1/30よりテアトル新宿、シネセゾン渋谷ほか全国にて 配給会社:ファントム・フィルム (C)2010花沢健吾/「ボーイズ・オン・ザ・ラン」製作委員会 |
ガチャガチャ用玩具を作る小さな会社に勤めている田西敏行は、
仕事もプライベートも冴えないダメ男。
29歳なのに、未だ素人童貞。
そんな田西は、遂に会社の同僚のちはると良い雰囲気になるが、
セックスしか頭になくせっかくのチャンスもダメにしてしまう。
それでも田西はちはるの気を引くため、あの手この手を施すが事態は悪化するばかり。
花沢健吾の同名コミックの実写映画化だが、いつものごとく読んでない。
しかしながら、そんなことは全く関係なく、田西のやや遅れてやって来た青春物語を堪能。
田西はとにかくどうしようもない。
担当のガチャガチャ店でのシェアは、大手ライバル会社に大きく引き離され、
店の店員からもバカにされている。
ちはるが風邪を引いたと聞き、彼女のアパートに見舞いに行くが、
その際、コンドームを持参する。
“あわよくば、やれるかも?”という下心があからさまに見てとれる。
それでも何が魅力的なのかちはるは、田西に好意を抱いてくれる。
しかしながら、田西は致命的なミスを犯し、ちはるから愛想を尽かされてしまう。
このくだりの情けなさは、大いに笑えるんだけど、哀愁漂う名シーンだった。
更に田西は、ライバル会社のイケメン男子・青山が、
ちはるをもて遊んだうえ、捨てたと知り復讐に燃える。
でもこの田西の行動も大分ズレていて、ちはるはちっとも喜ばない。
それでも田西は突っ走る。
セックスがしたい。
ただそれだけ。
涙、鼻水、涎、精液、血、しょんべんと、
人間から排出されるあらゆる液体を撒き散らしながら、
無様な姿を曝け出し、欲望を満たすためだけにひたすら駆け抜けていく田西。
田西は、29年間、劣等感を蓄積し続けてきた。
中学・高校生の頃とか、どちらかと言えばいイケテナイ部類に属していたんで、
この田西の心情にもシンパシーを感じた。
(名誉のために言っておくが、素人童貞ではないぞ)
そして、モテナイ男たちはもちろんのこと、
イケメン男を含めた多くの男子が持っている本能を田西が体現している。
男の性を田西を通して赤裸々に描かれてしまうので、
ちょっと座り心地が悪い。
あまり女性に知られたくないなぁ〜って。
ベッドの上にゴロリと寝そべって、
ジャージの上からチンチンをいじくる演出とか、
細かいんだけど、絶対に男だったら一度はやっている。
女性はちょっと引いちゃうかもしれないけど、
男なんてこんなもんですよ。はい。
田西は最後の最後まで、己の欲求を満たすことしか考えていない。
その初志貫徹が凄い。
何かを熱心に追い求めることが無くなってしまった自分には、
例えそれが性欲であろうとも、本能剥き出しでゲットしようとする田西の姿は、
輝いて見えた。
ブサイクでカッコ悪いけど、カッコ良い。
大学の先輩が学生時代“青春に向かってスパァク!”とよく叫んでいたけど、
幾つになってもその心を忘れてはならない。
吉田恵輔監督の『なま夏』、『机の中身』、『純喫茶磯辺』同様、
空振りしまくるダメ男たちを描いた映画は魅力的だ。
何故ならそこに人間の・・・いや、男の本質があるからだ。
■『ボーイズ・オン・ザ・ラン』
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田西がなんでこんな格好をしているのか分からない人は、
ロバート・デ・ニーロ主演の『タクシードライバー』を見るべし。