1/9よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて 配給会社: (C)2009 TWENTIETH CENTURY FOX |
建築家を夢見て、グリーティングカード会社で働くトムは、
ある日、社長秘書として入社してきたサマーに一目惚れする。
やがて、トムはサマーと付き合い始めるが、
2人の恋愛観はまるで正反対。
トムはサマーから突然の別れを告げられる。
運命の女性だと思ったのに・・・なぜ?
トムはサマーと出会ってからの500日間を思い巡らす。
ちょっとお洒落で小粋な男と女の物語を描いていて、
久しぶりにこの手の作品を見たけど、面白いと感じつつ、
やはり映画は時代を反映するものだと思った。
本作はいきなり別れから始まり、
トムとサマーが出会ってからの500日間を、
行ったり来たりする構成になっている。
運命を信じるロマンチストな男。
真実の愛なんて信じない現実主義の女。
トムの恋愛に関する考え方は、男としてよーく判るし、
大いに支持したい。
一方で、運命なんて信じないというサマーの心境も、
30代半ばにもなると大分理解できる。
トムとサマーは、もう単に恋愛を楽しむというよりは、
その先にある“結婚”を意識している。
“恋愛する相手と結婚する相手は違う”
という言葉をたまに聞くが、
そんなニュアンスがサマーから感じられる。
“私の周りには幸せそうな既婚者がいない”
これはサマーのセリフなんだけど、
全く同じ言葉を発した知人が数名いる。
アメリカと日本では生活の基盤や環境が違うけど、
結婚に対する昨今の意識変化や現状は、共通なのかもしれない。
トムとサマーのやり取りを見ると、
自分自身や身近な人物たちのエピソードが蘇り、
自分の恋愛観というものを再確認させられる。
恋愛に限らず2人は共通の価値観を持つ部分もあるが、
微妙な擦れ違いを繰り返す。
それを象徴するのが音楽。
2人の直接的な関係は、ザ・スミスの曲が共に好きというところから始まる。
一方で、ビートルズのメンバーで誰が一番好きかという議論になると、
意見が一致しない。
こんな話は良くあることだけど、
本作では2人の相性を表すちょっとしたサインになっている。
監督が数々のミュージック・クリップを手掛けてきたマーク・ウェッブだからか、
音楽ネタや選曲のセンスが良い。
サマーがトムに別れを切り出す時に、
セックス・ピストルズのシドと恋人のナンシーの話を持ち出したり、
飼い犬の話で、ブルース・スプリングスティーンが出てきたりする。
この手のネタを楽しむにはそれなりの知識が必要だけど、
知っていればニンマリしてしまう。
選曲で印象に残るのはやはりホール&オーツの「You Make My Dream」でしょう。
サマーとの関係が良好になり、有頂天になっているトムの心情を表すシーンで使用されており、
その大げさミュージカルタッチの演出が、ちょっと滑稽で笑える。
他のシーンとは明らかにカラーが違うので、
失敗すると“寒いだけ”になり兼ねないが、
マーク・ウェッブ監督のセンスが良いからか、
見事に作品の中に溶け込んでいる。
あと、個人的に笑ったのが、
カラオケでトムの同僚がポイズンの「Every Rose Has Its Thorn」を歌っていたこと。
“アメリカ人ってカラオケでポイズン歌うんだ!”ってことが新発見だった。
トムとサマーをそれぞれ演じたジョセフ・ゴートン=レヴィット、
ズーイー・デシャネルも良かった。
ジョセフは繊細で優男であるトムにピッタリだ。
ズーイーは超美人とは思わないけど、人を惹きつける不思議な魅力を持っている。
A級の役者が出ているわけでもないし、派手なシーンやキラーショットもない。
その分、脚本と構成が良く出来ている良質な作品。
“ボーイ・ミーツ・ガール”だけど、“ラブストーリー”じゃない。
本作の冒頭で語られるこのナレーションの通り、
トムとサマーの恋模様は決してハッピーじゃない。
それでも最終的に、
ちゃんと幸せな気持ちにさせてくれる点も良かったかな。
因みに一番好きなシーンは、公園で“○○○!!”って大声で叫ぶシーン。
最高だった。