉祥寺の街を練り歩く姿をワンカットで捉えたドキュメンタリー映画。
吉祥寺住民としては元々気になる一本だったんだけど、
『のんちゃんのり弁』の小出健プロデューサーが、
『愛のむきだし』を押さえて2009年の邦画ベストワンに挙げており、
俄然見たくなり慌て鑑賞。
出だしは武蔵野八幡宮で参拝する長澤つぐみ。
オイラも元日に、この武蔵野八幡宮で初詣をしたぞ!
これは何時頃に撮影されたんだ!?
と一人で興奮。
いるわけないのに、自分の姿を探してしまった。
参拝を終えた長澤つぐみは、参拝を待つ長蛇の列の脇を歩き境内の外へ。
入口には本作の主役であるミャージシャンの前野健太が立っている。
長澤つぐみとすれ違った後、いきなりギターをかきならして歌い出す。
「『失楽園』でヌイた18才〜♪」
元旦、八幡様の入口、周りには初詣の参拝者たち。
「これって、ヤバくない?」って。
中々スリリングな出足で、この後どうなるんだろう?って思わせる。
前野健太は、弾き語りをしながら歩き出し、アーケード街のサンロードへと向かう。
五日市街道側のサンロード入口にはジーンズメイトがある。
この日、伊藤Pはジーンズメイトで買い物をしている。
ジーンズメイトの奥にある本作の上映館バウスシアターの看板の上には時計があり、
カメラは一瞬、その時刻を捉える。
15時15分。
良く覚えていないが、大体その位の時間にジーンズメイトにいたような・・・
かなりのニアミスだ。
惜しい!
遭遇していれば伊藤P初の映画出演だったのに!!
話が逸れた。
引き続き、前野健太は通行人から奇異な眼差しを受けながらも歌いながら歩き続ける。
サンロードのモスバーガ、COCO壱番カレー、西友、ABCマート、
見慣れた街並みが映し出される。
元旦だというのに凄い人出だし、店もたくさん営業している。
昔は全部正月休みでシャッターが下りていた。
日本の正月も大分変わった。
前野健太は更に突き進む。
伊藤Pの学生時代のバイト先で、今年閉店してしまった三浦屋、
2010年3月に閉店が決まった伊勢丹吉祥寺店、
駅開発のため工事中の吉祥寺駅公園口。
それに伴い2010年4月に今のビルから丸井に移転するユザワヤ。
たった1年前の風景なのに、今とは違うし、
2010年の春にはもっと変わってしまうのだろう。
製作意図ではないと思うけど、
移り行く吉祥寺の風景を収めた記録映画としても価値がある。
で、製作意図なんだが、正直、途中までよう分からんかった。
冒頭にあった“何かが起こるかも!?”という期待も裏切られ、何も起こらない。
前野健太というミャージシャンに別に思い入れもないので、
初めて聴く彼の曲に耳を傾けながらも、
ただ寒そうとか、手がかじかまないかなとか、そんな手で良くギター弾けるなとか、
一発撮りで弦切れたらどうするんだけどろうとか、余計なことばかり考えてしまった。
吉祥寺住民だから退屈することなく見られるているけど、
そうではない人が見たらどうなん?って。
なんで吉祥寺にさほど縁もない小出健プロデューサーが絶賛しているのだ?
とちょっと疑問の思っていたら、井の頭通りを越えたあたりから異変が起きた。
この映画の監督である松江哲明が姿を現し、
「天気予報」という曲の誕生にまつわるエピソードを前野健太に聞く。
このやり取りで、何故、松江哲明監督がこの映画を撮ろうと思ったのか、
どうして前野健太なのか?が判明する。
この話がとても胸に染み入る内容で、メチャクチャ共感した。
そして、ラストの今までとはテンションが明らかに違う演奏へと繋がる流れが秀逸だった。
もうちょっと突っ込んで語りたいところだが、
全部話すことになってしまうので、自粛する。
人間、映画でも歌でも絵でも何でも良いからクリエイトすることは重要だし、
辛いことがあっても乗り越えて生きていかなくちゃならない。
そして、その一瞬、一瞬が大切だ。
吉祥寺の街をステージとした74分間のライブを見て、そんなことを読み取った。
【前野健太 プロフィール(資料より)】
1979年、埼玉県生まれ。ミュージシャン。2000年ごろより作詞・作曲を始め、
東京都内を中心にライブ活動、自宅での録音を精力的に行う。
2007年9月、アルバム「ロマンスカー」でデビュー。
同作収録の「天気予報」が、映画『デトロイト・メタル・シティ』のメイキング映像
(本作の監督松江哲明演出)の挿入歌として使用される。
2009年1月、セカンドアルバム「さみしいだけ」発表。
日常の機微を丁寧にすくいあげる歌詞とポップなメロディー、
さらにはライブでのアグレッシヴな演奏で注目を集める、新世代のシンガーソングライター。