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『セックスと嘘とラスベガス』。
なんちゅうタイトルだ・・・『セックスと嘘とビデオテープ』のパクリ?
でもパクリ元は、スティーブン・ソダーバーグ初の長編映画で、
カンヌ国際映画祭パルム・ドールを史上最年少の若干26歳で受賞した20年も前の作品。
古くねぇ?
それとも12月23日にリリースされる『セックスと嘘とビデオテープ』のBlu-rayを売るため?
なんにしてもちょっと頂けないタイトルだなぁーと思いながら本編を見たら、
「Sex and Lies in Sin City」が原題だったと知る。
まぁ、そんなにブレていないか。
内容は実際に起きたカジノ王の死亡事件を題材にしたサスペンス映画。
主人公のサンディを演じるのは、
『アメリカン・ビューティー』で、
ケヴィン・スペイシーをメロメロにする女子高生を演じたミーナ・スヴァーリ。
確かに『アメリカン・ビューティー』で注目を浴びたが、
それはもう10年も前の話。
あまりパッとしない女優街道を突き進み、
未だに代表作が『アメリカン・ビューティー』ってのはちょっと寂しいね。
そんな彼女ももう30歳。
時の流れは早いねぇ〜。
あぁ〜、自分も『アメリカン・ビューティー』を見た時、
まだ25歳だったのかぁー。
ついこないだのうな気がするよ・・・。
切ねぇ。
更に切なさを加速させるのが、
カジノ王テッド・ビニオン役のマシュー・モディーン。
『ホテル・ニューハンプシャー』('84)、『バーティ』('84)
『フルメタル・ジャケット』('87)、『メンフィス・ベル』('90)、
『ショート・カッツ』('94)といった傑作に出演して、名を馳せた俳優だ。
しかし、1995年に出演したレニー・ハーリンの大失敗作『カットスロート・アイランド』で味噌が付いたか、
以降、映画ではあまりパッとしない。
2000年以降はテレビの方での活躍が多いようだ。
そのフィルモグラフィーを見ると、
絶頂期は80年代中盤から90年代半ば。
これって伊藤Pが浴びるほど映画を見ていた時期とドンピシャで一致する。
そんな訳で、マシュー・モディーンにも、
そこそこ思い入れがあるのだ。
甘いマスクで日本でもそこそこの知名度を誇った俳優だったんだけどね。
でも、流石は、アラン・パーカー、スタンリー・キューブリック、
ロバート・アルトマンといった名だたる巨匠たちと仕事をしてきただけあって、
本作でも安定した演技を見せている。
もう一人、重要どころで異彩を放っているのが、
テッド・ビニオンの妹ベッキーを演じたマーシャ・ゲイ・ハーデン。
『ミスト』で、恐怖の煽動おばさんを演じたあの女優さんだ。
もう出てくるだけで怖いね。
監督はイーストウッドじゃない方の『チェンジリング』('79)を撮ったピーター・メダック。
この『チェンジリング』はポルターガイスト現象を扱ったホラー映画で、かなりの傑作だ。
多分、今見てもビビると思う。
ミーナ・スヴァーリ、マシュー・モディーン、マーシャ・ゲイ・ハーデンと、
中々なキャストが揃っているし、監督もベテラン。
しかもタイトルからするにエロチック・サスペンスの予感!
ということで、ちょっと期待した。
ラスベガスにやって来たサンディは、カジノで一文無しになり、
仕方なくストリップバーのダンサーとなる。
そこに父親から受け継いだカジノを経営している大富豪テッド・ビニオンが現れ、
サンディを気に入る。
3年後。
自宅でテッドが死んでいるところを、
テッドの恋人となっていたサンディが発見する。
テッドは日頃からヘロイン漬けだったため、
オーバードーズによる事故として処理されるが、
テッドの妹ベッキーと警察は、
サンディとその浮気相手のリックにテッド殺害の容疑をかけ始める。
冒頭、ストリップをするサンディ。
ストリップという割に服を脱がない。
俺の知っているベガスのストリップはこんなんじゃない!
タイトルに「セックス」という言葉があるにも関わらず、
テッドとサンディの絡みもない。
サンディとリックもやらない。
ミーナ・スヴァーリは際どい衣装を身にまとうけど、
一向に脱がない。
別にそれが目的で見た訳じゃないけど、
これじゃ、完全にタイトル負けじゃないか!と思いながら見続けているうちに、
何回か画面がフェイドアウトして、またフィイドインする編集がなされていることに気が付いた。
映画の演出ではそう頻繁に使う手法ではない。
これってもしかしてCMを挿入するためのフェイドイン、フェイドアウトじゃないの?
ってことは、これテレビ映画?
そういえば、タイトルロールもセカセカしていたことを思い出す。
間違いない!
結局、この推測は当たった。
本作はテレビムービーだった。
テレビムービーだったら、
ストリップシーンもソフトだろうし、セックスシーンもないか・・・。
しかし、テレビムービーにしては、中々良くできていた。
フラッシュバックを活用しながら、
サンディとテッドの出会いからテッドの死までの生活を描き、
事件の真相に迫っていく構成はうまい。
飽きることなく、最初から最後まで楽しく見ることが出来た。
しかしながら、鑑賞後、何かが残るかというと否かな。
アメリカでは、このテッド・ビニオン事件はそこそこ有名で、
実際に事件の起きた1998年当時は、かなり話題になったらしい。
よって、アメリカ人にとって事件の真相追究は、興味深い題材なのかもしれないけど、
事件すら知らない日本人にとっては、別に・・・って感じ?
クリント・イーストウッド監督の『チェンジリング』も、
実際に起きたクリスティン・コリンズ失踪事件をテーマにしている。
『チェンジリング』を見る前は、コリンズ失踪事件の存在を知らなかったけど、
映画を見たら猛烈に興味をそそられた。
そして、被害者となった母親の生き様にも心をえぐられた。
コリンズ失踪事件とテッド・ビニオン事件とでは、
時代も神秘性も違うので、テッド・ビニオン事件に対して、
同様の興味を抱くのは難しいかもしれない。
だったら、サンディとテッドの関係をもっともっとディープに描いて、
サンディがどういう心境で3年間、テッドと過ごし、
テッドの死後、どんな思いで裁判を闘っていたのか?
というサンディの心境を浮き彫りにしてくれた方が、
心に残ったのかもしれない。
まぁ、テレビ映画なので、あまり欲張っても仕方ないか。
奇しくも二つの『チェンジリング』が登場する紹介文になったなぁ・・・。