1/29より丸の内ピカデリーほか全国にて 配給会社:パラマウント ピクチャーズ ジャパン (C)2009 DW STUDIOS L.L.C. All Rights Reserved. |
14才で殺害された少女スージー・サーモン。
初恋の相手レイから誘いを受けたその日に殺されてしまったスージーは、
恋愛の経験すら果たすことなく、
あの世とこの世の間とも言うべき不思議な世界へと迷い込む。
そして、そこから娘の突然の行方不明に動揺する家族たちの姿を目にする。
父親は犯人探しに執念を燃やし、憔悴しきった母親はそんな夫にも疲れてしまう。
家族の崩壊を防ぎたいサーモンだったが、犯人の魔の手が再びサーモン家へと迫り、
事態はますます悪い方向へと向かっていく・・・。
製作総指揮ステーブン・スピルバーグと監督ピーター・ジャクソン。
このネームバリューだけで見たくなるし、期待も高まるわけだが、
その期待以上の内容をキチンと提示してくれた。
ファンタジーはあまり得意じゃないけど、
ピーター・ジャクソンの描くスージーが迷い込んだ世界は凄いの一言。
“一体この人の頭の中はどうなっているんだろう?”って。
元々、空想の世界を思い描くのが苦手な人種なので、
ピーター・ジャクソンの豊富なイマジネーションに驚かされた。
摩訶不思議な描写だけでなく、サスペンスの見せ方も巧みだった。
サーモンが犯人の口車に乗せられ、地下室へと連れ込まれてから、
段々と怪しく危険な雰囲気へと変化していくシーンは、ちょっとしたホラー映画だ。
終盤に犯人の家で繰り広げられる、ある人物と犯人の攻防も並の緊迫感ではない。
サスペンスを盛り上げる静寂、
そして、動へと転じた瞬間の瞬発力を活かしたこの一連のシーンは、
ほとんどセリフがなく、映画ならではの表現だと強く感じた。
それから本作最大の肝となる人間ドラマも心に響いた。
母親と良い味を出していたスージーの弟の描き込みが、
ちょっと尻つぼみだったのが残念だったけど、
他のドラマが十二分にそれらの穴をカバーしている。
突然、娘を失って苦悩する父親とスージーが交信する美しくも切ないシーンでは、
ポロポロと涙が出ちまったよ。
男だからか父親に超共鳴しちゃって、ビンビンに響いた。
そして、スージー。
これからいっぱい恋をして、いろんなことを体験するはずだったのに・・・。
ということで、少女ならではの無念さがなんとも可愛らしく、またその分悲しい。
ピーター・ジャクソンは『乙女の祈り』でも、
年頃の女の子の心情を巧みに描いており、
“なんで乙女心が描けるのだ!”と不思議で仕方がない。
そんなピーター・ジャクソンの乙女心を体現する(?)
スージーを演じたシアーシャ・ローナン(覚えずら・・・)がとても良い。
『つぐない』の時は、役柄上ちょっと不気味な感じだったけど、
今回は等身大な感じで親しみを覚えた。
その可愛さは筆舌に尽くしがたく、
思わず“俺はロリコンか?”と思ってしまったではないか。
こんなに可愛い子を殺すとは、俺が犯人を抹殺してやる!!
それはさて置き、他の役者さんも、
両親を演じたマーク・ウォルバーグ、レイチェル・ワイズ、
おばあちゃん役のスーザン・サランドンと、
オスカー受賞、ノミネート俳優で固められ磐石の布陣だ。
役者も良いし、物語も良いし、
サスペンスもファンタジーも人間ドラマもあるという贅沢な映画だ。
が、しかし、この作品はいろんな要素が入っているが故に、
実はその作品の良さどころか、どういう内容なのかを一言で、
端的に表すのが非常に難しい作品だ。
ファンタジーブームがとっくに去ってしまった今、
ファンタジーを強調してもダメでしょう。
サスペンスの部分を売りにし過ぎると、女性客が見込めない。
かといってピーター・ジャクソンを連呼したところで、
お客さんの幅が広がるとは思えない。
“泣ける映画”という手もあるが、
そうするとこの手のパターンに辟易している映画ファンを逃す可能性もある。
キーとなるビジュアルがないのも痛い。
迫力とインパクトと言った点では、
ファンタジーの部分のビジュアルが良いのだろうけど、
これだとファンタジー色が強くなり過ぎてしまうし、
やっぱりどんな映画なのかが伝わらない。
原作の基盤も日本にはあまりない。
タイトルの意味も映画を見れば理解できるが、分かりにくい。
元々映画宣伝の仕事をしていたからか、
映画を見ている最中も「いやー、これは宣伝が難しいだろうなぁ〜」って、
何度か思ってしまった。
ということで、、
伊藤Pもきちんとこの作品の良さを伝えられませんが(文才の問題もある)、
見れば良い作品なので是非見て頂きたいです。
ファンタジー部分は、大きなスクリーンで見て、
そのスケール感を味わって欲しいです。
サスペンスの部分は、観客全員が緊迫して、
劇場内に一体感が生まれると思います。
そして、凄惨な話ではありますが、
少女の思いと家族の再生を描いた素晴らしい物語に感動できるとってもラブリーな作品です。
いけてねぇなぁ・・・このポスター・・・